軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

上空での戦い

「おい、起きろ、大将。しっかりしろ」

「…………あ、ああ。悪い、バルガス。意識を失っていた。どうなったんだ?」

「お、大丈夫か? 悪いが俺も詳しくはわからねえ。攻撃されて俺も気を失っていたからな。ただ、今はあいつに運ばれている最中みたいだ」

「……あいつ? ああ、あの竜か。くそ。魔導飛行船を掴んだままどこかに飛んでるってわけか」

空飛ぶ竜による襲撃。

たぶん、竜はこの魔導飛行船を珍しい獲物だと勘違いしたのではないだろうか。

まるで空を飛ぶ鳥が川の中にいる魚を足でキャッチして巣に持ち帰るかのように、魔導飛行船を掴んで飛んでいる。

魔導飛行船は上下逆に掴まれてしまっているようで、今は俺の頭の上に座席があるという有様だ。

どこに行くんだろうか?

もしかして、このままお持ち帰りされてしまうのだろうか。

「まさかこんな化け物がいるなんてな。空を飛んでいる竜っぽいやつってことは、こいつは飛竜とでも呼べばいいのか?」

「いや、俺は飛竜を見たことがあるぞ、大将。リゾルテ王国の南にある大渓谷の先に飛竜が住み着いている。あそこにいる飛竜たちはこんなに大きくなかったはずだ」

「そう言えば、リゾルテ王国の南にはそんなんがいるって話だったっけ? ということは別種なのかな。ま、とりあえず空竜とでも呼んでおくか。この空竜の住処まで連れて行かれるのはまずい。始末するぞ」

「いけるのか、大将?」

「ああ。今なら空竜は油断している。光の剣で仕留められる。けど、その前に他の奴らを全員起こせ。静かにな」

「わかった。けど、なんでだ? 空竜が油断しているなら、すぐに攻撃したほうがいいんじゃないのか?」

「いや、よく見ろ。この魔導飛行船は大破状態だよ。両翼が両方とも途中で折れてなくなっているし、船体にも大きなヒビが入っている。たぶん、これ以上はまともに飛べない。それだけじゃなくて、もしかしたら墜落するかも」

「それはまずいな。よし、わかった。すぐに起こして船から脱出する準備を整える」

襲撃してきた竜っぽい生き物を空竜と名付けた。

バルガスが言うにはフォンターナ王国の南にあるリゾルテ王国のさらに南には飛竜がいるらしい。

その飛竜は竜の特徴を持つ空を飛行する生き物ではあるが、もっと小さいらしい。

具体的には人が一人乗って飛べるかどうかというくらいらしい。

だが、この空竜の大きさはもっと大きかった。

なぜなら、200人は乗れるほどの魔導飛行船を足でガシッと掴みながら飛ぶほどの大きさなのだ。

足だけでも十分大きいが、それ以上に翼膜のついた翼を広げた姿はとんでもない規模になる。

こんな化け物がこの世界にいるなんて聞いていないぞ。

俺たち人間が住んでいた地域は随分と安全なところだったのかもしれない。

そんなことを考えているとバルガスが乗組員をすべて起こしてくれていた。

その全員が落下傘を背中に装着していた。

いわゆるパラシュートだ。

こんな事もあろうかと用意していたのだ。

なにせ、初めて空を飛んだ気球のときもトラブっていたからな。

あの北の森へと墜落した事件の後に、空を飛ぶ際には必ずパラシュートを用意しておこうと心に誓っていた。

その失敗の経験が生きたと思おう。

「いくぞ。落ちろ、カトンボ」

光の剣に魔力を込めて空を切る。

気を失う前の攻撃は狙いを外してしまいきちんと当たらなかった。

だが、今回は違う。

もはやこちらの魔導飛行船は動いておらず、がっしりと船を足で掴んだ空竜の位置は完全に把握できている。

そして、空竜の足ではなく胴体部分を狙った。

正確には胴体と翼の付け根というべきだろうか。

飛行能力を奪う目的で、剣を振り抜く。

「ギャアアァァァァァス」

その光の剣の攻撃によって、空竜が大きな声を上げた。

あまりにも大きな声で叫んでいるので、魔導飛行船の中にいるというのに耳が痛く、体が震える感じがしたほどだ。

だが、その攻撃は見事に命中しており、空竜は掴んでいた足を離したようだ。

上空をかけるように飛んでいたところで放されてしまったために、魔導飛行船が落ちていく。

たぶん一瞬空竜はどこから攻撃されたのかわからなかったのだろう。

あたりを確認してから一拍おいて、落ちていく魔導飛行船へと目を向けた。

ギョロリとした爬虫類のような目がこちらを睨みつけている。

この船が攻撃してきた相手だとわかったのだろう。

空竜が翼を動かして落ちる魔導飛行船を追いかけ、攻撃をしようとしてきた。

どうやら先程のようにしっぽで叩きつけるのではなく、大きな口を開けて噛み付くつもりらしかった。

だが、その動きは直線的すぎた。

再び、俺の握る剣が光を引きながら横一文字に振るわれる。

剣筋がスッと残光を放ちながら俺の前を横切る。

それと同時に再び空竜が悲鳴を上げた。

目だ。

今度は目を切りつけた。

一度目の剣撃で翼を切り飛行力を奪い、二撃目で両目を切りつけて視界を奪った。

そして、三撃目。

窓の外を見つめる俺の両目には高密度の魔力が込められていた。

その魔力のこもった瞳が空竜の胴体部分でもっとも魔力量が高い位置を見据えていた。

たぶん、あそこが急所だ。

体の中でもっとも魔力があるその急所を狙って、三度目の攻撃を行う。

光の剣が瞬き、その一撃が空竜に致命傷を与えた。

「全員、脱出しろ」

その一撃で間違いなく空竜を倒した。

だが、上空から魔導飛行船を狙って追尾してきたその空竜を空中で倒してしまうとどうなるか。

息絶えた空竜の体がそのままの勢いで、落ち続ける魔導飛行船のもとへと突っ込んできたのだった。

こうして、魔導飛行船に対して空を飛ぶ大型の竜の体が衝突し、空中で跳ね飛ばされた。

その直前に乗組員の多くは船外へと脱出し、落下傘を開いて地上へと落ちていったのだった。