軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新型武器

「な、なにあれ? ラインザッツ軍の兵たちがバタバタ倒れていくよ。どうなっているんでしょうか、バルガス様?」

「……確認させてくれ、キリ嬢ちゃん。バルカ軍は魔弾を使ったとさっきアイが言っていたよな。それって、バルカ軍の兵が手に持っている道具で攻撃しているってことでいいのか?」

「ええっと、ちょっと待ってください。アイさんの見ている風景をもう少し拡大してみたら見えると思います。……そうです。なにか手に持っているみたいです、バルガス様」

「やはりか。ってことは、魔銃を使っているのか」

「魔銃ってなんですか、バルガス様?」

「ああ、魔銃っていうのはバルカ軍に新しく配備された新型武器だ。大将が東方にある大国の一つ、ブリリア魔導国との取引で手に入れた岩弩杖という魔法武器がある。それを改良して作り上げたのが魔銃だな」

「岩弩杖っていうのは聞いたことがあります。あれですよね。杖の形をした魔道具で魔力を込めると大きな岩が飛ぶっていう、東方の魔法武器。それをアルスくんは改良したんですね? じゃあ、その岩弩杖よりももっと強い武器ってことですね」

「いや、そうじゃない。むしろ、岩弩杖と比べると魔銃は攻撃力が劣るだろうな。そういう意味では改良というよりも、性能が落ちていると言えるかもしれない」

「ええ? どういうことですか? わざわざ、低性能のものを作って使っているんですか?」

「それもちょっと違うな。魔銃はたしかに攻撃力では岩弩杖よりも低くなっている。だが、その代わり別の面で性能が向上しているとも言える武器なんだよ」

開戦してしばらくが経過した。

バルカ軍は前衛部隊が【壁建築】を使用し防御壁を作り上げ、その後方から投槍や投石などでラインザッツ軍を攻撃している。

それに対して、ラインザッツ軍はその壁と壁の間を縫うようにして突破を図り、バルカ軍へと肉薄していた。

普通ならば、防御壁を越えられたほうが被害が広がるはず。

だと言うのに、アイによれば被害はラインザッツ軍で多く発生していた。

その理由を探る。

そして、俺は一つの結論に達した。

壁を突破しつつあるラインザッツ軍を押し返しているバルカ軍の原動力について、俺はほぼ確信を持っていた。

それは魔銃という魔法武器についてだった。

キリ嬢ちゃんに言った通り、魔銃は大将が作った新型武器であり、その原点は東方で手に入れた岩弩杖だ。

岩弩杖は魔力を込めれば人の頭よりも大きな岩が飛び出る魔法武器だ。

精霊石とかいう魔石に魔法陣とやらを描き込んで作るらしい。

大きな岩がぶつかるからこそ、その攻撃力は高い。

だが、それに対して大将が岩弩杖を改良して作り上げた魔銃はそこまでの攻撃力はなかった。

魔力を込めて飛び出すのは小さな石だった。

そのため、岩弩杖から飛び出す岩と比べると人体に与える損傷具合はかなり少ない。

俺もこれは不思議に思ったことがある。

どうしてわざわざ攻撃力の低いものを作り出す必要があったのか、あるいは、それをバルカ軍の装備として正式採用したのか、と。

その質問に対する大将の答えは非常に簡単なものだった。

岩弩杖よりも魔銃のほうが継戦能力と殲滅力があるのだという。

岩弩杖は大きな岩を飛ばすために、何度も使っていると意外と魔力を消耗する。

もちろん、俺や大将みたいにある程度魔力量が多ければそれはそこまで大きな負担にはならないかもしれない。

だが、他の一般兵は違った。

バルカ軍は兵の訓練の一環として魔力を高める訓練なども取り入れているが、それでもどうしたって一般兵は魔力が少ない。

そんな魔力の少ない一般兵でも多くの石を飛ばせるように、魔銃は発射する石を小さくしているのだという。

だが、それは別にただ単に飛ばす岩を小さな石に変えただけではない。

岩弩杖で発射される岩とは違い、魔銃から飛び出すのは硬化レンガだ。

あれは小さくても十分に硬い。

しかも、形状を工夫しているらしく、より遠くまで狙ったところへとブレが少なく飛ばせるのだという。

つまり、魔銃は魔力の消費を抑えて、しかし、戦闘に求められる最低限の攻撃力は確保しつつ、しかも連射できるようになっている。

この連射機能がよかった。

というのも、戦いの最中で動いている相手を狙って撃つことは存外難しい。

というよりも、ほとんど職人技だろう。

動く獲物を弓矢で射て、狙いを外すなと言われても普通はそんなに簡単にできないことからも分かるだろう。

だが、連射ができれば話が違ってくる。

それも自分だけではなく、近くにいる味方も同様に魔銃を持ち、連射できるのだ。

魔銃から発射される魔弾は正確には狙って発射するものではない。

撃ちたい相手がいる方向に向けて、相手の胴体めがけてばら撒くように発射することで、より効率的に相手の軍に損害を与えられるようになっているのだ。

つまり、大将が作った魔銃というのは岩弩杖のように一撃の攻撃力がある単発攻撃ではなく、軍同士の戦いでより殲滅力のある攻撃を省魔力でできるようにという考えから完成した一品なのだ。

しかも、さらに継戦能力を高めるために、魔銃で使用する魔力は外部からも取り込めるようになっている。

魔銃には魔石をはめ込む場所があり、そこに魔石を入れておくことで所有者の魔力ではなく魔石から魔力を得て魔弾を発射することができるのだ。

もちろん、バルカ軍はすでに全員がバルカの魔法を使える。

ということは、【魔石生成】という魔法も使えるということで、事前に予備の魔力を確保できているということでもある。

「えっと、それって要するに、壁を越えてバルカ軍に近づいてきたラインザッツ軍は魔銃による魔弾の掃射攻撃で攻撃されているっていうことですか? あー、本当ですね。よく見たらバルカ軍から魔銃を向けられているラインザッツ軍の兵が次々と倒れていっています。けど、魔弾っていうのが速すぎて全然見えません。あれじゃ避けられないですよ」

「だろうな。しかも、魔銃の攻撃力は岩弩杖よりも劣るとはいえ、金属のような硬さを持つ硬化レンガの弾が超高速で飛んでくるんだ。一般兵だけでなく、騎士であってもその攻撃をもらったら無傷ではすまないかもな」

「お、思った以上に攻撃力があるじゃないですか、バルガス様。っていうか、それじゃあ、一般兵でも騎士相手に勝てる、ってことですか?」

「必ず勝てるっていうわけではないだろうが、まあ勝つ可能性は今までの肉体的な強さと魔法の有無を考えたら魔銃の存在価値は大きいと思うぞ」

というか、今更だがこんなことをラジオで話していてもいいんだろうか?

魔銃は今回の戦いが初めての実戦投入だと記憶している。

そんな新兵器の解説を誰が聞いているかわからないラジオでぶっちゃけてもいいのか不安になる。

が、事前の話では大将から特に話す内容に制限は設けられていなかった。

ということは、話してもいいということなのだろう。

いや、むしろ、このラジオを聞いている他の貴族連中がバルカを恐れるようにしっかりとその怖さを伝えておいたほうがいいのかもしれない。

こうして俺は大将が何を考えているか、何を狙っているかに物思いに耽りつつも、さらに新たな展開を見せ続ける戦場の動きについて解説を続けていくのだった。