軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バルカライン

旧バルカニアの土地に急ピッチで作り上げられていく魔導列車の街。

空に浮かんでしまったバルカニアとは違う新たな街ということで、街の名前も変えることになった。

ちょっと悩んだ末に、バルカラインという名前に決定した。

バルカラインは南にあるフォンターナの街へと続く線路と、大雪山の麓へと続く東への線路、そしてネルソン湿地帯へと続く西へと続く線路の終着点になる場所だ。

魔石という燃料を積み込み、昼でも夜でも走り続けることが可能な魔導列車がやってくる集約駅になり、その駅のそばにはさまざまな貨物を保管しておける倉庫も多数用意している。

とは言っても、まだ線路を新しく敷設し始めたばかりで完全ではない。

一応の街の枠組みだけでも作ってしまおうというものだった。

ちなみにこの再開発は雇用創出の意味もある公共事業という位置づけだったりする。

現在フォンターナ王国ではフォンターナの街に新しい城を作り終えたので、その仕事をしていた者たちが少々手持ち無沙汰になっていたのだ。

それを活用する狙いもあった。

「しかし、この魔導列車は便利ではあるが転送魔法陣を使ったほうがいいんじゃないか、坊主? 聞いたぞ。東方のバリアントとは転送魔法陣をつないで魔導飛行船を移動させたそうじゃないか」

「バリアントというよりは空に浮かんだバリアント城だけどな。確かに、転送魔法陣を使ったほうが利便性はいいだろうけどな。防衛上は危険極まりないだろ。転送石と違って悪用しやすい仕組みだし」

「そうなんだよな。それがなければ、もっと遠距離の荷物を簡単に運べるってのにな」

旧バルカニアにつくる新しい街は今までよりも大量の荷物を運べる魔導列車という乗り物によって大きく変わることになる。

が、おっさんの言うことももっともな意見だった。

輸送力と移動にかかる時間を考えると、転送魔法陣を利用したほうがよっぽど速い。

本来は手にはいらないような大きな転送石が必要な転送魔法陣は、一度設置してしまえば移動にはほとんど魔力を必要としない。

だというのに、人だけではなく魔導飛行船すらも一瞬で転移させてしまうことができるのだ。

最高のコストパフォーマンスを出せることを俺も断言できる。

が、かといって安易に設置しまくるのも考えものだ。

どう考えても防衛上の問題に繋がってくる。

転送石での移動であれば、使用には当主級の魔力量がなければ転移できないうえにその人一人しか移動できないし、一度触れたことがある転送石に対してでなければならない。

それでも十分に危険はあるが、まだ転送魔法陣ほどではないだろう。

転送魔法陣の場合は、一度に大量の人と物が移動可能なのだから。

ならばと言って、天空城として作ったバリアント城のようにしてしまうのも使い勝手が悪いだろう。

人が入ってこられないように空の上に作った場所に転送魔法陣を設置して、そこに鍵までつけているのだ。

気軽に使える移動手段とはみなしていない。

空から地上に降りる時には魔導飛行船を使っていたこともあり、あまりにも効率が悪すぎるのだ。

「もったいねえな。確かに坊主の言う通り、領地の安全を考えればそうなんだけど、せっかく便利な移動手段があるんだ。遠くの場所の安い商品を運ぶだけでも十分価値のある商品になりえる。それが現地でどれほど価値がなくともな。せめて、どこか遠くで商品を仕入れるためだけの場所とでも転送魔法陣が繋げられればいいのにな」

「……まあ、ないことはないんじゃないかな?」

「お、どこか心当たりがあるのか、坊主? もしかして、東方のどこかに転送魔法陣でも設置して商売しようって気になったのか?」

「いや、違うよ。というか、ただの思いつきだ。成功するかもわからんことだから、忘れてくれよ、おっさん」

「おいおい、なんだよそれ。そこまで言ったんなら俺に教えてくれよ。なにを思いついたんだよ、坊主?」

「本当に思いつきだよ。ただ、海でとれるものが手に入ったら高値で売れるかもな、と思っただけさ。フォンターナ王国は海とは接していないからな」

「海? 海ってのはなんだ?」

「でっかい水たまりみたいなものだな。それもフォンターナ王国やその他の貴族領すべてをまとめても、それより広い水だけの場所。ただの水じゃなくて、塩水だけどね」

「……本当にあるのか? そんなでかい水のたまり場が? 池とか湖の見間違いじゃないのか?」

「いや、海は存在する。それはグランや東方で得た情報から確かだ。ただ、グランのうまれた国も、ブリリア魔導国も海とは接していないみたいだけどな」

「へー。そんなものがあるんだな。じゃあ、なにか? やっぱり東方でその海がある場所とやらに行って、転送魔法陣を設置するのか?」

「それはあんまり得策とは言えないかもね。ブリリア魔導国よりも強いといわれている帝国ってのが海の港を押さえているって話だったからな。今のところ帝国との伝手はなにもないし」

「それなら、ほかの場所を探してみるか? 帝国とやらが支配していない土地で海がそばにあるところがどこかにあってもおかしくはないだろう?」

「そうだな。俺が思いついたのもまさにそれだった。でも、探すのは東方じゃないけどな」

「東方じゃない? けど、海があるのは大雪山を越えて向こうにある東方なんだろ?」

「そうとも限らないよ。陸地というのは必ず限りがある。そして、海を探すなら、川の水が流れていく先だ。つまり、フォンターナ王国から川が流れていく先のネルソン湿地帯。あの魔物の多くすむ人類未踏の地の先には海がある可能性がある。誰も確認できた人はいないけどな」

転送魔法陣を使って遠方の商品を運び込む。

そのことを俺も考えなかったわけではない。

が、東方に対してそれをする気はまったくなかった。

あそこは今、俺が【命名】の魔法を使ってしまったので、間違っても向こうから人が来ることは避けなければならなかったからだ。

では、どこに海を求めるか。

俺はそれを東ではなく西に定めていた。

かつて、ドーレン王家が全土を支配していた頃から、アーバレスト領の奥にあるネルソン湿地帯の向こうを確認しようとした者たちがいた。

だが、それは失敗の連続でついには成功しなかったという。

ただでさえ、移動しにくい水辺であり、しかも、強力なモンスターがはびこる場所だったからだ。

俺もアーバレスト地区を領地として手に入れた時、ネルソン湿地帯を調べた。

が、倒しにくい泥人形や水棲の化け物たちが相手では軍のような集団でも全滅する危険性が高かった。

そのため、ネルソン湿地帯を越えるという無謀な計画は立てず、氷炎剣を用いて冬場に泥人形を倒して魔電鋼を得たり、水の多さを利用して水田づくりを始めたのだ。

だが、その状況が変わってきた。

魔導飛行船ができたのが大きい。

あれは地上のはるか上空を移動する空飛ぶ乗り物だ。

移動しにくい湿地帯の地形やモンスターの存在を無視して移動できる。

ならば、人類未踏の地と言われたネルソン湿地帯の越えた先を見られるかもしれない。

海があれば、そこに転送魔法陣を設置できるかもしれない。

最初はただの思いつきだった。

だが、試してみる価値はあるだろう。

おっさんとの会話で俺自身も気になったので、一度空を移動して西へと向かってみることにしたのだった。