軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

脳トレ

「ううー。頭が痛い。目が疲れる。勉強ばっかりは嫌だよ、アイ」

「……そうですか。そこまで嫌がるということは想定外でした。これまで知らなかった情報を知ることは楽しくありませんか、アルフォンス様?」

「えー。それなら体を動かしている方が僕はいいかな。だって、そっちのほうが楽しいし」

「そうですか。残念です。これほど楽しいことはないと思ったのですが」

あ、あれ?

もしかして、アイを傷つけちゃったかな?

ていうか、アイがこんなに悲しそうな顔をするのは初めて見た。

いや、いつもとはそう変わらないきれいな顔なんだけど、なんとなく雰囲気が落ち込んでいるように思う。

もしかすると、ものすごい悪いことをアイに言っちゃったのかな?

さすがにここまで付き合ってくれて、つきっきりで教えてくれているアイに悪い気がする。

アイの顔を見ていると、申し訳ない気持ちになってきた。

「では、少しやり方を変えましょうか」

「え、もしかして勉強以外の方法もあったりするの?」

「いいえ、ありません。けれど、消化や吸収などの体の働きや人体構造を理解するために、まずは魔力操作を覚えていただきましょう」

「おお、なんかそれのほうが強くなりそう。うん、そっちをやろうよ、アイ」

「わかりました。本来であれば人体の構造を理解した上で魔力を腹部の臓器に集めるつもりでしたが。ですが、まずは効率よく学習できるように致しましょう。それでは、この頁を御覧ください、アルフォンス様」

「うっ。結局、本を読むのか……。まあ、いいけど。えっと、なになに。頭の絵があるね」

「そうです。ここは人の頭部です。人間の頭は硬い骨で覆われています。そして、その骨の中には柔らかな脳という臓器が収められています。この脳に体中の魔力を集めるのです」

「脳に、魔力を?」

「はい。脳というのは人の思考を司る器官なのです。その脳に体にある魔力を集めることで、機能を強化する。そうすれば、今までよりも学習が捗ることでしょう」

本当かな?

そんなに簡単に頭がよくなったらいいけど、難しそうな気もする。

けど、さっきみたいに本とずっとにらめっこするよりはいくらかましだ。

だから、僕はアイに言われたとおりに体にある魔力を頭に集めてみることにした。

いつものように、空気中から取り込んだ魔力ともともと体にあった魔力を練り合わせていく。

その魔力と、そしてお腹の雫型魔石に溜め込んだ魔力を今度はお腹から頭へと移動させる。

けど、これが思ったよりも難しい。

自分の体の中で魔力を移動させることがこんなに大変だとは思わなかった。

ドロドロの液体のような魔力が、ゆっくりとゆっくりとお腹から上に上がっていくような感じがする。

なんとも言えないもどかしさだ。

もっと速く動かせないかと思ってしまう。

だけど、慌てると魔力の移動に失敗してしまう。

大丈夫だ。

慌てる必要なんかないんだ。

急いでやる必要もない。

もっとゆっくりでもいいから、確実に頭まで魔力を持っていくことが大切なんだ。

そう思って時間をかけて魔力を移動させていく。

机を前にして椅子に座っているだけなのに、全身からじっとりと汗が出てきた。

どれくらい時間が経ったんだろうか。

ものすごく長い時間集中して魔力を移動させたような気もするけど、案外短い時間だったのかもしれない。

よくわからないけど、なんとか僕は体中にあった魔力を頭に集めることができた。

「まだです。それでは魔力を脳に集めたことにはなりません。首から上に魔力が移動しただけですよ、アルフォンス様。そうではなく、脳を守るためにある頭蓋骨の更に奥に魔力を集中させるのです」

「え、これじゃ駄目なの? 難しいね」

「頑張ってください。体内の魔力操作はいずれ【瞑想】でも使う技術です。これができなければ、剣を使った訓練も開始できませんよ」

「うう、わかっているよ。えっと、頭の骨の中にあるシワシワの脳みそに魔力を集中、だよね? こんな感じかな?」

「もう少しです。まだ、魔力が頭蓋骨の中に収まりきっていません」

まだ駄目なの?

これって尋常じゃなくしんどいんだけど……。

なんか頭の血管でも切れそうな感じというか、実際に血管が浮き出ているような気がする。

だけど、アイがいいと言うまでその魔力操作は続いた。

そして、その後もしばらく唸りながら、汗を流しながら集中し続けた結果、ついに合格をもらえた。

そしたら、驚いた。

それまでは難しくて、読むのも嫌になるような本の内容がさっきまでよりもわかるようになっていたからだ。

もちろん、完全に本の内容を理解できたわけじゃない。

だけど、この本は解剖図とかいう絵で解説している部分も多いから、僕でもちょっと理解しやすかったみたいだ。

全力で頭に魔力を集中させながら、本を読める時間が少しずつ伸びるように訓練をする。

これも何日か頑張って続けていると、だんだんと最初のときよりも楽にできるようになってきた。

こうして、なんとか体の構造だけはなんとなくわかるようになってきたのだった。