軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ラインザッツ平野の戦い

豊富な水量を誇るライン川。

そのライン川の水を使い、豊穣の大地を耕すことでラインザッツ家は安定した治世を行ってきた。

その豊穣の大地たるラインザッツ平野にリード・バルカ連合軍が現れた。

ここでなんとしてもバルカ兄弟らを討ち取る。

こちらが布陣させたラインザッツ軍は皆その目的に向かって闘志を燃やしていた。

「ついに来たか。良いか、皆のもの。リード家が率いる軍勢は吸収した貴族軍を寄せ集めても5〜6万ほど。しかし、我がラインザッツ軍は20万もの精鋭を揃えている。そしてなにより、かの英雄たるシュナイダー様御自らが指揮を執られる。この戦、我らの勝利だ」

「「「「「ウォオオオオオオォォォォォ」」」」」

「ご当主様、ご指示を」

「うむ。我々の目的はバルカ兄弟の首にある。セルジオよ、兄弟らの位置を特定するのだ」

「承知いたしました。……探知」

私が声を張り上げ軍全体の士気を上げる。

その声が全軍に届いたのか、あちらこちらからこのラインザッツ平野のどこにいても聞こえるのではないかと言うほどの返答の声が響き渡った。

兵たちも理解しているのだ。

ここに至っては勝利する以外の道はない、と。

そして、士気を上げた私はシュナイダー様にご指示を仰ぐ。

といっても、やることはすでに決まっていた。

私が奴らの場所を特定するのだ。

ラインザッツ家第一の家臣である私が使用できる魔法。

その中に、【探知】という魔法があった。

文字通り、探して知るための魔法だ。

ここでの使用目的はリード・バルカ軍の中で特に魔力量が多い者の場所を見つけることだ。

本来は相手の魔力を直接知る機会が事前にあればもっとよかったのだが、私はバルカ兄弟と面識がない。

ゆえに、どの魔力が誰のものであるかは知り得ないがそれでもこの場ではなんら不都合がないだろう。

「当主級を遥かに超える魔力量を持つ者の反応が3つ。一番魔力量が多いのが……、あそこです。リード軍のもとにいます」

「カイル・リードだな。バルカ兄弟の中では弟であるカイルが一番魔力量が多いのか。他はどうだ、セルジオ?」

「はっ。あちらの騎兵団にもう一つ、大きな魔力を感じます。けれど、3つの中では一番少ないでしょうか。そして、2番目の魔力反応なのですが……」

「どうした?」

「いえ、申し訳ありません。向こうに反応を感じるのですが……、あちらには軍の姿がないのです。騎兵団を指揮しているのがバイト・バン・バルトであるとすれば、残るはアルス・バルカであるはずなのですが……」

「ふむ。確かにあちらにはなにもいないが……。よもやとも思うが、【探知】での位置特定に間違いがあるのではないのか?」

「そんなはずはありません。もう一度、探してみます。探知」

どういうことだ?

確かにラインザッツ軍には所属しえない強大な反応が3つある。

そのうちの2つはカイルとバイトであると思われる。

が、残りのアルス・バルカの魔力の位置がおかしい。

ラインザッツ平野という見晴らしの良い場所であるにもかかわらず、魔力反応がある場所には軍どころか人っ子一人いなかった。

どこだ。

どこにいる?

私以外もが、私が指し示した場所に視線を向けて草にでも隠れていないかと疑うようにその地点を凝視していた。

そんなとき、誰かの声が聞こえた。

影が見える、と。

「……影? 上に何かいるのか? あれはなんだ。羽を広げた鳥のような……」

「まずい。全軍に告ぐ。敵襲に備えよ。あれはバルカの飛行船だ。魔導飛行船なるものに違いない。岩石落としが来るぞ!!」

私が空にいる左右に翼を広げたような何かを見ていたとき、そばにいたシュナイダー様が突然叫んだ。

魔導飛行船?

そういえば、以前報告にあった。

ラジオ放送などといって、戦場の出来事を中継したのに使われたという飛行装置。

あれがそうなのか?

リゾルテ家が使っている飛竜も空を飛んで攻撃していたから、決して空への警戒を怠っていたわけではない。

だが、あれほどまでに高い場所を飛べるものなのか。

魔導飛行船なるものは雲と同じくらいの高さなのではないかと思うほど高く飛んでいたのだ。

ゆえに気が付かなかった。

影を見て、上を見上げてもその姿が小さく、まるで鳥のように見えてしまっていた。

だが、違った。

ぐんぐんと高度を下げてくるほどにその大きさがわかる。

あれは飛竜などとは比べ物にならないほど大きなものだった。

くそ。

なんたることだ。

私の【探知】は間違いなくアルス・バルカの位置を特定できていたのだ。

だが、まさか地上ではなく上空にいたとは。

どうりで反応のあった地点を見ても誰もいなかったはずだ。

本来であれば、相手の位置を特定し、速攻を仕掛けて【刹那】で瞬殺する。

バルカ兄弟を屠るのに最高の状況はそれだった。

だからこそ、私の【探知】が役に立つはずだった。

であるというのに、その逆になってしまった。

こちらが先攻するはずが、向こうに先に攻撃を仕掛けられてしまったのだ。

「退避!! 魔導飛行船から落下物あり。岩の巨人が来るぞ!」

最初に警戒を発したご当主様のあとに続くように、次々とそんな声が我らの軍から上がった。

そして、その声のとおりに魔導飛行船から落とされたなにかが空中で大きさを変えながら落ちてくる。

岩の巨人。

まるで大理石のような岩でできた巨大な人型が地上へと落とされた。

その数は私が一瞬で確認できただけでも数十を超えるだろうか。

ものすごい衝撃音を響かせながら地面へと墜落したその岩の巨人がラインザッツ軍の兵を大きく跳ね上げる。

そして、すぐに動き出した。

あれほどの高度から落とされたにもかかわらず、その巨体に傷がついたようには見えない。

巨大な石の剣を持つ大理石の巨人がラインザッツ軍を蹂躙し始めたのだった。