軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

最初の学習

「アイ、質問があるんだけど聞いてもいいかな?」

「はい、なんでしょうか、アルス・バルカ様」

「……その前に、カイルが作った仮想人格であるお前の名前はアイだ。俺が決めた。これに不満はないか?」

「ありません」

「そうか。それならいい。じゃあ、聞きたいんだけどアイの本体である仮想人格ってどこにあるんだ?」

「私の主要な機能はすべてカイザーヴァルキリー様の記憶野に保存されています」

「カイザーヴァルキリーの頭の中に?」

「はい、そのとおりです。カイル・リード様がアイをお創りになり、その人格をカイザーヴァルキリー様に【記憶保存】したのです」

自律人形として勝手に動いて喋るアイに俺は質問していた。

基本的には俺は割となんでも受け入れるタイプだと思う。

魔力や魔法が使えるのであればそれを利用し、その原理がいかなるものかを知らなくてもそこまで気にはしない。

いちばん重要なのは今の俺に何ができるか、という点にあるからだ。

だが、この仮想人格を通して動くアイシリーズはカイルが作ったもので全くよくわからなかった。

なので、とりあえず本人である仮想人格アイさんに質問することにしたのだ。

まず、一番気になっていたアイという仮想人格がどこにあるのか、だ。

いくつもの依り代を動かしている人格はそれぞれの個体に入っているわけではないらしいと聞いていた。

そして、その結果、アイの所在地はカイザーヴァルキリーの頭の中にあるらしい。

と、いうことは、カイザーヴァルキリーというデータサーバーにカイルの作った仮想人格というプログラムソフトを作ったということなのだろうか?

そのプログラムソフトを依り代という端末にインストールし、その結果、仮想人格であるアイが依り代を動かしている、という感じなのだろうか?

「ん? でも、そうなると学習機能があるのはどういうことだ? 各端末であるそれぞれの個体が学習したことを、本体である仮想人格が覚えるんだろ? ってことは、端末で覚えた内容をカイザーヴァルキリーに送信する機能もあるのか」

「そのとおりです、アルス・バルカ様。アイはもともとカイザーヴァルキリー様に記憶された知識の書の情報集積と精査、検索を目的としています。そのため、カイザーヴァルキリー様を基点とした【共有】によるつながりのある方々とすべて繋がっているのです」

どういうことだろうか?

賢人会議に参加したメンバーはカイザーヴァルキリーから部分的な【共有】を施されて、それぞれの持つ知識をカイザーヴァルキリーに送るようになる。

その結果、知識の集積とともに情報の閲覧もできるようになっている。

そして、その情報閲覧をより効率化するという目的のために造られた仮想人格。

なので、アイはもともと知識の書にアクセスできる者と情報の橋渡しをする役割があるのだろう。

そして、その関係はソフトをインストールされた依り代とも同じようにあるのかもしれない。

カイザーヴァルキリーと端末である依り代を双方向で情報のやり取りをすることで、常に情報の更新を行えるからこそ、学習機能なんてものがあるのだろう。

「しかし、学習機能があるのもすごいが、その前段階として人間である俺と普通に会話できているってのがとんでもないな。カイルのやつはどうやってそんな仮想人格を作れたんだろう」

「カイル・リード様は多数の補助人格をお持ちです。その人格を活用したのです」

「はい? 多数の補助人格? なにそれ?」

「カイル・リード様は常時【念話】などで多数の方々から連絡を受けています。ほぼ一日中、途切れることなく、休みなくです。そのため、カイル・リード様は以前よりその連絡への対応として、補助人格を持たれているのです」

「そうなの? それ、初耳なんだけど」

もしかして、カイルは多重人格みたいな感じなのだろうか?

いや、多重人格だと自分とは別の人格みたいになるかもしれないが、カイルの場合はちょっと違うのか。

あくまでも仕事の補助をするための人格を自分の中に作ったのかもしれない。

まあ、そういうこともありえるか。

確かに、いくら【並列処理】があるとはいえ、常に【念話】で話しかけられていたらたまったものじゃないだろう。

おちおち寝ていられないしな。

自分の代わりに誰か対応してほしいと思うことがあってもおかしくはないか。

カイルはそれに対応するために補助人格なるものを作り出した可能性がある。

ということは、結構何年も前から自分の中に複数の人格があったのだろう。

それを情報検索のために使うことを考え、そしてさらにその人格そのものに体をもたせられる可能性も考えていたのかもしれない。

だからこそ、いきなりアイシリーズを導入可能だったのだろう。

「うーん、なるほどな。カイルが苦労しているのは知っていたけど、そこまで大変だったとは思いもしなかったよ。アイ、お前はカイルのためにしっかり働いてやってくれ。カイルを助けてやってほしい」

「承知致しました、アルス・バルカ様」

「……じゃあ、まずは笑い方からでも覚えてみるか? 神様用に作ったきれいな顔がニコリともしないで会話してくるのは、なんかちょっと怖いからな」

「笑い方、ですか?」

「そうそう。こんなふうに口の端を持ち上げる感じでニコッとしてみて」

「ニコ」

「口で言うんじゃない。ニッコリと微笑むだけでもいいんだよ。違う、そうじゃない」

結局、アイのことはわかったようなわからないような状態だ。

だが、これでカイルが助かるというのであればそれでいいじゃないか。

そう思った俺は、とりあえず真顔で会話し続けるアイに笑顔をレクチャーすることにしたのだった。