軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

建築効率化

「為せば成る、か……。意外となんとかなるもんだな」

俺は自分の土地に作った囲いの壁を見て感慨にふけっていた。

さきほど、土地を囲うようにして作っていた壁がグルリと一周分完成したのだ。

それを見ながらやればできるものだと考えていたのだ。

俺の作った壁はなかなかに規格外の大きさだった。

高さが10m近くもあり、その厚みが5mもあるのだ。

レンガを交差するように並べてその隙間を埋めるようにモルタルで固めた壁。

もしかしたら壁の内部の空間を砂か何かで埋めておいたほうが外からの衝撃を防げる壁ができたのかもしれない。

だが、壁の建築についてよく知らない以上、シンプルに分厚い壁を用意することにしたのだ。

俺は成長するごとに魔力量が上がってきているように思う。

そのため、以前までよりも一度の魔法で作ることができる容量が増えている。

それは宿屋を再現したときにも感じていた。

しかし、それでもこの規模の壁だと横幅5mも作れればいいほうだ。

つまり、5mごとに魔法を発動して壁と壁をつなぐようにして建設していく必要があった。

実は作業に入った当初はあまりにも先の長い作業に音を上げそうになってしまった。

遠くまで見えている畑と地平線、それを囲むような壁を作り上げることなど現実的ではないと感じたからだ。

だが、思ったよりも早く作業が終わってしまった。

予想以上にうまく行ったと言っていいだろう。

まずは壁建設を呪文化してしまった。

本来魔法を呪文化する作業というのは難しい上に、時間がかかってしまう。

呪文名を唱えたときに条件反射のように魔法が発動するようにするのが呪文化だ。

だが、うまく条件反射が起きるように呪文化する際には呪文名を唱えたあとに全く同じ魔法を使い続けなければならない。

言ってみれば毎回ブツブツつぶやきながら、ひたすらストラックアウトの的に野球ボールを同じ軌道で同じスピードでぶつけ続けないと成立しないのだ。

それがどれほど困難なことなのか、想像できるだろうか。

だが、【壁建築】については【散弾】を呪文化するよりも早く成功した。

これは宿屋を作ったときと同じ方法をすることで時間を短縮できたのだ。

一度作りたい壁を頭の中でしっかりとイメージし、それを魔法で作り上げる。

その作り上げた壁を今度は自分の魔力が行き渡るように染み込ませて覆ったのだ。

土から作った壁という建築物を魔力で覆ってから【記憶保存】の呪文を使う。

すると俺は壁の構造を完璧に、寸分違わずに魔力的に脳に記憶することができたのだ。

こうすることで呪文をつぶやいてから同じ魔法を再現し続けるという作業がかなり楽になり、おかげで早々と呪文化に成功したのだった。

この方法を確立したおかげで作業がはかどったのもあるが、もうひとつ効率が急上昇した要因がある。

それは使役獣の存在だった。

俺が初めて生まれた子にヴァルキリーと名付けを行ってから、俺の使役獣たちはすべて魔法を使えるようになっている。

だが、さらに驚くべきことに俺があとから呪文化した魔法もヴァルキリーたちは使えることがわかったのだ。

名付けをした当時には使えなかった魔法が使える。

それはすなわち、ヴァルキリーたちも【壁建築】を使うことが可能となったということになる。

行商人に販売するための個体は角を切り落とす、いわゆる角なしにしている。

だが、使役獣の卵を孵化させるために何頭かは角を切らずに成長させて手元に残していた。

【魔力注入】が使えればヴァルキリーたちも自分たちで卵を孵すことができるからだ。

今回はこの内から5頭くらいを引き連れて壁を作っていったのだ。

といっても、それでも数kmにわたる壁を作って畑の四方を囲むのは大変だ。

なので魔力の補給として商品用に作っていた魔力茸も使うことにした。

魔力茸は魔力回復薬の素材となる。

が、俺は魔力回復薬の作り方を知らなかった。

出荷するときには天日で干して、乾燥茸の状態で行商人に売っていたからだ。

しかし、この干し茸の状態でも魔力補給するには効果があったようだ。

俺とヴァルキリーたちはクチャクチャと硬い茸を口の中で噛み締めながら、ひたすら壁を作って回ったのだった。

「どうだ、バイト兄。すごいもんだろ」

「いや、たしかにすごいけどさ。馬鹿か、お前は。壁のどこに出口があるのかわかんねえだろ」

俺が壁を見ている際に近づいてきたバイト兄に話しかけると、思わぬ言葉を受けてしまう。

そんな……、きっと驚いてくれると思ったのに……。

だが、言われてみれば確かにそうかもしれない。

俺が作った外壁は正方形をしており、一辺の長さはおそらく4kmくらいあるのではないかと思う。

そんな遠くの壁のどこに出入り口があるのか。

なるほど、遠くからではわからないかもしれない。

「……出入り口のことを考えてなかった。どうしよう」

「そうだな……、とりあえず畑とは違う、出口に向かう道でも決めてわかるようにしたほうがいいんじゃねえか?」

「道か。考えとくよ」

こうして、壁の建築は完了し、大猪の獣害を防ぐことに成功したものの、新たな問題が出てきたのだった。