軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

必勝戦術

「やれ、タナトス」

「おう。ライラ、イアン、あの壁門を狙え」

「おう!」

俺がタナトスに命じると、タナトスが他のアトモスの戦士へと声をかけて攻撃を仕掛けた。

狙いは北部に存在する貴族の本拠地である城、その外周にある城壁の門だった。

タナトスを始めとしたアトモスの戦士には事前にいろいろな装備を渡していた。

体の大きさに合わせて変化する鬼鎧もそうだが、ほかにもサイズの大きい魔法鞄を渡している。

その魔法鞄にはたくさんの硬化レンガ製の槍が入っていた。

巨人化した状態のアトモスの戦士たちが鞄から槍を取り出し、それを投槍器を用いて放り投げていく。

巨人用に合わせて俺が魔法で作ったどデカイ槍が門に殺到する。

次々とぶち当たる槍に門が悲鳴を上げて崩れていく。

投槍器によって投げられる槍の破壊力は凄まじく、すぐにその門は門としての機能を失うことになった。

「空に伝えろ。落とせ」

だが、それで終わりではない。

城塞都市の上空に陣取っていた飛空船に対しても命令を発する。

次の瞬間、空から魔装兵器が落とされた。

いくつもの岩の巨人が空中に現れて貴族領を治める城の上に墜落する。

それが地面へと着弾すると同時にものすごい音が響き渡った。

街を囲む壁の外にいるこちらにまでその音が聞こえてきて、その後、街中で起き上がる岩の巨人たち。

それを見て、壁際で防衛戦を繰り広げていた相手貴族の兵の動きが明確に止まってしまった。

「突撃だ。崩れた門から内部に入り、中を抑えるぞ」

それを見て俺が軍に命じる。

その命令は即座に軍全体へと伝えられ、一切の遅れ無く次の動きが始まった。

こちらの動きを見て止まっていた相手の兵たちも慌てて対処しようとするが遅すぎる。

騎兵を中心とした足の早いものがすぐに門を越えて中のスペースを確保し、そこから歩兵も内部へと侵入し、守りを突破した。

俺はと言うと、後ろでふんぞり返っているわけではなく最前線にいた。

先にあったゴルゾン平原での合戦では本陣で命令をしていただけだが、この場では少し事情が違う。

貴族の城に攻めるということは貴族家の当主やそれに連なる継承権を持つ者がいる。

つまり、内部に突入した部隊が当主級の実力者に襲われる可能性は高い。

岩の巨人を落として城を攻撃したとはいえ、それが実際にどの程度の損害を相手に与えたのかは外からでは全くわからないのだ。

だからこそ、俺はタナトスたちとともに先頭を走って内部へと突入した。

後続のために突破した門を確保した後、すぐに城のあるほうへと目指して進んでいく。

すると予想していたように当主級がやってきたようだ。

「貴様、このような戦いがあってよいと思っているのか。貴族や騎士にとっての誇りある戦いを侮辱するこのような攻撃はあってはならない。ニップル家当主であるギザン・ド・ニップルの名において、悪魔アルス・フォン・バルカを討つ。くらえ、必中」

城へと向かっている途中でこちらを迎え撃とうとしてきた相手軍の中から質のいい金属鎧を着た男性が俺に向かって吠える。

どうやら、この貴族領を治めるニップル家の当主らしい。

ニップル家は【必中】という魔法を持つ貴族家だ。

その呪文名の通り、弓矢での攻撃の命中率を底上げする。

どういう理屈かはよくわからないが弓矢が届く範囲であれば狙いを外すことはなく、さらにはどれほど素早く避けようとも追尾機能を矢に追加するという恐ろしい魔法だ。

その【必中】という魔法の効果を秘めた矢が俺に向かって放たれる。

当主ギザンだけではなく、その周りにいたニップル家の騎士もが弓を使って【必中】と唱えながら攻撃してきた。

さすがにこれは避けるのは不可能だろう。

「壁を作れ」

まあ、避けるのが不可能なのであれば防げばいい。

そばにいた角ありに命じて【壁建築】を発動させる。

ギザンやギザンのそばにいる騎士が【必中】を用いて放った矢はすべてその分厚いレンガの壁に突き刺さる。

さすがにいかに絶対に命中する矢といえども、厚さ5mもの壁を突破することはできはしない。

「シッ」

そして、そんな矢の攻撃が壁に届いた瞬間を見計らって、俺は攻撃に転じた。

腰に吊るしていた空絶剣を抜いて、なにもない宙に向かって振る。

目の前にある壁の後ろで、誰もいない空間を切る。

それだけで、壁の向こうにいたニップル家当主であるギザンの首が胴体と離れた。

「ニップル家当主ギザンを討ち取ったぞ。勝どきを上げろ」

ギザンの首が落ちた後も、自らの主が攻撃を受けたことに気づきもしない騎士たち。

俺が勝利の声を上げて初めて自分の主がすでに死んでいることに気がついたようだ。

この空絶剣の攻撃は初見では絶対に見切ることができないだろう。

そして、それは当主を殺された騎士も同じだ。

地面に落ちた主の首を見て、「何が起こった?」と考え込んでしまった。

もちろん、その思考の逡巡は一瞬のものだった。

だが、その一瞬は大きな隙となった。

再び俺が空絶剣を振ったのだ。

防御の壁から横にずれて騎士の姿を視認しながら、サッサッサッと剣を振っていく。

それに気づくこともなく、当主とともに戦った有能な騎士たちも主と同じ道をたどることになってしまった。

ゴルゾン平原での合戦から今日で一月が経過した。

そして、この一月という短期間で、ニップル領を含めてすでに5つの貴族領がこの世から消滅することになった。

だが、まだ終わりではない。

行けるところまで行く。

合戦後にリオンと話し合った通り、後のことは考えず攻めるだけ攻めるという方針のもとに、ニップル家を攻略したフォンターナ軍は次の獲物を求めて新たな動きを始めたのだった。