軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

決闘の後に

「オ、オリビア様ーーー!!! よ、よくも……、よくもオリビア様を」

「止まれ。神前決闘による勝敗は決した。リゾルテ王国軍は速やかに兵を引き、この土地から去れ」

「黙れ。そのようなこと知ったことか。リゾルテ王国軍全軍に告げる。オリビア様をお救いしろ!!」

「っち。やっぱこうなるのかよ。スルト軍、リゾルテ王国軍の動きを止めろ」

「了解です。お任せください、アルス・バルカ殿」

バイト兄の攻撃によって地上へと墜落したオリビア。

その姿は超高温の黒い炎で全身を燃やされたあと、その炎を氷へと変換されて氷漬けにされたものだった。

俺が勝敗を言うかどうかなど関係なく、もはや動くこともできないことは誰の目にも明らかだった。

そんな氷漬けのオリビアを見て、多くの竜騎士が動いた。

オリビアを救い出さんと、それまでは戦いを見守っていたにもかかわらず飛竜へとまたがり、空を飛んでこちらへとやってきたのだ。

その鬼気迫る勢いは明らかに攻撃性の高いものだった。

オリビアを救うためならばどんなことでもする。

たとえ、神前決闘の結果を無視しようともという意気込みを感じる。

ちょっと心配していたことが杞憂に終わることにはならなかった。

本当に神前決闘をしたあと、こちらが勝った場合に素直に相手が引き下がるのかという疑念があった。

もしかしたら、結局は軍を下げないのではないか。

その心配が現実のものとなってしまったようだ。

竜騎士たちが今も氷漬けのままのオリビアのもとへと近づこうとし、それに歩調を合わせるようにリゾルテ王国軍が動き出す。

さすがにこうなったらいくら口で説得しようと思っても動きを止めることはできないだろう。

なので、こちらはスルト家の軍を前に出し、その攻撃を受け止めるように指示を出した。

「よし。リゾルテ王国軍による攻撃をスルト軍が受けたな。これにより、リゾルテ王国軍は神前決闘での誓いに反したことを見届人として認める。行け、四枚羽。竜騎士部隊を撃ち落とせ」

一応、神前決闘をやる前からその後のことを心配してはいた。

なので、最低限の対策は用意しておいた。

そのひとつが、俺のそばにいたブライアン率いるスルト軍を前に出していたことだ。

これはいざというときにスルト軍を壁にする狙いがあった。

リゾルテ王国軍が先に手を出して神前決闘の誓いに違反したと認めてから、バルカ軍が反撃できるように一度相手の攻撃を受けてもらう必要があったからだ。

この役目をブライアンは買ってでてくれた。

ここが頑張りどころだというのも分かっているのだろう。

危険ではあったが、その身をもっとも危険な場所へと差し出すことでこちらへの忠誠を示そうとしている。

そして、そのブライアン率いるスルト軍が攻撃を受けたのを見て、俺は反撃を命じた。

「バイト兄はそのまま飛竜に乗って空で戦ってくれ。四枚羽はバイト兄の周りで補助につけ。地上部隊はヴァルキリーに騎乗して相手を包囲しろ」

それまでは全軍が固唾を飲んで決闘を見守っていた。

それが一気に決戦となったことでにわかに騒々しくなってきた。

お互いの軍が近い場所で待機していた状態での戦い。

兵の数だけで言えば、リゾルテ王国軍のほうがこちらよりも多いのは気になるところだ。

向こうはオリビアを奪還すべしと意気込んでやる気も高い。

だが、こちらの士気も高かった。

正式な決闘で正々堂々と戦い、バイト兄が勝ったからだ。

いろんな装備に身を包んで戦いを有利にすすめる準備をしていたオリビアに最初は押されていたが、徐々にその動きに対応して逆転勝利を収めたバイト兄の姿は兵たちのやる気を大幅に引き上げてくれている。

それに、相手が神聖なる決闘での誓いを破って攻撃を仕掛けてきていることも士気の向上につながっていた。

一気に両軍がぶつかりあっての乱戦模様へとなってしまった。

「何騎か俺に続け。オリビア殿を回収する」

そして、そんな激戦区の中へ俺も突入していった。

多くの竜騎士が殺到しているオリビアの墜落地点に向かってカイザーヴァルキリーに騎乗した状態で近づく。

上空ではバイト兄が多数の竜騎士相手に氷炎剣などを使って戦い、四枚羽がそのサポートをしている。

竜騎士たちはバイト兄に対して相手をしながらも、何人かがそのそばをすり抜けるようにしながら氷漬けのオリビアのもとまでたどり着いていたようだ。

「来たぞ、アルス・バルカだ。やつをオリビア様に近づけさせるな。必ずやお守りするんだ」

「駄目だぞ、君たち。その人はバイト兄のお嫁さんになるんだから返してもらうよ」

「ふざけるな。貴様らなどにオリビア様を連れていかせるか」

俺が近づいてきたことに気がついたのだろう。

竜騎士たちがこちらへと振り向いて迎え撃ってくる。

だが、遅い。

頭に血が上りすぎている。

俺がどんな攻撃をしようとしているのかすら理解できていない。

カイザーヴァルキリーに騎乗しながら高速で駆け寄っていく動きを妨げることなく、俺は光の剣に魔力を注いで横薙ぎに振るった。

遠距離に発生する斬撃による攻撃。

その不可視の攻撃によって、オリビアの近くにいた竜騎士の体が飛竜ごと斬り伏せられる。

なにが起こったのか理解できないまま、次々と竜騎士たちが血を流しながら飛竜の背から崩れ落ちるようにして地に倒れ伏した。

バイト兄が空でほかの竜騎士を抑えてくれていることもあり、地上にいた者は数がさほどいなかった。

そのため、光の剣による攻撃で即座に殲滅したあと、俺はオリビアのもとまでたどり着くことができた。

飛竜ごと氷漬けにされたオリビア。

そのオリビアを前にして、カイザーヴァルキリーに命じる。

「オリビア殿を【収集】しろ、カイザーヴァルキリー」

「キュイ」

次の瞬間、オリビアの体は消え去った。

氷漬けの状態のまま、カイザーヴァルキリーによって【収集】されてしまったからだ。

かつて、先代ドーレン王の遺体をナージャが【収集】で取り込んでおり、その後、カイザーヴァルキリーがナージャごと奪っていたことがある。

その時のことを思い出した俺はオリビアも【収集】してしまうことにしたのだ。

こうして、オリビアの体を回収した俺はすぐさま反転し、本陣まで引き上げていったのだった。