軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

本と絵本

カイザーヴァルキリーという新たな存在によってもたらされたインターネットのようななにか。

これに賢人会議で得られた知見を集積していき、さらに精査して情報をブラッシュアップしていく。

が、最終的にはやはり本として紙に出力してもらうことにした。

なんといっても、カイザーヴァルキリーの頭の中にあるだけでは俺が読めないという問題があるからだ。

それに、いつでも新規情報が入る状態の媒体よりは、きちんとまとめた論文のような、あるいは百科事典のようなもののほうが良いように思う。

さらにいえば、本を出版することでより情報を得ようという考えもあった。

今の賢人会議というのはあくまでもバルカが集めた人材だけだ。

だが、世の中は広い。

今、うちにはいない知識人たちが必ずいて、それらは他の情報を持っていることもあるだろう。

そのようなリード姓を持たない真の賢人による意見を求めるためにも本という形にして世に出すことに意味がある。

とりあえず、広く読まれるようにして反論なり追加情報なりを募ろう。

そんなことを考えていて、ふと昔話を思い出した。

そういえば、似たようなことをした話を聞いたことがある。

あれはなんだったか。

確か、秦の始皇帝が幼い頃に権力を持っていた呂不韋という人物の話だったはずだ。

当時秦という大国の実権を握っていた呂不韋は「呂氏春秋」という書物を作り上げた。

呂不韋が雇っていた食客たちに共同編集させて作ったその書物は、天文や音楽理論、農学理論など当時のさまざまな学問を詰め込んだものであり、後世でも高く評価されている書物だった。

その呂氏春秋を作った際に呂不韋は一般公開し、お触れを出したらしい。

もしも、この書物に一字でも内容が欠けているところがあれば、あるいは一字でも不要な部分があるならば、それを申し出るようにと言ったそうだ。

一字でも添削できれば、それがどのような者であろうとも千金に値する報酬を与える、いわゆる「一字千金」なるものを実施したらしい。

それはひとえに、自分が作り上げたその書物がすべての情報を網羅したものであるという自信があったからこそできたことなのだろうと思う。

果たしてバルカではそれと同じようなことができるだろうか。

できればそこまで到達したいという思いがある。

が、無理なような気もする。

なにせ、俺が集めた変人たちはあくまでも国内の範囲内での知識しかないのだから。

東方という未知の文化を持つ世界があるうえに、西には屈強な魔物が存在している。

俺たちが知らないことのほうが多いだろう。

それならば、逆に未知の世界を案内する本もあっても良いかもしれない。

ほとんどの者が訪れたことのない東方や西方世界へといざなう本を作れないだろうか。

こっちは別に事実を書かなくともいいだろう。

まるで物語のように、誰も行ったことがない場所へと冒険する話でも作ってみようか。

そんな本が人気になったほうが、後々作ろうかと思っている西方での冒険者の街に人が集まるかもしれないしな。

「それはいいですね、バルカ様。バルカ様がどんな冒険をしてきたのか興味のある人は多いでしょう。みんな読みたいと思いますよ」

「そうかな? じゃあ、もしそんな本を書いたら挿絵は画家くんに任せようかな」

「本当ですか? 光栄です。ぜひ、やらせてください」

「……いや、画家くんが協力してくれるなら、いっそ絵を主体にした本でも出してみるか?」

「え? 本なのですよね? 絵が主体というのはどういうことですか?」

「絵本だよ。大人向けに文字だけで小難しく書いた本でもいいけど、これからは冒険者として西で仕事をする人を増やしたいとも思っている。で、そんな奴らを増やすには、やっぱり子どものときから冒険したいと思わせることが重要だろう。ってことで、子ども向けに文字ではなく絵で読ませる本を作ってみてもいいんじゃないか?」

「なるほど。普通は文字がある本に挿絵を挟むのが一般的ですが、絵に文字を添えるようにするというわけですか。それなら、小さな子でも絵を見ただけで物語の流れが理解できるかもしれませんね。新しく文字を覚える役にも立つかもしれません」

「ああ、それもいいな。各地に作った小学校にでも寄稿して、誰でも読めるようにしても良いかもしれないな。やってみるか、画家くん?」

「はい。ぜひ、やりましょう、バルカ様」

どうやら賢人会議に出席していた画家くんは、すでに一通りの知識を吐き出してきたようだ。

歴史的にどのような画法の発展がみられたか、などの細かい話はまだまだあるだろうが、現在使われている絵画の技術などの情報はもう出し尽くしてしまい、ひとまず暇になったようだった。

そんな画家くんと本について話をする。

知識の書はどう考えても専門性の強い難しい本になるだろう。

それとは逆に、絵本を作ってみてはどうかと考えた。

なんだかんだと言っても、まだまだ文字の読み書きできる子どもの数は少ない。

各地に小学校を作り、基礎的な勉強を受けられる体制を作りはしたが、ほとんどの子にとっては小学校は昼飯を食いに行く場所だという。

絵本が完成すれば、文字の読み書きに興味を持つ子が増えるかもしれない。

知識の書の内容を充実させるには、文化人などの専門家が必要ではあるが、一般人の教養も重要になってくるかもしれない。

そう考えた俺は東方遠征や西方探索に赴いたときの話を面白おかしく描いた絵本を画家くんと作ってみることにしたのだった。