軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

理解の及ばぬ者

「何してんだ、キリ嬢ちゃん。早いところ、大将に連絡をとらねえか。手遅れになってもしらんぞ」

「ま、待ってください、バルガス様。カイル君がなにかするみたいです」

「なに? なにをするつもりだってんだ?」

「……あれは杖? カイル君が身に着けていた鞄から杖を出しました。あれって魔法鞄なのかな? でも、あの杖はなんだろう。なんていうか、見ただけで明らかに普通の杖じゃないのがわかります」

「杖? カイルのやつが杖なんて使ってるのなんて見たこと無いぞ? どんな杖なんだ?」

「えっと、なんていうんでしょうか。すごく不思議な杖です。杖は木でできている木製のものなんですけど、杖の先に大きな魔石が嵌っているのかな? とにかく、何かよくわからないですけど、すごい杖なんです」

なんだそりゃ?

リード軍の先頭に一人で立って王都連合軍を迎え撃とうとしているカイル。

俺はそれを聞いてカイルがヤバいと判断した。

だからこそ、すぐに大将に連絡を取れと言っているにもかかわらず、キリ嬢ちゃんの動きは鈍い。

カイルがどんな杖を持ち出したのかは知らないが、それがなんだというのだろうか。

「情報が更新されました。あの杖について、カイル・リード様より新たな情報が知識の書に加えられています。お聞きになりますか?」

「お、おう。なんかよくわからんが教えてくれ、アイ。それとどうでもいいが、大将に連絡はとってくれよ。アイでもキリ嬢ちゃんでもどっちでもいいからさ」

「すでにアルス・バルカ様には連絡済みです。アルス・バルカ様より、心配いらない、と返答を受け取りました。杖の説明に移ってもよろしいでしょうか?」

「え、ああ。そうか。まあ、大将がそう言うなら俺も腹をくくろう。カイルのことは心配だが、とりあえずその杖のことを聞かせてもらおうじゃないか」

「かしこまりました。では、カイル・リード様の所持している杖ですが、バルカニアの北に広がる森の奥にある世界樹の枝で作られたものであるようです。そして、その世界樹の枝の先には不死者となった竜である不死骨竜の魔石がはめ込まれているとのことです」

「……なんだって? 世界樹? なんだそれは?」

「世界樹は人が誕生するはるか昔より大地に根ざしている原初の木です」

「そんなものが北の森にあるのか? 本当に?」

「この情報はたった今、カイル・リード様によって知識の書に加えられた情報であり、アイは未検証です」

「……なんかよくわからんが、まあいい。で、不死骨竜ってのはあれだったな。確か、北の森で大将が遭遇した不死者になった竜の骨の化け物か。そういえば、あれは大将だけが戦ったわけじゃなかったな。確か、タナトスとカイルもいたのか」

「そのとおりです。不死骨竜はその頭蓋骨の中に巨大な魔石があったようです。その巨大な魔石を使用しているようです」

アイが説明している。

が、それを聞いていてもよくわからなかった。

世界樹とはなにか?

それを杖にして不死骨竜の魔石をつけているのがどれほどのものなのか、俺には全く実感が無かったからだ。

ただ、話を聞いているとどうやらものすごい魔力がある杖なのだそうだ。

それこそ、キリ嬢ちゃんが見ただけで明らかに異常だとわかるほどの代物であることに違いないらしい。

どうやら、それを使ってカイルが何かをするつもりのようだ。

「な、なにあれ?」

「どうした? 今度は何があったんだよ、キリ嬢ちゃん」

「カイル君が杖を握って何かを言ったみたいなんです。そしたら、カイル君の体の中から人が出てきました」

「……はあ? 人が出てきたってなんだそりゃ? 夢でも見ているんじゃないのか、キリ嬢ちゃん」

「違います。本当なんですよ、バルガス様。あれはなんなの、アイさん?」

「……情報が更新されました。あの人型は精霊です」

「精霊? あれが?」

「おいおい、本当になんなんだよ。全然状況がわからんぞ。もっと詳しく説明してくれ、アイ。カイルから精霊が出てきたのか?」

「そのとおりです、バルガス・バン・バレス様」

「それはおかしくないか? カイルの精霊は確か緑色に光る玉みたいなやつだったぞ? 俺は何回か見たことがあるから間違いないはずだ」

「肯定です。その光の玉はカイル・リード様が世界樹と交信した際に契約した精霊です。そして、今回出現した人型の精霊はそれと同じ存在です」

「いや、それはおかしいだろう。俺も【氷精召喚】が使える。俺の場合は【氷精召喚】を使うと氷の大亀が出てくる。これは何回やっても同じだ。大将が【氷精召喚】を使えたときは青い光の玉だったし、バイトのやつは氷の狼だ。その姿は毎回必ず同じだったぞ」

「それは【氷精召喚】だからでしょう。カイル・リード様は木精を召喚しているわけではありません。木精と契約しているのです。そして、その契約した木精はカイル・リード様とともにあり、成長しているのです」

「……それは知らなかったな。俺たちが使える【氷精召喚】とは完全に別物なのか。でも、それがどうしたんだ? 人型の木精だったらどうだって言うんだよ」

「人型、というよりは言語を発する精霊は他の精霊よりも格上の高位精霊だって言い伝えがあるんですよ、バルガス様。といっても、私も占星術の書に書かれた古い文献で見たことがあるだけで、あんまりよく知らないですけど。で、カイル君のそばにいる人型の精霊は明らかになにか喋っているんですよ」

「初耳だ。というか、俺がそんなの知るわけ無いだろう。えーと、つまり、なんだ。今、カイルが契約している精霊はその高位精霊とやらになってるってことなんだな。喋っている内容はわかるか?」

「カイル・リード様が『全員を拘束して』と命じ、木精がそれに承諾しました」

「え、すごーい。アイさんって精霊の話す言葉もわかるんですか? 私はなにか言っているように聞こえたけど、わからなかったのに」

「もちろんです。あの精霊の人格はアイと同じで、カイル・リード様によって作られた仮想人格です。現在、アイは精霊との同調に成功しました。あの精霊の発する精霊言語を理解することが可能です」

わからん。

さっぱりわからん。

カイルのやつはいったい何をしてんだよ。

ただ、アイの言うことをそのまま受け入れてしまえば、どうやらカイルは北の森で世界樹とかいう古い木と出会って木の精霊と契約した。

で、その木の精霊を多分育てたんだと思う。

きっと、成長させるには魔力の量とかが関係しているんじゃないかと思うがそれはわからん。

が、ただ成長させるだけじゃなくて、その姿も、そして精霊の格とやらも変えてしまったらしい。

言語を発する高位精霊とかいう人型の精霊に成長させた。

そして、それを可能にしたのがこれまたよくわからんが仮想人格を作るとかいう話につながっているらしい。

大将とカイルが一緒に作り上げた神の依り代に宿るアイという人格。

それと似たようなことをして、精霊にも人格とやらを植え付けたのかもしれない。

俺には到底ラジオで解説なんてできんが、おそらく多分きっとそうなんだろう。

もはや、このラジオ放送を聞いているほとんどの者が、俺と同じように混乱し、状況を理解できていないに違いない。

が、それとは関係なく事態は進行していた。

俺たちがあれやこれやと話している間にどんどんと接近してきていた王都連合軍。

その王都連合軍に対して、カイル、もとい、カイルの契約している高位精霊が動きを見せたのだった。