軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

画家の成長と新たな硬貨

「銀貨以外も造るか」

バルカ銀行の今後について思いを馳せる。

今までのバルカ銀行は地方のごく一部で通用するだけの独自通貨を発行する機関だった。

だが、それも変わる。

大きくなったフォンターナ王国と本部が置かれるようになった教会に使用される主要通貨となるのだ。

そのときに、銀貨だけというのは使い勝手が悪いだろう。

バイト兄の領地であるバルト領では新しい鉱山も発見された。

そこには埋蔵規模はわからないが金も産出しているらしい。

なので、これからは銀貨以外にも金貨や銅貨なんかも造ることは可能だ。

バリエーションを増やしておくことにしよう。

さっそく画家くんに硬貨の意匠を考えてもらうことにしようか。

「というわけで、よろしく頼むよ、画家くん。新しい金貨や銀貨、銅貨をそれぞれ数種類ずつ造ることになるから、その分の意匠をよろしくね」

「ふっふっふ。お任せください、バルカ様。こんなこともあろうかと、すでにいくつか用意しているんですよ」

「あれ、そうなんだ。気が利くね」

「ですが、いまなら硬貨でなくともいいのではないでしょうか?」

「ん? どういうこと?」

「バルカニアに限っての話かもしれませんが、金属の硬貨はみんな重たいという意見が多いと思いますよ。バルカ銀行に預けたときに受け取る金券であれば薄い紙なので、そちらのほうが日常的にはやり取りしやすいのではないでしょうか?」

「ああ、紙幣のほうがいいってことか。難しいところだね。そっちのほうが便利だろうけど、偽造とか信用度とか色々問題もあるしな。完全に平和になったんなら、それもありなんだろうけど」

「やはり手元に金とか銀があるほうが安心するということでしょうか?」

「少なくともフォンターナ以外の土地ではそっちのほうがありがたいだろうしね。とりあえず、まだ貨幣を紙幣に切り替えるには危険も大きい。今は金属の硬貨でいくからそのつもりでよろしく」

「わかりました。それならばすぐに用意しましょう」

画家のモッシュに硬貨づくりのことを話すと、紙幣について言及された。

今、画家くんも住んでいるバルカニアに限って言えば、実は硬貨を使うよりも金券を使う人のほうが多いのかもしれない。

というのも、バルカ銀行はお金を預かる預金システムもあるからだ。

銀行という場所にお金を預けておけば預り証のような紙を受け取ることになる。

それを売買時のやり取りに使う人も出てきているのだ。

だが、それはあくまでもバルカニアに限っての話であるし、紙幣代わりとなっていてもきちんとした紙幣ではない。

まだ、紙のお金というのはバルカ以外では時期尚早だろう。

故に、金や銀、銅を使ってお金を造る。

そのための意匠を画家くんに依頼した。

「そう言えば、聞いたよ。なんか新しい画法を開発したそうだね。本業の絵画のほうも人気出てきたそうじゃないか」

「ふっふっふ。そうですよ、バルカ様。私だっていつまでもバルカ様におんぶにだっこの状態ではいられませんからね。だれもが認める巨匠となるのです。そのために、努力してきたんです」

「いや、ホント頑張ったな。クラリスもかなり高く評価していたそうじゃないか。どういう技法なの?」

「そうですね。きっかけとなったのは音楽家のクレオンでした。彼は音に魔力を乗せる。それと同じようなことが絵を描く際にもできないだろうかと考えたのです」

仕事を依頼した画家くんに対して少し気になっていたことを話した。

この画家くんは俺がよく仕事を依頼して有名になっているわりには今まで絵描きとして大成しているとはいえない状況が続いていた。

だが、それがどうやら最近になって殻を破ったらしいと聞いたのだ。

見るものをひどく引きつける絵を描くのだという。

もともとは見たものを完璧に再現するかのような精巧な絵か、あるいは俺がアドバイスしたことで逆にものすごく現実と乖離したぐんにゃりした絵を描いていた。

が、あくまでもそれは上手な絵というだけだったのだ。

それが変わった。

理由は【歌唱】という魔法を作り出したクレオンを参考にして開発した技法にあるという。

他の誰にも言わないという約束を交わして極秘に教えてもらったのだが、どうやら絵の具を改良したのだそうだ。

通常は油絵の具で描くところに、細かく砕いた魔石を追加するのだそうだ。

色によって魔石を追加する比率を変えるのがポイントだという。

その魔石入りの油絵の具を使って、筆に魔力を込めて絵を描いていく。

今までの画家くんの経験を生かした緻密でありつつも、対象をいろんな角度から見て崩した不思議な絵に魔力が宿る。

その結果、一度その絵を見たら深層心理に引きずり込まれるようなほど絵の世界に没頭してしまうのだという。

そんな絵はさすがにいろんな美術品などを見てきたクラリスも見た経験がないと言って褒めていた。

まあ、それはそうかもしれない。

魔石というのは本来ならば貴重なものであるし、油絵の具に溶かし込む際には魔力回復薬なんかも使うのだそうだ。

その両方が豊富にあるバルカだからこそ生まれた技法なのかもしれない。

この画家くんの新技法は新しく作られたフォンターナの城で飾っている祖王カルロスの人物画にも用いられている。

新年の祝いでもそれを見た多くの者が「あの絵を描いたものは誰だ」と評判になっていた。

ようやく絵描きとしての画家くんのことが色んな人に認められたということだろう。

硬貨ではその新技法は使えないかもしれないが、そんなビッグネームの画家くんに意匠を任せた硬貨ならば、それなりに良い評価となるに違いない。

こうして、バルカ銀行では新たにいくつかの硬貨を作り始めたのだった。