軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

硬牙剣

「おい、カイル。いるか?」

「あれ、どうしたの兄さん?」

「お前あの変人のところに行ってこい」

「へ、変人? 誰のこと?」

「グランだよ。旅しながらものづくりをしているとかいうあの頭のおかしいヤツのことだよ。お前、あいつの作業手伝ってこい」

「い、いやだよ。兄さんがやればいいじゃないか」

「いいか、カイル。これはお前のためにわざわざ俺が言っているんだよ。お前も将来のために手に職をつけておいたほうがいいだろ。最近練習している頭の回転を早くする魔法を使えばグランの作業を手伝いながらすぐに覚えられるぞ」

「そんなこと言って、兄さん逃げる気でしょ。ボクはだまされないよ」

「俺はやることあるんだよ」

「嘘だ。グランさんとの武器づくりをやる以外に用事なんてないはずだよ」

「俺は木炭を作る炉を増設するんだよ。あれはこの土地では利用価値が高い。あれだけ上質な木炭ならよそにも売れるだろうしな。とにかく、行ってこいよ。命令だ」

もう何日も睡眠不足だった俺は限界に来ていた。

残念だが身内を犠牲にしてでもヤツから離れなければならない。

かわいそうだが弟を人身御供にして逃れよう。

そう考えた俺は思考力の落ちた頭を振り絞って言い訳をひねり出してカイルをグランのもとへと向かわせたのだった。

頑張ってくれ。

死ぬなよ。

※ ※ ※

「おー、完成したのか」

「ええ、カイル殿の尽力のおかげで無事に完成したのでござる」

「その弟は地面に転がってピクリとも動いていないんだが……」

「カイル殿にはふいごの操作を任せていたのでござる。頑張ってくれたのでござるよ」

ふいごか。

なんというか特殊な装置だ。

箱型をしたふいごと呼ばれる装置なのだが炉に風を送り込むためにはそれを動かさなければならない。

おそらく鍛冶をしている間、グランの指示の下でずっと動かし続けていたのだろう。

ちょっと悪いことをしたな、と思わなくもない。

ゆっくり寝かしておいてやろう。

「ま、いいか。そのことは置いておこう。武器を見せてもらえるか?」

「自信作でござる。これまで拙者が作った中でも上位に入るできだと自負しておるのでござるよ」

徹夜作業を通じてお互い遠慮がなくなってきた俺とグラン。

話をしながらグランが作り上げた武器をそっと手渡してくる。

彼の手から受け取ったのは剣だ。

いわゆる西洋剣といえばいいのか、まっすぐに伸びた剣で、ロングソードに分類されるような形をしている。

大猪の牙で作る、と聞いていなければ、それが牙からできているというのはわからなかったかもしれない。

白色の剣身だが、ほんのりと光沢がありぼやんと光っている。

表面の光沢はどちらかというと真珠のような印象を受けた。

「結構軽いんだな」

「そうでござるな。金属と比べれば幾分軽いかもしれませんな。しかし、軽すぎるということもなく、相手を叩き切ることは十分可能でござるよ」

「魔力を通せば硬化するんだよな? なら適当に振り回しているだけでも十分脅威になるか」

「硬化しておらずとも十分な硬さは出ているはずでござる。魔力を通すのは必要に応じてで十分でござるな」

「で? そっちには同じような小さい剣があるけど、それはなんだ?」

「これでござるか。こっちは大猪の子どもの牙から作った剣でござるよ」

「子どもの牙? ほかにも成獣の牙が残ってたろ? なんでわざわざそんなものを作ったんだ?」

「これはぜひアルス殿に持っていてほしいのでござるよ」

「うん? 俺が子どもだからか? けど、短剣くらいの長さだから護身用にでも持つくらいになりそうだな」

「今はそれで十分でござる。ただ、魔法生物の幼獣から作り上げた武器は成長性がある、特殊な武器になるのでござるよ。こいつもそうでござる」

「武器に成長性? どういうこと?」

「ふふ、聞いて驚くでござる。この武器は使用者の魔力を糧に成長する武器なのでござる。仮に今回拙者が使った大きい剣の方と同じ大きさまで成長した場合、強いのは成長した剣のほうになるのでござる」

「へー、そんな武器っつうか、ものが存在するのか。魔力ってのはなんでもありなんだな」

「もっとも、人間一人の魔力を吸収した程度ではそれほど成長しないのでござる。先祖代々受け継がれていくことで強力な武器に成長していく、いわば家宝の剣となるのが多いのでござるよ」

なるほど。

世代を重ねて幾人もの魔力を吸収するからこそ強力な武器が出来上がるのか。

もしかすると、貴族なんかはそういうものを持っているのかもしれない。

硬化の剣ということはすっごい折れにくい剣になるんだろうか?

すごいけど、あんまりすごくない微妙な感じがするのは俺だけかな……。

「ありがとう。武器を手に入れるのが俺の念願の夢だったんだ。感謝してもしきれないよ」

「こちらこそ、なのでござる。流れ者の作り手ではこれほどの設備と材料を潤沢に使える機会というのはそうそうないのでござる。拙者こそ、アルス殿と知り合えたのは望外の幸運だったのでござるよ」

「そうか、できればしばらくここでほかにもいろいろ作っていってくれると嬉しい。というか、牙はまだあるみたいだし、もっと作ってくれると助かる。そういえば、この剣に名前ってあるのか?」

「魔法効果のある武器などには製作者の名前を入れるのが通例となっているのでござる。これは硬牙剣グランと呼んでほしいのでござる」

「硬牙剣グランね。大切にするよ」

こうして俺ははじめての武器を手にしたのだった。