軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

硬化レンガ

「さてと、グランがいないうちに俺もちょっと試してみるか」

何日もずっとグランと一緒にものを作るという作業につきあわされて、もうこれ以上はこりごりだと思っている俺だが、実は一つだけ試してみたいことがあった。

それはグランが作った硬牙剣を見て思いついたことだった。

硬牙剣というのは大猪の牙からできた直剣だ。

牙の状態でも大猪の巨体から繰り出される突進の破壊力と合わせれば人間など問題なく貫ける硬さを持つ。

それを剣の形へと変え、さらに魔力を注ぐことでより硬度を増すという特性がある。

が、魔力を通さずともかなりの硬さを持つ不思議な物質。

正直、どういう原理でそういうことができているのかはよくわからない。

だが、確実なのは大猪の牙という素材とヴァルキリーの角という触媒の効果によって【硬化】という特殊な効果が発揮されているということだ。

であれば、ほかのものにその効果を発揮することはできないものだろうか。

建物建築をお願いしてグランがいなくなったあと、俺はこの考えを試してみるために一人で炉に向かった。

手には材料を抱えている。

俺の考えは非常に単純なものだった。

それは俺が作り出しているレンガをもっと硬いものにできないかということだったのだ。

炉の前についた俺は材料を並べていく。

俺が魔法で作った耐熱レンガ。

魔法で作った粘土。

大猪の牙。

ヴァルキリーの角。

魔力回復薬。

最初は耐熱レンガを鍛冶で使っているハンマーで叩いて砕いていく。

前世で聞いたことがある知識だ。

粘土から耐熱レンガを作るためには、耐熱レンガを砕いて粘土と混ぜて作る、という制作方法があったはずだ。

普通のただの粘土からではなかなか熱に強いレンガを作るのは大変なのだが、耐熱レンガという材料があればそれを混ぜると作りやすいのだという。

それを参考に俺は細かく砕いたレンガを粘土に混ぜ込んで、炉で焼いて自作レンガを作ろうとしているわけだ。

だが、当たり前だが魔法で作れるレンガを実際に焼いて作りたいわけではない。

ここで俺の思いつきを実現するために他のものを混ぜていく。

砕いたレンガと一緒にこれまた細かく砕いた牙と角を粘土へと混ぜ、液体状にした魔力回復薬を使って粘土を混ぜていったのだ。

とりあえずはそれぞれの材料の分量を10パターンほどに分けて、練り上げていく。

そうしてできた粘土を型に詰めて炉で焼き上げていったのだった。

何度もその作業を繰り返す。

焼き上がったものはほとんどが触るとボロボロと崩れてしまうような失敗作ばかりだった。

レンガ作りの作業そのものに慣れていなかったこともあるのだろう。

だが、だんだんと制作作業にもこなれてきて、どんどんと配合パターンを調整しながら粘土を焼いていった。

そして、数え切れないほどのレンガを焼き上げて、ようやく目的のものが出来上がったのだった。

※ ※ ※

「カッチカチやぞ」

俺が作り上げたレンガは恐ろしく硬いものに仕上がった。

牙と角を混ぜ合わせたからかそれまでの魔法で作っていた赤茶色をしたレンガとは色味が異なっている。

少し白っぽいと言うか乳白色がベースだが白一色ではなく黒い模様が広がっている。

表面がレンガとは思えないほどなめらかだ。

どちらかというとレンガというより大理石のような印象を受ける。

この新しく作ったレンガはとりあえず硬化レンガと呼ぶことにする。

この硬化レンガを先程までの作業で数え切れないほど振り上げてきたハンマーでぶっ叩いてみる。

ガキン。

そんな音がレンガとハンマーの衝撃によって発生した。

今までのレンガであれば間違いなく砕けていたはずだ。

だが、硬化レンガはそのハンマーの一撃を受けても表面に僅かな傷もついていなかった。

「すごいな……」

まさか素材と触媒を使うだけでこんな代物が完成するとは俺の予想以上だった。

前世の技術力を持ってしてもこんなレンガはできっこないのではないだろうか。

なんというか、ものすごいものを開発して俺の心はものすごい充実感に満たされていた。

グランがものづくりにのめり込んでいる気持ちが今なら少し理解できる気がする。

だが、俺のやりたいことはここで終わりではなかった。

硬化レンガを開発すること自体は最初の一歩と言ってもいいかもしれない。

俺がしたいのは硬化レンガの開発そのものではなく、硬化レンガを魔法で作り出すことなのだから。

魔法というものはものすごいものだと思う。

何が一番すごいかといえば、俺の知る科学知識を完全に無視して発動しているところだと思う。

ただの土からレンガを作り出していることもそうだが、同じ材料からガラスや白磁器を作ったりも可能なのだ。

そのくせ土や石、岩といった以上の硬度を持つ金属系は全然作れないという不自由さがあった。

だが、この硬化レンガならばどうだろうか。

俺の魔法で通常のレンガ以上の硬度を持つ、まるで金属のように硬いレンガができないだろうか。

常々そう考えていたのだ。

だが、頭の中でいくら硬いレンガをイメージしても今まで以上のものは魔法では作り出せなかった。

おそらくだが、俺の知識や常識といったものが「そんなものが存在するはずがない」とイメージの邪魔をしていたのではないかと思う。

だからこそ、実際に作り上げたかったのだ。

金属のような硬さを持つレンガをこの世界で。

硬化レンガを両手で持ち上げて、俺の体から魔力を送り込む。

これからやることは前にもやったことがあることと同じだ。

実際の存在する硬化レンガに対して練り上げた魔力で包み込み、内部の構造をミクロですらのがさないという意気込みで染み込ませていく。

時間をかけ、納得するまで魔力を染み込ませたあとに【記憶保存】の呪文を唱えた。

「硬化レンガ生成」

そして、硬化レンガを覚えた状態で【硬化レンガ生成】と唱えた。

実験は成功だった。

それまでの【レンガ生成】という呪文で作られていた赤茶色のレンガではなく、大理石のような見た目のものすごい硬さを持つレンガが魔法の発動とともに目の前に現れていたのだった。