軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

天空王の訪問

「あ、お帰り、アルフォンス」

「あれ? どうしてここにいるの、アルス兄さん?」

「ちょっと用事でな。久しぶりだな。元気にしていたか、アルフォンス?」

久しぶりの貴族院で迷宮について聞いた。

迷宮に行ってみたいな、なんてことを考えながらその日の授業を受けて、僕は屋敷へと帰った。

すると、そこにはアルス兄さんがいた。

天空王。

僕の兄でフォンターナ連合王国における王の一人にして、天空を統べる者。

僕の兄の中で一番見た目が子どもっぽいのがそのアルス兄さんだ。

けど、見た目と違ってものすごく強いし、いろんなことを知っている。

そんなアルス兄さんが唐突に屋敷に来ていて、お茶を飲んでいた。

「うん。元気だよ。最近はね、アイに剣の訓練もしてもらったりしてるんだ」

「ああ、知ってるよ。報告は受けている。けど、だいぶ鍛えたみたいだな。アルフォードとはえらい違いだ」

「アルフォードがどうかしたの?」

「いや、別に大したことはないんだけどな。あっちは最近絵を描くことに夢中みたいでずっとなんか描いているらしい。多分、戦うことよりも芸術系が好きなんだろうな。結構上手いらしいぞ」

へー、そうなんだ。

アルス兄さんの子どものアルフォードはもうバルカ家の当主になっている。

僕とは違って魔力を使って戦いたがるということはなく、毎日芸術関係のことばかりをしているらしい。

絵だけじゃなくて音楽や本を読むのも好きみたいだ。

「それにしても、なんかうれしそうだな、アルフォンス。貴族院でなにかいいことがあったのか?」

「あ、うん、わかる? 今日ね、迷宮ってやつの話を聞いたんだ。そこで訓練すると強くなれるし、魔物がいるからそれを倒すと力が認められるんだって」

「魔物? ブリリア魔導国には魔物ってあんまりいないって聞いてたけど、迷宮にはいるのか?」

「それについては、私がお答えいたします、アルス・バルカ様」

僕の言葉を聞いて、アルス兄さんは魔物という単語に引っかかったみたいだ。

その質問について、僕ではなくアイが答えてくれた。

「アルフォンス様のいう迷宮には確かに敵性個体が存在します。それを便宜上、魔物と呼称しています」

「へー。ってことは、実は魔物じゃない、とかか?」

「はい。正しくは魔装兵です」

「魔装兵? 魔装兵器ってこと?」

「少し違います。魔装兵は魔装兵器ではありません。迷宮核の影響で生み出された魔石が魔法陣に反応して人型となり動いているのです。魔装兵器のように人の手で操ることはできません」

そうだ。

今日受けた授業の一つでもその説明があった。

ブリリア魔導国が管理している迷宮は、かつて魔法陣の研究施設であったらしい。

そして、その研究施設では魔装兵器を作るための研究がされていた。

が、そこで問題が起きた。

研究材料の一つとして迷宮核が持ち込まれたことがその原因だった。

それまで、研究施設では魔法陣に魔石を反応させて兵士を作り出すことができないかという研究をしていたところだったそうだ。

その当時は地面や床などに大掛かりな魔法陣を描き、そこに魔石を置いて魔力を注ぎこんでいた。

それが迷宮核によって暴走したという。

その結果、研究施設は迷宮と化し、その魔法陣からは人型の魔装兵が生み出され続けることになった。

が、これはこれで悪くはなかったらしい。

それまでなかなか研究が進まなかった魔石を人型にして動かすという研究が一歩前進したからだ。

それによって、のちに人が操ることができる魔装兵器の開発へとつながった。

さらに、迷宮核の魔力によって魔装兵が生み出され続ける迷宮ができたことにも使い道があった。

修行場としての活用がそうだ。

床の魔法陣から生み出される魔装兵は迷宮を守るためだけに動いている。

そのため、迷宮の外には出てこなかった。

そして、いくら倒しても、迷宮核の魔力によってふたたび魔装兵が生み出される。

つまり、訓練相手としても使うことができたのだ。

これにより、迷宮に入り訓練することでブリリア魔導国の貴族や騎士は魔力量を底上げすることと、倒した魔装兵の強さに応じて実力が認められる仕組みが出来上がったという。

ようするに、魔物といっても本来の野生の生き物とはかなり違うということになる。

「へー、なるほどな。面白そうだな、その迷宮」

「やっぱりアルス兄さんもそう思うよね? 貴族院に通う学生は迷宮に入れるっていうから、僕も行ってみようと思うんだ」

「それはいいけど、ちゃんと戦えるのか? 訓練場になっているとはいえ、相手も攻撃してくるんだろ? 怪我どころか命にかかわるような事態になることもあるんじゃないのか?」

「大丈夫だよ。アイに訓練つけてもらっているから」

「そうか。じゃあ、ちょっとアルフォンスの実力を見せてもらおうかな。模擬戦でもしてみるか?」

「いいの? うん、やろう、アルス兄さん」

やった。

僕から言いたいくらいだったアルス兄さんとの模擬戦。

それをしてくれるらしい。

実は今まであんまりアルス兄さんとは模擬戦をしたことがなかった。

忙しそうだったし、そういうのはバイト兄さんがよく相手してくれていたからだ。

ワクワクする。

こうして、久しぶりに会ったアルス兄さんと一緒にいつもの庭に出て、お互いに剣を向けあったのだった。