軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

危険地帯

「森……か……? 湿地帯じゃないのか」

墜落する魔導飛行船が空竜の体で押し飛ばされた。

それまででもひび割れていた船体がきしみをあげ、完全なる破壊に至る。

ちくしょう。

せっかく作ってこれから使い倒そうと思っていた魔導飛行船があっという間に廃棄物へと早変わりだ。

だが、今はそれどころではない。

ちんたらしている乗組員たちを全員脱出させる。

全員この探索に出る前にパラシュート実践講座を開いて、何度も使っているので問題はないはずだ。

最後まで残った俺は、全員が降りたことを確認し船外へと脱出した。

地面から離れた上空へと飛び立った俺は僅かな時間を置いてパラシュートを展開して体の安定を図る。

その状態でようやく地上の様子を確認するに至ったのだ。

そこは湿地帯ではなかった。

俺が昨晩魔導飛行船の中で寝るために空中停泊したときには、その下の地上はすべて湿地帯だった。

だが、今は森が広がっていた。

どこだろうか?

空竜からしばらく逃げたときの移動と、おそらく俺が気絶している間に空竜に掴まれて運ばれたことが関係しているのだろう。

かなりの距離を移動させられたことになる。

「ふう。なんとか着地成功だな。しかし、なんだここ。ジャングルみたいだな」

無事に着地した俺はすぐさま【照明】を唱える。

そこで見たのは辺り一面を覆うような木々だった。

ただ、北の森などとも少し違う植生をしているようだ。

なんとなく、ジャングルっぽい雰囲気を感じてしまう。

「とりあえず、洗浄。毒無効化、っと」

一応、全く踏み入れたことのない場所なので、【洗浄】を施してから【毒無効化】の魔法も使っておく。

これでとりあえず変な病気にはならないだろう。

後はほかの落ちた連中と合流するだけだ。

ただ、ここはあまり見晴らしがよくなかった。

落ちるときに見えた、少し開けた空間があった方向へと向かって俺は移動することにしたのだった。

※ ※ ※

「バルガス、全員集まったか?」

「ちょっとまってくれ、大将。まだ、あと3人いないみたいだ」

「どこかで怪我をして動けないのかもしれないな。よし、ここに半数残して近場を探してみよう」

「わかった。聞いたな、お前ら。すぐに動けよ」

墜落した後に開けた場所へ移動した俺は、そこで完全に大破した魔導飛行船と空竜の死体を見つけた。

どうやらここにまとまって落ちたようだ。

そこの地点で俺は魔力を使用して塔を建てた。

塔の上に【照明】の光を設置して、灯台のようにしている。

どうやらこれを見て、付近に落ちていた連中も集まってきたようだ。

だが、まだ後数人が行方不明状態になっていた。

そいつらを探す捜索隊を何チームかで分けて、残った者はこの灯台の守備、および、魔導飛行船内の物品の回収に空竜の死体の保護を任せた。

空竜はどうやらきちんと倒せていたようだ。

魔力をまとっているその鱗を狙った攻撃が必殺の一撃となったようで、その他の部分はそれほど大きな傷もなくそのままの状態だった。

たぶん、こいつの体を持ち帰ったら貴重な素材となるだろう。

グランが喜ぶだろうと考えて保護しておくことにしたのだ。

そして、その地を任せて俺も要救助者の探索へと出かける。

何人かと連れ立って再びジャングルの中を歩き回った。

鬱蒼とした場所で、木々の多くにシダのような植物が絡みついている。

「なにかいるぞ。注意しろ」

そのジャングルを探索中に近くで物音がした。

ガサゴソと僅かな音を立てながらこちらへと近づいてくる。

だが、それは俺達以外の探索チームや遭難者が出している音ではなかった。

木々の間からヌッと体を出してきたそれは紛れもない猛獣だったのだ。

茶色い体毛をした大きな体。

四足で移動しながらしっぽを揺らしている。

しかし、不思議な体をしている。

頭には百獣の王であるライオンのような立派なたてがみがついており、胴体部分には翼があり、そしてしっぽは蛇のように先っぽに口がついていた。

なんとなく、前世で聞いたことのある伝説上の生き物である、マンティコアをイメージしてしまった。

とりあえず、こいつは羽獅子とでも呼んでおこう。

その羽獅子(仮)は当然のように高い魔力を持っている。

そして、目の前に現れた人間たちに友好的とは言えないような面をしていた。

俺たちを見た瞬間にニヤッと笑うように口を開けたのだが、そこに見える鋭い歯は肉を食う気まんまんだと主張していた。

「来るぞ」

牙を見せた羽獅子が動いた。

グッと上体をかがめるようにして足に力を溜めてから、そのパワーを解き放つようにして飛び出してくる。

速い。

あっという間にトップスピードに乗った羽獅子がこちらへと突っ込んでくる。

「壁建築」

その羽獅子の前で俺は地面に手をついて呪文を唱える。

【壁建築】。

俺が世話になってきた呪文であり、大猪の突進を数え切れないほど止めてきた分厚い壁。

それが俺たちとマンティコアの間を阻むかのように出現した。

だが、そのタイミングが少し遅かったのか、あるいは良かったと言うべきか。

ちょうど地面から壁が出現するタイミングで羽獅子がその場を走り抜けようとしていたために、下顎にぶち当たったのだ。

アッパーカットをもらったような形になる羽獅子は下から突き出た壁に押されて上に跳ねる。

そして、壁のこちら側にドンッと落ちてきてしまった。

一瞬の空白。

突然起こった間抜けな展開で一同が呆然としたが、ビクビクと動く羽獅子の体が起きる前に俺が光の剣でサクッと首を落として倒してしまった。

「なんか、ちょっとあれだな。間抜けな感じになったな。けど、お前ら、こいつの動きは見切れたか?」

「いえ、速すぎて見えませんでした」

「俺もです」

俺が一緒に探索していた他の連中に尋ねる。

こいつらも俺と一緒に幾多の戦場に出てそれなりの活躍をしてきた者たちだ。

だが、この魔物の速さはついていけなかったようだ。

空竜といい、この羽獅子といい、ここは危険な魔物が数多くいる土地なのだろうか。

こうなったら、さっさと行方不明者を発見してすぐにバルカニアに戻ったほうがいいのかもしれない。

西の地がこんなに危険だとは思わなかった俺は今後の予定の変更も考えつつ、さらにジャングル内を探索することにしたのだった。