軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

悪い知らせ

「アルス様、悪い知らせが届きましたよ」

「どうしたんだ、リオン? 悪い知らせってなんだ?」

「ヨーゼフ・ド・グレイテッド殿が亡くなったようです。王都から情報が入りました。つい数日前のことです」

「ヨーゼフ殿が? ……心労でぽっくりいったわけではないんだよな?」

「はい。こちらの掴んだ情報では殺されたようですね」

「まじかよ。誰にやられたんだ?」

「ドーレン王家に仕えるビスマルク家の当主ですね。アルス様と会って、その後、王都圏に帰還したヨーゼフ殿はドーレン王とその側近に話をしたようです。その話し合いの場で凶刃に倒れたとのことです」

「うーむ。話をしたときの感じでは、ドーレン王やその他の者の説得はうまくいきそうだって言ってたんだけどな」

「王都圏の中でもビスマルク家は割と過激派であると知られています。先代王の遺体を目の前にして引き返してきたことに対して激怒したようですね」

「……そうか」

フォンターナの街で評議会を開いて国際法の制定について話をしていた。

東方の国際法を全員で確認しながら、どの項目が自国にとってメリット・デメリットがあるかを洗い出していたのだ。

が、そんな会議をしているときにリオンが王都で起こった事件を知らせてくれた。

どうやら、王都に戻って周囲を説得していたヨーゼフが命を落としたようだ。

やったのはドーレン王家に仕える名門貴族の当主らしい。

リオンが掴んだ情報によれば、先代王のことで揉めたのだそうだ。

まあ、そりゃそうか。

生死不明でおそらく死んだものとして扱われていた先代の王。

しかし、亡くなったにしては継承権第一位の王子に当主の座が移る気配もない。

これはいったいどうしたことかとドーレン王家を始め各貴族家は頭を悩ましていたのだ。

そんなドーレン王の継承権が復活するかもしれない。

驚くべきことに敵対していたフォンターナ王国からもたらされた情報によって、その可能性が示唆された。

そして、それを実現するためにはフォンターナ王国とドーレン王家が和解をすることを要求されたのだ。

そこまでであれば、なんとか受け入れられたのだろう。

だが、もう一度、ヨーゼフが出向いて話し合いをしてみれば、なんと相手方が先代王の遺体を保管しているときた。

こんな偶然があり得るだろうか?

もしかして、なんらかの形でフォンターナ側が先代王の身柄を押さえていたのではないだろうか。

もしかすると、こんなふうに思われたのかもしれない。

では、その情報を王都に持ち帰ったヨーゼフのことはどう映るか。

先代王の遺体を自分の目で確認したというヨーゼフ。

なぜ、その場で遺体を取り戻して帰ってこなかったのか。

あるいは、ヨーゼフ自身が相手と通じているのではないか。

まさか、ドーレン王家の継承権が戻ってこなかったことにお前も関係しているのではないか。

そんなふうに思われてしまったのかもしれない。

そして、そう考えた者はカッとなってしまった。

可能性のひとつでしかないその話を事実であると疑わず、つい剣を振り下ろしてしまったのかもしれない。

「やっぱ、先代ドーレン王の遺体は見せないほうが良かったかな?」

「そうかもしれませんね。逆の立場であれば、こちらも怒るでしょうし。まあ、それでもいきなり切りかかって息の根を止めるのはあまりいい手ではありませんが」

「……こうなった以上、ドーレン王家との和解話は無くなるだろうな。話をまとめるやつがいなくなっちまったし」

「国際法もなしですね。……どうするのですか?」

どうしたものかな。

カイザーヴァルキリーが遺体を出したときに、つい情が湧いたのが悪かったかもしれない。

こういうことになるのであれば、見なかったことにしておくべきだったか。

葬式は遺体なしで形式上のものとしてやって、後で埋葬しておくようにしたほうが良かったかもしれない。

ただ、やはり実際に遺体がある以上、それを知らせておくほうがいいかと思ってしまった。

完全に余計なことをしてしまったとしか言えないな。

だが、これでフォンターナとドーレン王家の和解話は頓挫するだろう。

なにせ、ドーレン王家に対して説得を行っていた張本人がいなくなってしまったのだから、これ以上話を続けようがない。

……まあ、なってしまったことはしょうがない。

ヨーゼフには悪いことをした。

あの人は本当にドーレン王家に対して尽くしていただけだと思う。

できれば、誤解を解いてやりたいがそうも言っていられないかもしれない。

ドーレン王家、あるいはビスマルク家がどう動いてくるかが問題だからだ。

もしかしたら、兵を集めて動くかもしれない。

そうなったら、カイルのいるリード領が危険だ。

こうして、ヨーゼフの死という知らせを聞いた俺はこの事態に対応するために再び移動することにしたのだった。