軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

田んぼづくり

「よーし、米を作るぞ、バルガス」

「米ってなんだよ、大将? 急に来て意味わかんねえぞ」

「米は食べ物だよ。畑で麦を植えるのと同じように、農民に稲を育てさせて実った稲穂から収穫するんだ」

「ようするに麦の代わりか。でも、それならバルカニアで育てたらいいんじゃないのか? なんで、わざわざこんな湿地帯で作ろうとするんだよ」

「稲の種類によっては陸作もできると思うけど、今回手に入れたのは水作のほうがいいみたいだからな。けど、そのためには水の量が豊富なところじゃないと難しいんだよ。バルカニアよりはバルガスの治めているバレス領のネルソン湿地帯でやったほうがいいかなって思ってな」

「へー、変わっているんだな。水の中に植えるのか。……本当に成功するのか?」

「……実は自信ないな。俺は米作りしたことないし」

「おいおい、本気かよ。だったら、そんなことをせずに麦でも育てていたほうがいいんじゃないのか?」

「そりゃまあ、慣れている麦のほうが確実だろうけどさ。農業は自然環境の影響で豊作のときもあれば、不作のときもあるだろ。いろんな種類を作れたほうがいいのは間違いない。いざというときのためにも試しておくのは悪いことじゃないさ」

「うーん、そういうもんかね? まあ、何事もやってみないとわからないからな。けど、大雑把でもいいからやり方がわからないと困るぜ」

「それは一応大丈夫だ。東方でアトモスの里にいた警備隊の中にも農家がいて米を作っていたやつがいたからな。そいつから米作りについて詳しく聞いて紙に書き起こしている。それを見てやってみよう」

米を作る。

そう決めた俺はバルカニアからバルガスのいるバレス領へとやってきた。

ここにはネルソン湿地帯という場所があり、水量が豊富だ。

もしもフォンターナ王国内で米を作ろうと思ったのなら、ここが一番だろう。

それにネルソン湿地帯はアーバレスト地区のなかでもまだ開発が進んでいない場所でもある。

ここを開発できれば人の住める場所を拡大できるということもあり、やってみる価値はあるはずだ。

それに米をつくるためには田んぼをつくることになる。

水路を管理して、稲を植えるときには田んぼに水を張り、それ以外のときには水を抜いてしまうというものだ。

この田んぼを作ってしまうことは、おそらく泥人形対策にもなるのではないかと思う。

ネルソン湿地帯はここ数年、バルガスが氷炎剣を使って泥人形を倒しているが、湿地帯が存在する限り現れ続けて困っていた。

田んぼとして管理できれば、湿地帯の泥人形の発生率も減るのではないかと期待している。

「とりあえずは稲を育てるための田んぼづくりでもするかな。実際に稲を育てるのは時間もかかるし。東方でスーラのところにいる奴らに何人か稲作技能を身に着けさせるのもいいかもしれないな」

「田んぼってのはなんだ、大将? 畑とは違うのか?」

「えっと、田んぼには水を張ることになるから周りを少し盛り上げて、その外に水を送り込むための水路を用意しておく必要があるんだ」

「ふむふむ。畑の周りを盛り上げて、外から水を流し込む入り口を作るのか。で、その後は?」

「ええっと、稲は種まきをする前に一度手元の苗床で別に育てて、それでできた苗を水を張った田んぼに差し込むように植えるんだ。その時、密集しないように等間隔で植えるのが良かったはず」

「はあ? 種まきするだけじゃないのか? 苗をいちいち植える必要があるのかよ」

「大変だろうな、田植えは。まあ、その後は上に伸びた稲が倒れて水に浸かったりしないように気をつけながら、収穫を待つ。で、収穫期が来たら稲を刈り取って乾燥させて、あとは精米して食べる。大雑把に言うと以上だ」

「……大変だな。始める前から気が遠くなりそうだぜ」

「そんなことを言ってもいいのかな、バルガスくん。実はこの米は食べるのにもいいが、酒にするのもいいんだよ。米から作った酒もいいもんだぞ」

「なに、酒が造れるのか。そりゃいいな。よし、わかった。すぐにその田んぼとやらを作らせるぜ、大将」

「その意気だ。頑張ってくれよ、バルガス。まあ、まずは【整地】で地面を均していこうか。魔法が使えない奴らは水路を掘らせて、あとは上流でのダムづくりも進めないとな。忙しくなるぞ」

「よっしゃ、酒が飲めるのならいくらでも協力するからな。いまから楽しみだぜ」

思った以上にバルガスが酒に食いついてきた。

が、その酒はいつになったら飲めるようになるかは全くわからないのだが。

というか、米作りが成功するかどうかも微妙だな。

麹とかもあるかどうか確認したほうがいいんだろうか?

まあいい。

すぐには成果が出ないと考えて実行しよう。

10年スパンで評価していくくらいの気持ちの余裕が必要だろうしな。

あとはそうだな。

農薬代わりに合鴨農法みたいなことができないか考えておいてもいいかもしれない。

害虫とかを食べてくれて、さらに水を撹拌して稲が栄養を吸収しやすくなる効果があったはずだ。

これはビリーにでも頼んでみようかな。

水の張った田んぼで鳥型の使役獣を使ってみるというのを検討しよう。

使役獣ならばこちらの言うことをよく聞くので、かなり使い勝手がいいのではないかと思う。

こうして、ネルソン湿地帯では治水兼農地開発としての稲作事業が実験的に開始されたのだった。