軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

四枚羽

ライン川での衝突。

バルカ軍とリゾルテ王国軍によるこの戦はラジオでは放送しない。

それはこの戦いが戦場での流れで起きた突発的なものであることも関係している。

が、それ以上にこちらの情報をあまり広めたくなかったというのもある。

リゾルテ王国軍に対して俺が用いようとしている新戦力。

最強の部隊と呼ばれる竜騎士部隊にバルカの航空戦力が通用するかどうか。

あるいは、それが通じたとしても欠点がないかどうかをまずは自分の目でしっかりと見極めたい。

そのために、この戦場で起こったことは情報を外部に出さないことにしたのだ。

ライン川を渡河してきたリゾルテ王国軍は川のほとりに布陣している。

バルカ軍の動きを見て待ち構えており、すでに竜騎士部隊は空を飛んで睨みを利かせていた。

そこに、バイト兄率いるバルカの騎兵が突撃する。

それに合わせて、リゾルテ王国軍側も即座に反撃に出た。

どうやら、向こうにも土を扱う系統の魔法使いがいるようだ。

【土杭】という魔法が発動された。

バルカが持つ【壁建築】と似ているが、どうやらより実戦的な魔法のようだ。

【土杭】を使用した騎士は、その場ではなく、自分たちと距離が離れた前方に地面から突き出るようにして土の杭を生み出したのだ。

人間は存外足元が疎かになることが多い。

きっと、この【土杭】を作った魔法使いも昔は遠距離から相手の足元から突き刺すような攻撃で勝利を量産したのではないだろうか。

前触れ無く、足元から串刺しにされるような攻撃がくれば普通は無傷ではいられない。

そのため、この攻撃によってリゾルテ王国軍に対して真っ直ぐに迫っていったバルカ軍はその勢いを止められてしまった。

とはいえ、それでこちらに大打撃があったというわけでもない。

ヴァルキリーたちのおかげだろう。

バルカ軍は全軍がヴァルキリーに騎乗しており、騎兵として運用している。

その移動の要となっているヴァルキリーは【土杭】の攻撃を察知したかと思うと素早く方向転換して、直撃を免れたのだ。

おそらくは、【土杭】がバルカ軍の進行方向上に設置されたというのも助かった理由の一つだろう。

突き出た杭に自らがぶつかりにいくようなこともなく、左右に迂回してリゾルテ王国軍に再び向かっていく。

が、それはただでさえ数の限られているバルカ軍を分断させられたとも言えるのかもしれない。

その後、何度か【土杭】が使用されるたびにヴァルキリーは回避をするのだが、その都度、軍としては細かくバラバラになってしまうことになった。

きっと、これは事前の作戦なのだろう。

基本的に騎兵の最大の長所はその突破力の高さにある。

人よりも大きく速い速度の物体が集団で突っ込んでくるだけでも相当な力があるのだ。

それをまずは封じたうえで、バラけさせる。

そうしてからこちらよりも数が多いリゾルテ王国軍が迎え撃つことで優位に戦いを進めていこうということだろう。

そして、それを援護するのが空にいる竜騎士部隊だ。

一箇所に固まっているのではなく、戦場に広く分散するように飛び、上から魔法攻撃でバラけたバルカ軍を攻撃する。

これにより、バルカ軍は騎兵としてのいいところを封じられたうえに前と上からの攻撃にさらされることになる。

いい作戦だ。

ライン川を渡った直後にこちらと戦闘になることに少し疑問があったが、その前からどのように戦うかをある程度想定していたのだろう。

一切の淀みなく、こちらに対応して戦いを進めてきている。

ラジオ放送を聞いてラインザッツ軍に勝利したバルカに萎縮するのではなく、きちんと勝算があるという自信を感じる動きだった。

だが、相手の対応に感心しているばかりではいられない。

バラけてしまったとはいえ、バルカ軍はまだ不利になったわけでもない。

7000の騎兵にはそれぞれ魔銃などの装備があるので、分散していても戦いようはある。

が、それでも上空からの攻撃にはなかなか対応できないだろう。

人は足元への注意がおろそかになることもあれば、自分の上からの攻撃にも鈍い面があるからだ。

なので、俺はやはりバイト兄に言った通り、竜騎士部隊に対処することにした。

とはいえ、すでに俺が打てる手は打っているのだが。

あとはそれがどうなったかを見守るくらいしかできない。

「どれどれ。四枚羽の働きはどうかな、アイ?」

「はい。四枚羽はすべて正常に稼働中です。現在、リゾルテ王国軍の竜騎士部隊と交戦中。すでに3騎の竜騎士を撃墜しました」

「……3か。まだそんなもんか。四枚羽の攻撃が通じないくらい強いやつがいるようなら報告よろしく。そいつは俺が空絶剣で攻撃するよ」

「承知いたしました、アルス・バルカ様」

俺はバルカ軍の指揮をバイト兄に任せ、後方で新航空戦力の働きを見守っている。

そして、その俺の隣にはアイがいた。

今回の戦いに際して、アイも連れてきており、そのアイに航空戦力の戦果を報告させる。

俺が新たに用意したバルカだけの奥の手。

人を運ぶことを目的とした魔導飛行船ではなく、純粋に戦場で用いるために作った戦闘用の航空機は「四枚羽」と呼称していた。

その四枚羽が空を飛び、飛竜に乗った騎士と戦っている。

が、その四枚羽の見た目は戦闘機のようなものではなかった。

魔導飛行船のように両翼にプロペラをつけて推進力を得ているわけではない四枚羽。

飛行機とは全く別の形をしているそれを見て、カイルなどは「なんか虫みたいだね」と言ったこともある。

それはそうかも知れない。

四枚羽の構造は上部に4つのプロペラをつけて空を飛ぶというもので、なんとなく虫を想起させるものだったからだ。

そう、俺が新たに作ったのは人が乗り込む戦闘機のようなものではなく、いわゆるドローンなどと呼ばれるものだった。

本体となる枠組みの上に4つの回転するプロペラをつけるだけというシンプルな構造。

その4つの羽の回転数をすべて独立して操作することで、上昇も下降も、前進も後退も、さらに複雑なアクロバティックな動きすら可能になる。

空を高速で飛び回ることができる4つの羽を持つドローン13機が最強と言われる竜騎士部隊に襲いかかっていたのだった。