軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

神への名付け

「どうだ、ヴァルキリー? どこにも異常はないな?」

「キュイ!」

「よし。じゃあ、次はカイルの出番だな。カイルがこいつに名付けをして、【念話】でやり取りできるようにしてくれ」

「……いまさらだけどいいのかな? なんか、実際に目の前にしてやっぱり神に名を付けるってどうなんだろうと思っちゃったんだけど」

「ほんとに今更だな。というか、それなら【合成】する前に名付けすればよかったのか? どっちにしろ、あんまり変わらないだろうけど」

「うん、いや、そうだね。ここでボクがためらっても意味がないよね。せっかくアルス兄さんとヴァルキリーが決断してくれたんだから。でも、どういう名をつければいいと思う?」

「そういえば、ヴァルキリーを【合成】するかどうかでずっと悩んでいたけど、名前をどうするかは考えていなかったな。リード・ヴァルキリーってのは変か?」

「うーん。別にヴァルキリーがリード家になるってわけでもないしね。あくまでも、この子はアルス兄さんの相棒ってことで変わらないでしょ? だったら、名付けするのはボクだけど、アルス兄さんが良いと思う名前にしたほうがいいんじゃないかな」

「……そうだな。えーっと、神様になったってことだから、ゴッドでも使うか? ゴッドヴァルキリー……、いや、なんかゴロが悪いかな。それなら、カイルの名前をもじって、すべてのヴァルキリーの頂点に立つってことで、カイザーヴァルキリーとかにするか?」

「カイザーヴァルキリー?」

「ああ。遥か西の魔境ですらその地に住む魔物たちに負けない強さを持つヴァルキリーの中でも、その頂点に立つ存在。氷精としての力も手に入れたヴァルキリーは、他のヴァルキリーたちの中でも特別な存在になった。というわけで、頂点に立つヴァルキリーという意味を込めて、カイザーヴァルキリーってのはどうかと思うんだけど、どうかな、カイル?」

「うん。良いと思う。ボクの名前もヴァルキリーの一部になれるんなら、こんなにうれしいことはないしね。じゃあ、この子はこれからカイザーヴァルキリーだ。それでいいんだよね、アルス兄さん」

「おう。こいつに新しい名を与えてやってくれ。命名」

迷宮核と特製吸氷石と一緒に【合成】されて生まれ変わった初代ヴァルキリー。

その姿は神秘的なものだった。

それまでの真っ白な姿も十分キレイなものだったが、その体から生える毛並みは少し青白く変わっておりキラキラと光っている。

というか、常に氷の粒子が舞っているとでもいうのだろうか。

まるで、ダイヤモンドダストのような感じでヴァルキリーの体から氷の結晶が出ていた。

そして、ほかにも変わったところがある。

それは角だ。

ヴァルキリーの頭から生えている2本の角が迷宮核に置き換わっているようだったのだ。

というか、角形の迷宮核とでも言ったほうが正しいのだろうか?

アイシャのように迷宮核と【合成】されて全身が動けない像になるのではなく、2本の角とその下の頭から額にかかるくらいまでを覆う部分が変化していた。

氷精の特性を持った肉体全てもそうなのだが、特にこの角周りの魔力量は半端無いことになっている。

その姿があまりにもすごかったからか、最初はカイルがこのヴァルキリーに名付けをしてもいいものだろうかと少し躊躇した。

が、ここでやめてもらっては困る。

なんといっても、この話を最初に持ち出したのは他ならぬカイルだからだ。

俺が【命名】で名付けの魔法陣を出し、カイルがヴァルキリーに名をつけた。

カイザーヴァルキリー。

それが、他のヴァルキリーとは明らかに一線を画す初代の新しい名前だった。

「よし、終わったな。それじゃ、実験しようか。カイルが【念話】でカイザーヴァルキリーに【記憶保存】してもらいたい情報を伝えてみてくれ」

「うん、わかった。…………すごいね、カイザーヴァルキリー。こんなことができるんだ。他の子もこれができるの? そっか。君だけなんだね」

「え? どうしたの、カイル? 何言っているんだ、ってか、カイザーヴァルキリーと喋っているのか?」

「うん。すごいよ、アルス兄さん。このカイザーヴァルキリーは他のヴァルキリーとはやっぱりちょっと違うみたい。ボクに対して【共有】を使ってきたんだ」

「はい? カイルに対して【共有】を? ってどういうことだ。もしかして、ヴァルキリーが使える魔法や魔力をカイルに【共有】してきたのか?」

「ううん、そうじゃないみたいだね。このカイザーヴァルキリーが【並列処理】してできた高次機能領域の一部に限ってボクに【共有】してきたんだ。つまり、ボクがこの子に覚えておいてほしい情報を【念話】で伝えたときに、頭の中でその情報が視覚的に表示されたんだよ」

「……えっと、よくわからんがそれってつまりあれか。カイザーヴァルキリーに本を一冊記憶しておいてもらえば、いつでもその情報を閲覧できるってこと?」

「うん、そんな感じかな。大丈夫、カイザーヴァルキリー? 君の負担になっていないかな?」

「キュイ」

「そっか。大丈夫みたいだね。それなら、ほかにも覚えておいてほしいことがたくさんあるんだ。そっちもお願いできるかな?」

「キュー」

なにそれ。

めっちゃ便利やん。

それはずるくないかい、カイルくん。

それって完全にペーパーレスやん。

俺の目の前ではしゃぐようにカイザーヴァルキリーにあれこれと教え込んでいくカイルの姿を見ながら思わず心の中でツッコミを入れてしまった。

そんなんチートや、チーターやん。

カイザーヴァルキリーの名前はチーターかルーターかにしたほうがよかったんじゃないだろうか。

そんなくだらないことを考えながら、一人と一頭の姿を見続けたのだった。