軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

文化振興事業

「女性歌手の教育を私がすればいいの、アルスくん?」

「うん。お願いできるかな、エイラ姉さん。ここの遊戯地区で新しく劇場を作ろうかと思っているんだ。そこで、公演できるように立ち居振る舞いを教えてほしいんだ」

「ええ、わかったわ。面白そうだし、新しくこの地区の目玉になりそうだしね。任せておいて」

クレオンと話した後、さっそくバルカニアにある遊戯エリアを総括しているエイラ姉さんへと話を通した。

遊戯エリアは使役獣のレース場がメインであるところだ。

レース場は賭け事ができるようになっており、バルカニアにすむ住人だけではなく、よそからの旅人も遊んで泊まっていけるように宿を用意している。

現状でこの遊戯エリアは結構成功していると思う。

が、そろそろ賭け事以外のものも充実させていきたいと思っていた。

もともとこの場所に賭け事をする場を用意したのには理由がある。

俺がバルカの動乱後に騎士となり、この地にバルカ騎士領ができた。

そのバルカを強く育てるために、俺がまず第一に取り組んだのが「金を稼ぐこと」だった。

これは俺個人の話ではなく、領地としてもそうだし、領地に住む人全体のことでもある。

それまではほとんどが物々交換でしか物のやり取りをしていなかったバルカ村などの住人に貨幣経済を根付かせることが目的だった。

そして、それは運良く成功した。

が、その後に少し危惧すべきことがあったのだ。

それまでほとんど金を持たずに生活していた人がいきなり金を持つようになって多少の余裕が出ると何をし始めたかと言うと賭け事だったのだ。

身内などで小さく賭けている間はそれでも特に問題はない。

が、それがだんだん大きくなって身を持ち崩すほどになればどうなるだろうか。

もしかしたら、賭けを主催する胴元が出現して、賭けにハマった住人から土地や財産などをすべて持っていくかもしれない。

そうなると領地が荒れる可能性がある。

なので、それならばバルカを治める俺自身が胴元になり、ほかに賭けをする集団が出てこないように規制しようという話になったのだ。

これはうまくいったようで、その後、裏社会の人間が跋扈するような事態にはならずに済んでいる。

が、そろそろ次の問題も出始めていた。

というのも、だんだんと経済的に成長してきたバルカでの娯楽が賭けくらいしかないというのは健全ではないだろうという点だ。

金を持ったら「宵越しの金は持たぬ」とばかりに散財するような人ばかりになっても困る。

どうせ金を使うならばもう少し他のことに使ってもいいのではないか。

そう思っているところに、今回のクレオンの話が出てきた。

【歌唱】という文化系の魔法は非常にいい。

聴くものの心に響く歌はそれだけで価値がある。

そして、それをさらに集客に使って他の文化を育てるのもいいのではないかと思ったのだ。

遊戯エリアにてクレオンが名付けた可愛い女の子たちに歌を歌ってもらう。

新しく劇場を作ってみよう。

が、劇場ではそれ以外にもいろいろと見世物を用意しようと思う。

例えば、楽器を使った演奏もいいだろう。

演劇をするのもいい。

あるいは、小咄を聞かせるようなのもありだろう。

歌以外は魔法的な効果はない普通のものでも十分だろう。

俺が新たに育てるのではなく、専門家を呼んで公演してもらおうか。

つまり、既存の集団に出演してもらうのだ。

実は前から要請があったというのもある。

楽器を演奏する楽団などもフォンターナ王国内にはあるのだが、基本的にどこも経済的に不安定な立場に立たされている。

もともといつも戦があるような世の中だったので、どこかの貴族や騎士にパトロンになってもらってほそぼそとその技術を繋いでいくしかできなかったのだ。

だが、最近のフォンターナ王国は内部は比較的安定した土地になっている。

そこで、各地から楽団や劇団が庇護を求めてきていた。

せっかくなので、それらの集団に声をかけて出演でもしてもらおう。

バルカだけが楽団などのパトロンになるのではなく、観客からも見物料の一部をもらうシステムにすればこちらの負担も少なく、楽団などの収益化にもつながるかもしれない。

経済的に存続の危うかった組織の延命にもつながるだろうし、今までは貴族や騎士たちが見学することが多かった演目などをバルカの住人も見ることもできるようになる。

全員にとって得をする事業ではないだろうか。

「というわけで、歌も踊りも演奏も劇もできる建物を作ろうと思う。エイラ姉さんにも意見を聞くことがあると思うからよろしくね」

「いいわね。立派な劇場を作ってバルカニアを盛り上げましょうね、アルスくん」

「そうだね。音響効果も考えた建物にできればいいな。せっかくだし、王都圏から建築士でも呼べないか検討してみるよ」

「あら、いいわね。王都圏は行ったことがないけれど、そういう劇場があるって宿に泊まりに来るお客様から聞いたことがあるわ。楽しみね」

こうして、バルカニアに劇場づくりの計画が持ち上がった。

いつもならばグランにでも建物を作る計画を頼むのだが、今は忙しそうだ。

なので、ほかから呼ぶことにした。

早速リオンに頼んで、王都で劇場づくりの経験がある建築士を呼び寄せてもらうことにした。

そして、それに伴ってさらにバルカニアを拡張することも検討することにしたのだった。