軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

量産化

「おい、グラン。どういうことだ?」

「お久しぶりでござるな、アルス殿。どういうことだ、とはなんのことでござろう?」

「大雪山を越えて東に行ってきた。そこでブリリア魔導国ってところが魔装兵器とかいうものを作り出していたぞ。前にグランができないって言っていた、岩を巨人のように操る魔道具みたいなものが東にはあったんだ」

「ほう? ブリリア魔導国がそんなものを開発していたのでござるか。それはすごいでござるな。ぜひ、実物が手元にあるのであれば見せてほしいのでござるよ、アルス殿」

「これだよ。魔力を込めれば3mくらいの岩でできた巨人になる。アトモスの里で採れた精霊石とやらを加工しているみたいだな。遠隔操作できて、周囲の岩を使って破損を修復することも可能だ。タナトスが相手でも苦戦する強さだったよ」

「ほほう。それは驚きの強さでござるな」

東方遠征軍の後処理の一つとしてやっておくべきことがあった。

それは、手に入れた戦利品であるブリリア魔導国の兵器についてだった。

精霊石を加工して作り出した杖や魔装兵器の核。

これらは俺が魔力で形を再現しても意味がなかった。

おそらくはなんらかの加工をして効果を発揮しているのではないかと思うが、それがどういうものかは俺にはわからない。

向こうでそれを調べようにも、基本的にはアトモスの里にいたのは採掘員やその採掘員を守り、あるいは見張るための警備隊だけだった。

採掘した精霊石はおそらくは本国であるブリリア魔導国に持っていって加工しているのだろう。

なので、現地に加工について詳しい者はいなかったのだ。

そのため、あちらでこれらの魔法武器を調べるよりも、一度持ち帰ってグランに見せてみることにしたのだった。

「というか、そもそもの話として東にそんな武器があるなら教えておいてほしかったよ」

「そう言われても拙者もなんでも知っているわけではござらんよ。それに、この魔装兵器などはおそらくは最近になって開発されたもののはずでござる。少なくとも拙者がいた頃はこのようなもののことは聞かなかったのでござるよ」

「そうなのか? ってことは、数年前までは存在しなかった新兵器って感じなのか」

「そうでござる。まあ、製作や実験は以前から極秘でしていたのでござろう。実用の目処がたったからこそ、アトモスの戦士と戦うことになろうともアトモスの里を欲したのではないでござるかな」

「なるほど。そういえばライラも杖や魔装兵器は見たことなかったって言っていたからな。タナトスも最初の襲撃のときには普通に攻撃されただけだって言っていたし、里を占拠してから本格的に実用化したのかもしれないな」

「ライラというのは誰でござる? 聞かない名でござるな」

「アトモスの戦士でタナトスの知り合いの巨人だよ。向こうで偶然出会って、一緒に行動していたんだ」

「そうでござったか。アトモスの戦士がもうひとりいたとあれば心強かったのでござろうな」

「まあね。で、肝心のその魔法武器のことはなにかわかりそうか?」

「うーむ、今話しながら確認してみた感じでは、ブリリア魔導国の技術の粋が込められた一品であるということしかわからないでござるよ。もうちょっと、調べてみたいのでござる」

「そうか。ま、なんかわかったら教えてくれ。魔力で動く機構がこっちでも再現できればありがたいしな」

「アルス殿も岩の巨人を作って動かしたいのでござるか?」

「まあ、それも面白そうだな。けど、そこまで複雑じゃなくてもいいよ。なんなら、魔力を込めたら回転するだけの単純なものでもいいくらいだ」

「回転するだけでござるか?」

「回転運動は利用価値が高いしな。ブーティカ家との共同研究で忙しいかもしれないけど、ちょっとこっちの解析も頼めるか、グラン?」

「もちろんいいでござるよ。こんな面白そうなものがあるのであれば、こちらからお願いしたいくらいでござる。杖ともども解析してみるでござるよ」

グランが嬉しそうに魔装兵器の核を撫で回しながら俺の依頼を請け負ってくれた。

これでちょっとはなにかわかればいいのだが、解析には時間もかかるだろう。

その間、一緒に研究しているルークが暇にならないようにそっちにネタを提供しよう。

「ルーク殿にもお土産がありますよ。はい、こちらをどうぞ。こっちは魔装兵器の核などにも使用されている精霊石と呼ばれるものです。おそらくは土属性の魔石に近いものかと。で、こちらは吸氷石です。これは氷属性ですね」

