軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貸し出し厳禁

「アルス兄さん、これはいい機会だと思うから今聞いておこうと思うんだけど」

「ん? なんだ、カイル? 聞きたいことがあるならなんでも聞いておいてくれよ」

「じゃあ、遠慮なく。さっき、アルス兄さんは言ったよね。リード家の領地を広げるために力を貸してくれるって。それって、どのくらいまでアルス兄さんを頼ってもいいものなの?」

「なんだよ、カイル。もしかして、俺がカイルを見捨てるかも、なんて考えているんじゃないだろうな? 俺はそこまで薄情なやつではないつもりだぞ」

「うーん、でも、なんでもしてくれるわけでもないでしょ? だって、アルス兄さんは意図的に力を制限しているよね? 例えば、魔導飛行船なんかがいい例だよ。あれをもっと量産すれば、バルカにとって大きな力になるはずなのに増やそうとしていないよね? もしも、ボクがリード家の領地を拡大するためにアルス兄さんに魔導飛行船をたくさん作ってほしいって頼んだら、やってくれるの?」

「……やらないかな。自分で使う分にはいいけど、あんまり増やしたくないし」

「でしょう? だから、確認しておきたいんだよ。アルス兄さんにどこまでリード領の拡大を手伝ってもらえるのかってことを」

うーむ。

そう言われるとなかなか困る問題だ。

どこまでカイルのことを助けるか。

もちろん、かわいい弟のカイルのことを手助けしたい気持ちは大いにある。

それにそれは巡り巡ってバルカ家にとってもいい面が大きいというのもある。

だが、だからといってなんでも願いを叶えてやるという気もないのは確かだった。

まず、大前提としてリード家の領地の拡大を手伝いはしても、俺の切り札をカイルに無条件で預ける気にはちょっとなれないかもしれない。

さっき話に出た魔導飛行船は俺が魔力で作り出した精霊石に対して魔法陣を入れることでプロペラを回す動力になるように造られている。

これをリード家に貸し出して、もしそれが第三者に鹵獲されてしまうとどうなるか、と考えずにはいられないのだ。

魔法陣そのものは暗号化されているので解読はされないかと思うが、カイルレベルの天才がいないとも限らない。

そうでなくとも、鹵獲された魔導飛行船を逆に相手に使われただけでも、こちらにとっては大きな損害が出る可能性がある。

つまり、俺はなるべく相手に奪われたら危険なものを外に出したくない、という思いがあった。

もちろん、魔導飛行船や魔導列車はカイル自身も開発に協力していたので、そのうち精霊石以外を動力源にする方法で作り出す可能性もあるだろう。

だが、すぐに俺の持つ優位が崩されるかもしれないことは控えたい。

そのために、いくらカイルの願いだとは言え、重要度の高いものは貸し出し禁止とするつもりでいる。

「じゃあ、角ありたちも駄目だってことだよね?」

「そうだな。今まではカイルにも角ありの使用を許可していたけど、それもこれからは禁止かな。悪いな、カイル」

そして、なんといっても俺の最大の戦力である角ありたちもリード家の領地獲得のために使いたい放題にするつもりもなかった。

もちろん、カイザーヴァルキリーも戦場に投入する気はない。

なぜなら、迷宮核などと【合成】したカイザーヴァルキリーは唯一無二の存在となっているからだ。

魔力量の増えたカイザーヴァルキリーが普通に戦って負ける相手などそうはいないだろうが、それでも戦いは何があるかわからない。

もしかしたら、変則的な魔法などを使われてカイザーヴァルキリーが死んでしまう可能性だってあるのだ。

そんな危険を冒す気はない。

リード領を拡大しようぜ、と言っておいてできないことばかりなのは申し訳ないが、これだけはどうしても譲れない。

悪いね、カイルくん。

「まあ、そうでなくてもリード家の領地の拡大は人の手によってなされるべきだと俺は思う。例えばだけど、角ありたちを大量投入して各地の街を襲撃して貴族連中を殺し尽くしたとしよう。そんなことをして、その土地に住む連中はリード家をその地の支配者であると認めると思うか、カイル?」

「認めないだろうね。余計に反発するかもしれないね」

「そうだ。結局のところ、領地を得るのに武力は必要だけど、それを持続して統治していくため必要なのは人の心を掴むことだからな。正々堂々と戦ってリード家という組織が勝利してこそ、その土地の支配者たりえるんだ。まあ、そんなことカイルに今更言わなくてもわかっているだろうけど」

「……それじゃあ、バルカから軍を出すのは問題ないんだよね? バイト兄さんたちに手伝ってもらったり、あとはバルカ銀行からいくらか金銭的な支援もしてもらいたいっていうのもあるんだけど」

「もちろんだ。そういう支援はいくらでもするし、俺も軍を率いて戦うつもりだよ」

「……なら、最後にどうしても欲しい物があるんだけど、聞いてくれないかな、アルス兄さん」

「お、なんだ? さっき出たの以外でなにかカイルが欲しがるやつってあったっけ?」

「うん。って言ってもアルス兄さんの言う禁止物に入るかもしれないんだけど……」

そう言って、カイルが俺におねだりしてくる。

両手を胸の前で組んで、ウルウルとした瞳でこちらを見つめながら、少し上目遣いでだ。

なんなんだ、こいつは。

もう結婚して奥さんもいる17歳の男の子だというのに、なんでそんな子犬みたいな雰囲気を出せるんだ。

なんだかいけない気持ちにさせてくるカイルのおねだり攻撃を受けて、俺はその願いをつい聞いてしまったのだった。