軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

離脱

「聖域。よし、ここを安全地帯として残った不死者を殲滅するぞ。バイト兄、いけるな? 副団長もまだまだ働いてもらうぞ」

ヴァルキリーによってナージャがこの世をさり、平穏が訪れた。

というわけにはさすがにいかない。

まだまだ、やらねばならないことが山積みだ。

まず、第一に重要なのが不死者をすべて倒しきるということだった。

たとえ、不死者の王と呼べる力のあるドグマ・ドーレンやナージャのような者がいなくなったといっても、ほかの不死者の存在を無視するわけにはいかない。

少しでも取り逃してしまえば、その被害はまたたく間に広がってしまうのだ。

それならば、ここできっちり掃除しておくに限る。

俺は新たに【聖域】を発動して、セーフエリアを作り出した。

そこを拠点として、周囲にいる不死者を掃討する。

ちなみに、今ここにいる人のなかで俺だけが【浄化】や【聖域】を使えるので、俺自身は回復係となった。

ナージャに襲われてバラバラに逃げていた者たちが再度集まってきたところに【浄化】をかけて、【回復】で傷も治して再出撃させる。

そうして、それなりに時間をかけつつもなんとか不死者をすべて倒しきることができた。

「よし、終わったぞ、アルス。不死者はもうどこにもいない」

「そうか。助かったよ、バイト兄」

「ていうか、お前は途中から何してたんだよ? 暇なら不死者退治を手伝ってくれても良かっただろ」

「ははは。途中から【浄化】をかけるのはヴァルキリーに任せていたからね。手伝ってもよかったんだけど、ちょっと調べたいこともあって」

「何やってたんだ? 聖都の跡地を調べてたみたいだけど」

「ああ。もしかしたら聖都の地下になにかないかなと思ってたんだ。それでこれを見つけた」

「……なんだ? でかい魔石、か?」

「そうだ。聖都の地下深くにこれがあった。たぶん、迷宮核の一種だと思う。地面に魔力を浸透させて何かないかと調べたら、これが見つかったんだよ」

「へー、迷宮核ねえ。よくそんなものがあるのが分かったな」

「神界から地上に帰還したときが不自然だったからね。【神界転送】の魔法を使えばどこからでも神界にいけるのに、帰りは必ず聖都に降りることになるのは、この場所になんらかの目印があるはずだと思ってたんだ」

「ああ、そう言えばお前やナージャは急に聖都に現れたもんな。なるほどな。地面の下にある迷宮核が目印になっていたからで、地上部分が全部塩になっても地下深くのそれが無事だったのか。でも、それどうするんだ?」

「決まってるでしょ。落とし物は見つけた人のものだからな。持って帰るんだよ」

不死者の殲滅戦には特に参加せず、しかも途中からは【浄化】を兵たちにかけるのはヴァルキリー任せにしていた。

その間、俺は聖都の地下から迷宮核を発掘していたのだ。

大きいとは言っても人の体くらいの石でアトモスフィアほどではない。

が、アトモスフィアと同等以上の魔力を内包している迷宮核が地面の奥深くにあった。

それを魔力で探知した俺が、大量にある魔力を存分に使って地面の土を動かして地上へと引っ張り出したわけだ。

これさえあれば、神界から地上に降りる場所を任意に設定できるのではないか。

たとえば、今までは王都の南西にあった聖都にしか神界から帰還できなかったが、その場所をフォンターナの街に変えることも可能だろう。

パウロ大司教も喜ぶに違いない。

手に入れた迷宮核をいそいそと魔法鞄に収納しながら、そんなことを考えていた。

「よし、じゃあ、帰ろうか、バイト兄。フォンターナに帰還するぞ」

「ん? いいのか? 聖都の後始末とかは大丈夫なのか?」

「そんなもん俺は知らんよ。聖都が滅んだのはなんの対策もできなかった教会とこの近くの勢力を押さえていたラインザッツ家の無策によるものだ。ここに俺たちが残っていたら、聖都消滅の責任をこちらが背負わされることになるかもしれないから、さっさと帰るのが吉だよ」

「そりゃ確かにめんどくさそうだな。よし、全員帰還するぞ。すぐに準備しろ」

俺の言いたいことを理解したバイト兄はすぐに帰る準備を始めた。

来る時は150名ほどいた聖騎士団もその数が減っている。

どうやらナージャが降りてきてバイト兄が倒された後に出た被害が多かったようだ。

丁寧に埋葬して祈りを捧げてからフォンターナへと戻ることになった。

「あ、あの……、我々はどうしたらいいのでしょうか、聖騎士様?」

「うん? ああ、そうか。マーシェル傭兵団のことか。そっちもかなり被害が出たみたいだな」

「はい。不死者になったナージャ団長にまとまっているところを襲われたので、ほとんどはその場で……。今残っているのは40人もいません」

「そうか。だが、不死者相手によく戦ってくれた。その功績に免じて君たちの罪を許してもらえるようにこちらから願い出ておこうと思う。あとは自由にすればいい。ただし、魔法が使えないように名の返上をしてもらうことになるだろう」

「あ、あの……、不躾なお願いですが我々も連れていってもらえないでしょうか? 都合のいいお願いかと思いますが、もう行くところがないのです」

「……どうしようか? バイト兄、こいつらいるか?」

「お、そうだな。じゃあ、うちで引き取ろうか?」

「いいのか? 一応生き残りをヴァルキリーたちに乗せて連れ帰ることはできるけど」

「ああ。うちに来れば仕事があるからな。傭兵じゃなくなってもいいなら、バルト領に来るか?」

「はい。ありがとうございます」

そういえば、以前の東方遠征の途中で鉱山を新しく見つけたんだっけか。

たぶん、バイト兄はあそこに傭兵たちを送り込むつもりなのではないだろうか。

極寒の中の鉱山での仕事とかどれほど大変かは想像もできないが、副団長を始めとして傭兵たちは喜んでいるので今は言わないでおこう。

こうして俺たちはその日のうちに帰路につくことになった。

聖騎士団として聖都に向かったはずが、すぐにまた引き返していくのを見て、途中の貴族領や騎士領はかなり訝しがっていたが、それらをすべて無視してまたたく間にフォンターナ王国へと帰還した。

そして当然だが、聖都という教会本拠地が跡形もなく消滅した影響は徐々に、しかし確実に全土へと広がり始めたのだった。