軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

航空写真

「これはすごいな、アルス。反則なんじゃないか?」

「いやー、バイト兄がそう言いたいのもよく分かるよ。これはいいものだね」

バイト兄と机の上に置いてある紙を見ながら、思わずそう言ってしまった。

その机の上にあるのは、地図だ。

バルカで作られた植物紙に描き込まれた地図。

が、それはとんでもないものだった。

魔導飛行船にアイを乗せて上空を飛び回る。

そして、そのアイが地上を見てその地形情報を完全に学習した。

ということは、その地形情報はカイザーヴァルキリーに【共有】されており、【記憶保存】されることを意味する。

その情報は一言で言えば航空写真だった。

上空から俯瞰視点で撮影された完全な地形。

だが、その地形情報について俺やバイト兄は見ることはできない。

なぜなら、俺たちはリード家ではないため【念話】などの魔法が使えないし、カイザーヴァルキリーに繋がっていないためだ。

しかし、それはカイルが【念写】してくれたことで解決した。

上空から観た地形で、今回の戦に必要なラインザッツ領などの航空写真を【念写】してくれたのだ。

その結果、俺たちの前には非常に精密な何一つ間違いのない地図が用意されることになったのだ。

実はこの地図作りは気球や飛行船を開発した後から実施していた。

それに浮かぶ機能のある乗り物にリード家の人間を乗せて、上空から観た地形を紙に【念写】させていたのだ。

だが、それは今、目の前にあるアイ製の地図とは全然違うものだった。

というのも、空から観測しているリード家の者が【念写】できるのは、あくまでもその者がその時観ている視界内の地形に限定されているからだ。

つまり、今までは上空からパシャリと地上の写真を撮るだけしかできなかったということだ。

そのため、複数の箇所で複数の視点から【念写】を何度も繰り返し、そうして【念写】された紙を後でまとめて、人力でつなぎ合わせていたのだ。

しかも、それを改めて地図という形に落とし込むために、地図製作技法を持つ者に継ぎ接ぎした【念写】の紙を渡して描き直させていた。

だが、人間とは全く異なる仮想人格であるアイはそんな手間が必要なかったようだ。

視界内で観測したものをそのまま情報として得ているので、写真を撮るように【念写】を繰り返す必要もない。

そのために、いくつもの場所から見下ろして観測した地形をジグソーパズルのようにはめ合わせるようなことはせずに、連続性のある一枚絵、あるいは映像として地形を把握できたのだ。

そして、その情報はカイザーヴァルキリーに納められており、カイザーヴァルキリーと知識を【共有】されている賢人たちはそれを閲覧できる。

まるでインターネットで気軽に航空写真を見るかのように、好きな場所を好きな倍率で自分が見たいところを詳細に見られるのだ。

もちろん、それは見るだけに留まらない。

カイザーヴァルキリーの知識にコンタクト可能な者というのは、当然、リード姓を持つ者だ。

すなわち、頭の中で見ている情報を紙に【念写】してアウトプットすることが可能だということになる。

なので、カイルがこうしてラインザッツ領の地形を事細かに映し出した航空写真を俺たちの前に送ってくれたのだ。

古来、地図は重要な軍事情報だと言う。

それは間違いないことだろう。

そして、この航空写真は今までの地図を遥かに凌駕するものだった。

そもそも、これまでバルカが作ってきた地図も相当なものだったのだ。

継ぎ接ぎして作っているとはいえ、上空から地形を見下ろした写真のような紙を元にして作り上げた地図は、それまでの地図とは比較にならないできだった。

だというのに、それを完全に超越している。

「便利すぎるな、これは。けど、逆にこれらの情報が流出したときの反動のほうが気になるくらいだ」

「そりゃそうだろ、アルス。これがあれば戦をする前に作戦を立て放題だ。けど、これと同じものを相手も持っていたらそれを逆用されるってことだろ? やばすぎるぞ」

「うーむ。新たな問題発生かな? カイザーヴァルキリーに【共有】させる者を限定するのは当然として、そいつらから情報が漏れないかどうかと、あとはそもそも閲覧禁止情報を設定できるかだな。アイに確認しておかないといけないな」

情報の扱いは難しい。

わかってはいたことだが、それを改めて認識する。

情報は集めたいが、不必要にその情報を拡散させないように気を配る必要があるだろう。

そうだな。

さしあたって、今後カイザーヴァルキリーと知識を【共有】できる者はより限定してしまったほうがいいだろうか。

とりあえずは、カイザーヴァルキリーと繋がっているやつは今後天界であるバルカニアから絶対に外には出さないようにでもしようか。

空に浮かぶ土地に軟禁状態になるようなものだが、そのくらいはしてもいい気はする。

なんせ、あそこは外敵からも襲われにくいうえに過ごしやすく、食べ物も豊富にある。

不満があるやつはカイザーヴァルキリーとの縁を切って、情報閲覧できないようにするしか無いだろう。

アイが作り上げたその重要機密である地図を見ながら、俺は情報漏れを防ぐためにそう決断せざるを得なかったのだった。