「ありがとうございます、アルス殿。拝見します。……それにしても、世の中にはいろんなものがあるのですね。精霊石というのは初めて見ました」

「そうですね。多分もっといろんなものがあるんでしょうね。ですが、精霊石は、ということは吸氷石は初めて見るものではないのですか?」

「ええ、そうですね。もともとブーティカ領は大雪山の麓に位置する土地柄です。大雪山に入っていけば、不思議な特性のある石があるというのは知る人は知っているものです。といっても、ブーティカ領に近いところではすでに取り尽くしてしまっているので、なかなか見ることはできませんが」

「そうだったのですね」

「それに、吸氷石のほうはフォンターナ家も馴染みがあるものではないのですか?」

「え? フォンターナ家がですか?」

「ええ。フォンターナ家が持つ氷精剣は吸氷石を使用して作られた剣のはずです。氷を生み出す魔法剣で、代々フォンターナ家に受け継がれているはずですが」

「ああ、あの氷精剣は吸氷石が使われているのですか。ということは吸氷石があれば、氷精剣を量産できるということですか?」

「え、ええ。数が揃えば作れるかもしれません。もっとも、吸氷石は人が立ち入ることができない極限状態の中でしか入手できないものですから、量産できるほどの数が手に入るとも思えませんが」

「あ、それなら心配いりません。私は魔法で吸氷石を作り出せますから」

「……は? 吸氷石を作れるのですか?」

「ええ。ちなみにそちらの精霊石も作れますよ」

「嘘でしょう? なんですか、それは。ずるいですよ、そんなことができるだなんて」

「落ち着いてください、ルーク殿。ずるいとか言われても困ります。まあ、とにかく、それならばグランが魔装兵器の研究をしている間はルーク殿には氷精剣の製造をお願いしてもよろしいですか」

「す、すみません。思わず取り乱してしまいました。わかりました。材料さえ手に入るのであれば大丈夫でしょう。早速取り掛かりましょう」

【合成】という魔法を使えるブーティカ家のルークにずるいなどと言われてしまった。

ブーティカ家の魔法も結構な性能を持つと思うのだが、隣の芝生は青く見えるのかもしれない。

が、なんにしても嬉しい誤算だった。

まさか吸氷石が氷精剣の材料になるとは思っていなかったからだ。

だが、言われてみれば魔力を込めたら氷の剣がでてくる氷精剣の材料としてはぴったりだとも思う。

しかし、これはありがたい話だ。

今まで魔法剣の材料は数が限られた炎鉱石や魔電鋼だけだった。

炎鉱石などは炎高炉など、武器以外にも使用するため、あまり魔法剣に使用するというわけにもいかなかったのだ。

そのため、あまり魔法武器の量産化はできない状況が続いていた。

が、その状態に終止符が打たれる。

どうやら、ルークは吸氷石とバルカ鋼を組み合わせて氷を発生させる金属を作り出しているようだ。

それを炉に入れて火入れする。

そして、叩いて伸ばして鍛えてといろんな処理をして氷精剣が作られていった。

ブリリア魔導国が作り上げた魔法の杖のように、魔力を込めたら遠距離攻撃できるというわけではないが、それでも氷の剣を伸ばして攻撃できる魔法武器を数多く作り上げることができる。

こうして、フォンターナは魔法武器の量産化に成功した。

氷精剣とは違い、槍の形をした魔法武器である氷精槍がブーティカ領で作られ始めたのだった。