軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

聖痕

「……なあ、カイル。アイってすごい便利だな」

「うん、いいね。自分で作っておいてなんだけど、かなりいい感じに作れたと思うよ。ただ、まだまだ知らないことが多いから覚えることはたくさんあるけどね」

「まあ、それも時間の問題だろう。なんせ、アイ自身が勝手に学習していくんだからな」

神の依り代を仮想人格によって動かす。

なんだかとってもSFチックなことになってきたが、これが思った以上に便利そうなのだ。

なにせ、アイは人ではなく魔導人形なのだ。

起動時にカイルの魔力を使ったので、動いている間はずっとカイルの魔力を消費しているらしい。

が、カイルの魔力は俺よりも多い。

つまり、アイを複数起動していたところで電池切れになる心配がないのだ。

そして、依り代は人間のように作ったが人間ではない。

つまり、疲れることがない。

なので、延々と動き続けることができるのだ。

なんて便利なのだろうか。

これはもしかしてあれか?

アイに家事を覚えさせれば、何もせずにグータラ生活をしていても大丈夫なのではないだろうか?

ニート生活が目の前に転がっているように見えてしまった。

「なあ、カイル。俺もアイがほしいんだけど……。後で精霊石を渡すから魔法陣を描いて作ってくれないかな?」

「……やってもいいけど、リード家への援軍を出すのを忘れないでね、アルス兄さん」

「おう、もちろんだとも。アイのためならなんだってするぞ、俺は」

「アルス・バルカ様、今のは本当ですか? アイのためになんでもすると聞こえましたが」

「なんだ? アイは何か俺にしてほしいことでもあるのか?」

「はい。アイはもっとお話がしたいです。アルス・バルカ様にいろんなことを聞いてみたいです」

「よしよし、わかった。あとでいくらでも話をしてやるよ、アイ」

「あの……、アルス兄さん? アイはあくまでも魔導人形だからね。変な間違いだけは起こさないでね」

「するわけないだろ、って言いたいところだけどアイはきれいな見た目をしているからな。確かに危ないやつに襲われないか注意も必要だろうな」

現在、アイシリーズはリシャールの街にあるシャーロット城で活動している。

当然、その城の中にはリード家を始めとしていろんな連中が出入りしているのだ。

そこに突如現れた謎の女性アイ。

しかも、きれいな見た目をした女性がたくさんいるのだ。

それを見たものはどう思うか。

人形であるのに勝手に動いていることに驚くか。

あるいは、きれいな顔をしていて話もするのに、いまだに笑顔が少なくて不気味な感じがするのか。

ほかにもいろいろあるかもしれない。

そんななかで、すぐにひと悶着あったのだ。

それは自律的に動き、人間と遜色ない思考回路をもって、常に学習をするきれいな見た目の人形の価値を見抜いた者たちだ。

彼ら、彼女らはアイを手に入れようと動こうとした。

手段の是非を問わずに、リスクのある行動に出ようとした者もいる。

まあ、それらはなんとか無事に切り抜けられて、今のところアイシリーズは全員無事だった。

だが、今後も同じようなことがあるかもしれない。

あと、純粋に偏執的な嗜好を持つ者が襲わないとも限らないだろう。

それらに備えて、なにか対策をしておくほうがいいかもしれない。

「なんかこう、いい対策はないもんかな、カイル? アイが盗まれないように未然に防ぐにはどうすればいい?」

「……そうだね。とりあえず、管理者権限でも設けておこうか? ボクかアルス兄さん以外の人には勝手についていかないように、って言っておくだけでも大分マシだとは思うんだけど」

「確かに。今の状態だとまっさらな子どもだもんな。知らない人についていくなってのは基本か。けど、それだけじゃ不十分だろう。勝手に連れ去られるかもしれないし」

「その場合は他のアイに連絡を送って、予定外の移動を強制させられていることを知らせるように設定しておこう。基本的にどこに連れ去られても、その子の現在地は大本のアイにはわかるはずだから」

「なるほど。追跡機能は完璧ってことね。……けど、それだけでも万が一があるというか、根本的に狙われにくくする方法ってのはないもんかな? しょっちゅう盗難騒ぎがあったら、俺もカイルも大変だろう?」

「それなら、なにかアルス兄さんが印をつけておいたらどうかな?」

「印? 俺が印をアイにつけたところで盗むやつはでてくるんじゃないか?」

「神の盾であるアルス・バルカの印だよ? それを盗んだ者は神の盾にどのような対応をされても文句を言えない、ってことになれば盗もうとする人は減るような気もするけどね」

「なるほど。要するに、盗んだら許さんと実力行使もチラつかせながら宣言することで、盗難意欲を削ぎ落とそうってことか。まあ、やらないよりはマシかな? でもそれだとアイシリーズの所有権は俺になるぞ。いいのか、カイル?」

「うん、いいよ。リード家で使わせてもらえるならね」

それなら、バルカ家の紋章ではなく、俺個人の印というか、神の盾としての印でも作ろうか。

で、それをアイシリーズに入れる。

そうだな、格好つけて、その印のことは聖痕とでも呼んでみてもいいかもしれない。

聖痕の入ったアイを勝手に持ち出そうとする者は、神の裁きを受けることになる。

なんだったら、教会に働きかけて盗んだ者は神敵認定にでもしてやれば、盗難件数は減るかもしれない。

そう考えた俺はヴァルキリーの角の形をモチーフにした印をアイの鎖骨の下の胸元に入れることにしたのだった。