軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

依り代づくり

「よーし、それじゃあ神様の依り代を作るとしますか。一応、向こうさんの要望としては女性型と男性型の二種類がほしいらしい」

「それくらいなら、そんなに難しいことではないでござるな。最初の工程の際に、岩の体をそのように規定すればよいでござるよ」

「やっぱりな。グランならそう言うと思ったよ。だけど、それじゃ駄目だ」

「駄目でござるか? なぜでござる。アルス殿は神が求めたのはかわいらしく、日常生活でも使えるものを、と考えていたのではないでござるか?」

「俺も似たようなところがあるけど、グランは生粋の技術者だからな。機能的に物事を考えすぎる。いいか、グラン。なぜ、神アイシャはかわいく作れと言ったかもっと考えるんだ。自分の体を石にされて何千年も動けなかったんだぞ?」

「……だから日常生活できる形を求めただけなのではござらんか? と言っても、拙者には意味がわからないでござる。どうせ、魔導人形では食べることも寝ることもできないのでござるよ」

「なら、正解を言おう。おしゃれがしたいんだよ、神様は。かわいくてきれいな服を着たいとか、きれいなものを身に着けたいんだ。長い時間、神界にいる神の使徒たちを見て、流行の移り変わりを見ていたのに、自分は何も変わらない状態だったんだ。しかも、永劫の時を越えて再会した最愛の男と会うんだから、かわいいを要求してもおかしくないだろ」

「ふ、服でござるか。……いや、別に、着たければ着ればいいのでは?」

「だから、言ってんだろ。無骨な体に合うきれいな服じゃなくて、最新の流行の服に合う抜群の体を求めているんだよ」

「……服に体を合わせるのでござるか?」

「その通り。というわけで、服飾に一家言あるというリリーナやクラリスに助けを求めました。彼女たちが職人を使って理想の女性像を表現する像を作り上げるので、神の依り代はそれを参考にするようにな」

「わ、分かったでござる。さすがにそのような思考でのものづくりは拙者よりも適任でござろうからな。では、男性像は男が理想とする肉体美でも追求するのでござるか?」

「ばかやろう。お前、おしゃれを舐めてんのか」

「ええ……。さっき、アルス殿が言ったことを参考にしただけでござるよ」

「いいか。よく聞け、グラン。女性のおしゃれにとって、男は付属物に過ぎない。主役はあくまでも女性なんだ。美しく着飾った女性を引き立てるために男はいるんだ。けっして逆ではありえないんだ。つまり、大輪の花である女性の魅力を引き出すための男性像が求められているんだよ」

「女性のための男性像でござるか。……なるほどでござる。つまり、女性像が完成しないうちに、男性としての主張が強すぎる像を作っても意味がないということでござるか」

「そういうことだ。ムッキムキの男らしい体なんか作っても喜ばないだろうからな。まずは理想の女性像を作り上げる。そして、その横に立ったときに、より女性を映えさせるような男性像が理想だろう。……なんか、時間がかかりそうだな」

グランと神の依り代について話し合う。

グランは稀代の造り手で、あらゆるものづくりに精通している。

が、どちらかと言うと機能美を意識する傾向にあると思う。

作るものがなんのために必要でどういうことができるか、が発想の最初に出てくるのだと思う。

だが、それではアイシャからのオーダーには応えられないと俺は判断した。

かわいい人型を所望する。

一見簡単に思う依頼だが、アイシャの要求を深く読み取っていくと先程俺が語ったところまで行き着く可能性がある。

と、俺もアイシャの話をしたリリーナから指摘されたのだ。

本当にアイシャがそんなことを思っているのかどうかはよくわからない。

が、せっかくなので依り代の製作依頼にはリリーナにも一枚噛んでもらうことにした。

やはり、男だけで作るよりはいいものが出来上がるだろうと思うからだ。

ちなみに、それだけだと俺がなんの意見も出していないみたいなので、多少は案を出してみることにする。

それは関節のなめらかな動きについてだった。

結局のところ、美的感覚にさほどの自信も持ち合わせていないので、機能美でしか案が出せないのが悲しいところだ。

魔装兵器という岩の巨人では攻撃の威力そのものが重要視されており、スムーズに体が動くかどうかは二の次だったようだ。

だが、依り代となる魔導人形はもっともっと細やかな動きができるようにしてみたい。

そのためには関節部分が重要になるが、体が人間とは異なる材質であるため、人体の構造をそのまま参考にしても意味がないだろう。

なので、前世の知識を基に考える。

魔力を動力として用いて依り代を動かすならば、二足歩行ロボットよりもむしろプラモデルや球体関節人形のようなものを参考にしてみたほうがいいのかもしれない。

動かしやすく、しかし、それでいて見た目も人間のようになるべく見えるような構造が可能かどうか試しておくのもありだろう。

「というわけで、じゃん。ここにオペラの歌姫の姿を型どった像を用意しました。このお嬢さん方を魔導人形の形として作ってみて、動作確認をしてみようぜ」

「いいでござるな。そういう実験ならば拙者とアルス殿にうってつけでござるな。さっそく取り掛かるでござる」

こうして、神の依り代づくりは何度も試行錯誤を繰り返しながら続けられていくことになったのだった。