軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

竜姫の装備

「当たった。【氷槍】が命中した。……いや、あれ、おかしいな。もしかして外れたのか? オリビア殿には特に大きな傷は無いようですね」

「いえ……、これはもしかすると……」

俺が上を見上げている空で二匹の飛竜が縦横無尽に飛び回っている。

そのうちの片方にバイト兄が乗っていた。

神前決闘という本番のさなかであるというにもかかわらず、バイト兄は少しずつ飛竜の扱いに慣れ始めている。

自身の魔力を飛竜に送り込んで能力を向上させ、それまではワンテンポずつ遅れていた相手の動きに少しついていけるようになっていた。

そして、ようやくバイト兄の攻撃がオリビアに届いた。

飛竜の背から相手に向かって腕を伸ばして、その手のひらから発射した【氷槍】。

フォンターナ家の攻撃魔法であるその【氷槍】が竜姫オリビアに命中した。

だというのに、オリビアはピンピンしている。

もしかして、俺の目の錯覚だったのだろうか?

いや、しかし、あの攻撃は間違いなく直撃コースだったはずだ。

「ブライアン殿、なにか思い当たることがあるのですか?」

「……はい。しかし、私が考えていることが正しいとすれば、この勝負、まずいかもしれません」

「どういうことでしょう? 説明していただけますか?」

「わかりました。と言っても、おそらくは、と言う程度のことですが。先程、バイト殿の攻撃は間違いなくオリビア様の体に当たるはずでした。ですが、外れました。もしかしたら、攻撃が当たらない可能性があります」

「攻撃が当たらない? よくわかりません。攻撃が外れたということは、オリビア殿が回避したということなのでしょうか?」

「いえ、外れたのです。バイト殿の攻撃は外れた。オリビア様の持つ宝玉の力によって」

「……宝玉」

「これは昔からの言い伝えです。リゾルテ家には【矢避けの加護】のついた宝玉がある、という話です。その宝玉を身に着けた者は矢による攻撃が当たらない。矢が自ら相手を避けるようになる、というのです」

「矢が勝手に進行方向を変えるというのですか? だとすると、それはまず間違いなく魔道具でしょうね。なるほど。もしや、【矢避けの加護】と言いつつ、効果対象は矢による攻撃に限らないということでしょうか?」

「はい。矢避けというのは表現にすぎません。飛来する攻撃であればその攻撃は自動的に回避されるのではないかと思われます。つまりは、遠距離からの攻撃は当たらない可能性があります」

「それは……、また随分と厄介なものを持っているのですね、竜姫様は」

「リゾルテ家が与えたのでしょう。なんと言ってもリゾルテ家の姫君ですから」

ブライアンの言うことは多分正しい。

なぜなら、その後何度も繰り出されたバイト兄の攻撃は、ことごとく外れたからだ。

【氷槍】が当たらない、ということに気がついたバイト兄が今度は魔銃を持ち出してぶっ放している。

使用者の魔力を硬化レンガの弾丸として発射する魔銃はやろうと思えばマシンガンのように連射が可能だ。

その連射性能を最大限に発揮するかのように魔銃を乱射するバイト兄。

だが、その攻撃は一発たりともオリビアには当たらなかった。

「なるほど。あれは空中戦において非常に優れた守りを発揮する。だからこそ、オリビア殿は神前決闘などと申し込んできたのか」

「勝算あり、と考えてのことでしょうな。というよりも、本来であればバイト殿は飛竜に乗ることすらできなかったはず。一方的に空中から攻撃し、地上からの反撃は【矢避けの加護】で防ぎ切る。必勝態勢を築いていたというわけでしょう」

「まあ、それを卑怯とは言えないですしね。なんせ、こちらもラインザッツ軍のときにとっておきの魔道具を使っていますし」

「封魔の腕輪ですな。それも関係していたのかもしれません。魔法を封じられることがあっても勝てる可能性があるように、向こうもまた魔道具を用意したのでしょう。封魔の腕輪の効果を発動中であっても、魔銃などが使えると知っているわけですから」

「ということは、先程からオリビア殿が攻撃しているのは魔法ではなく魔道具によるものということですか。いくつもの攻撃手段を持っていて、少し疑問に思っていたのですが魔道具を使っているならおかしなことではない、か」

どうやら、相手はこちらに対して万全の準備を整えて勝負を挑んできていたようだ。

ラジオ放送でこちらの手の内を見せたことが、さっそく相手に利用されている。

封魔の腕輪を使われても勝てる可能性があると踏んでいたからこそ、この神前決闘を求めてきたのだろう。

オリビアはバイト兄が【氷槍】などで攻撃するときと同じように、手のひらを前にしていくつかの魔法を放っていた。

そして、その魔法攻撃は一種類ではなかった。

大きな火球や念力、視界を奪う眩しい光などいくつもの魔法を使っていたのだ。

それらの攻撃によってバイト兄はもういくつかの傷を負うはめになっている。

最初は単純に複数の魔法を使えるのかと思っていたが、どうやら違うのだろう。

あれらは魔法ではなく魔道具による攻撃なのかもしれない。

きっと、封魔の腕輪を発動させていても飛竜の背から攻撃を仕掛けられるのだろう。

「それはオリビア様の着ている鎧の効果でしょう。あの黄金の鎧は宝玉と同様に、いやそれ以上のリゾルテ家の宝として有名ですから」

「あ、そうなんですか? あのド派手な黄金鎧って、見てくれだけじゃないんですね」

「もちろんですよ。あの鎧のことを知らないのですか?」

「ええ、不勉強なものでよく知りません。あれは有名なのですか、ブライアン殿?」

「有名ですよ。あれはアイシャの鎧、別名、女神の鎧と呼ばれています。かつて初代王とともに国を興し、そして神となってこの世すべてを見守っている神が使用していた鎧。それこそがあの黄金の鎧なのです」

な、なんだってー。

アイシャのやつ、あんなミニスカ鎧を着ていたのか。

神界におけるオシャレマスターの神様の意外な過去を知ってしまって、俺は思わず笑いそうになるのを堪えるのに必死になったのだった。