軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「お疲れ様、バイト兄」

「おう、アルス。お前に頼まれた仕事は終わったぞ」

「うん、通信兵から聞いたよ。じゃあ、とっとと準備をすませようか」

シャーロットとの話し合いの最中に通信兵に連絡を入れてきたのはバイト兄だった。

実はバイト兄にはある仕事を頼んでいた。

それはバリアントからアトモスの里まで【道路敷設】によって道をつなげるということだ。

俺が情報収集という名の雑談をシャーロット相手にしている間に、すべての作業を終わらせてくれていた。

アトモスの里でブリリア魔導国に対して一応の勝利を得た後、今後どうするか考えた結果、俺は一つの結論にたどり着いた。

それは、東方には深入りしないほうがいいということだ。

大雪山を越えた先にあるこの東方に住む人間や国が弱ければ、ある程度こちらに拠点を確保してバルカの領地を得ようかとも思っていた。

ナージャなどの危険な相手がいる向こうで何かあった場合、逃げ場として用意しておくという意味もある。

が、ここはそれほど簡単な相手ばかりではないということがわかった。

ブリリア魔導国はフォンターナとはまた別の方向で発展した国だ。

とくにアトモスの里で採掘した精霊石を武器転用する技術は非常に高度であり、危険でもある。

が、そんなブリリア魔導国も東方では絶対王者ではなく、手強い相手が存在しているらしい。

そんなところに俺が首を突っ込むにはいくらなんでも手が足りないのだ。

さすがに転送石で瞬時に行き来できるとしても、西と東で領地を統治しながら両方で外敵に備え続けることは不可能だった。

ならば、決断しなければならない。

無理だと判断した以上、東方にこれ以上手を付ける必要はない。

ここは思い切りよく、切り捨てるくらいのほうがいい。

俺はそう判断したのだった。

フォンターナに帰ったらみんなにはこう言おう。

大雪山を越えた先は非常に危険な場所でした、と。

もしも下手に東と西を行き来できる道など作れば、逆に向こうから攻め込んでくる可能性もある。

ゆえに、大雪山は道路の整備はせずに、これまで通り、東方からの進攻を防ぐ壁として機能し続けてもらうことにしました。

そう言うのだ。

が、実際は領地の統治はせずとも東方に干渉し続ける。

バリアントを中心にスーラの下についたものに魔法を授けることで、俺の力を高めるのだ。

ついでに魔法鞄を持って行き帰りすれば、西では存在しない商品を持ち帰ることもできるだろう。

こうして、俺は東方からは領土的に完全撤退をすることに決めた。

だが、そこで問題が生じる。

タナトスの求めであるアトモスの里についての処遇についてだ。

奪われてしまったこの地をどうするのか。

そのときに、ふと思ったのだ。

タナトスにとって、アトモスの戦士にとってこのアトモスの里は何がそれほど大切なのかと。

こんな地肌がむき出しで草木も生えていないような大渓谷にある場所が本当に必要なのか。

つまり、アトモスの戦士にとっての居場所が確保できるのであればよその土地でもいいのではないか。

そのことを考えて、タナトスに聞いた。

すると予想通りの答えが返ってきた。

心情的に故郷であるこの地を愛している。

が、それ以上にアトモスの戦士として、里の奥にあったあの巨大な大地の精霊が宿りし偉大なる石が大切なのだということだった。

なにせ、あれはアトモスの戦士にとって信仰の対象でもあると同時に、巨人化の魔法を手に入れる儀式に必要不可欠なのだ。

あれがブリリア魔導国に押さえられたままでは、今後二度と巨人化できるアトモスの戦士が誕生しなくなる。

故に、この地をアトモスの戦士のもとに取り返したい。

そう言っていたのだ。

なるほど。

そう言われれば確かに納得だろう。

タナトスがホームシックになる気持ちも分かるし、あの巨大精霊石が大切なのも分かる。

が、最終的に話をまとめると、あの巨大精霊石さえあれば、場所はどこでもいいのではないかということだった。

つまり、大地の精霊が宿りし偉大なる石というものがあるところこそがアトモスの戦士の住む場所であり、この渓谷でなければいけない理由ではない。

引っ越ししよう。

大地の精霊が宿りし偉大なる石を持って、他の土地へ、バルカへと引っ越そうではないか。

「……本気か? あれは俺でも絶対に動かせない。お前なら動かせるとでもいうのか、アルス?」

「任せろ、タナトス。お前と一緒に大地の精霊が宿りし偉大なる石を見て、実際に触ってわかったが、あれはものすごい魔力を内包している。その魔力を利用して巨大精霊石ごとバルカに跳ぶ」

「跳ぶ? ……もしかして、転送石か? あれで移動できるというのか?」

「たぶんね。それを今からやってみるんだよ。そのためにバイト兄にヴァルキリーたちを預けて道路をつなげてもらったんだからな」

そう、俺の考えは転送石を使って大地の精霊が宿りし偉大なる石ごとバルカへと転移することにあった。

そのためにバイト兄に道路を作ってもらったのだ。

大雪山を越えるときに気がついたのだが、【道路敷設】で作れる道というのは基本的に真っ直ぐにしかできない。

本来、人が通るためのきれいな道を敷設したいのであれば、しっかりと測量をして、目的地に向かって正確な方向へと道路を作る必要がある。

だが、転送石を設置するためだけならそこまできっちりと道路を敷設しなくともいいようだった。

とにかく、土地に魔力的な連続性があればそれでいいのか、【道路敷設】で作り上げた道がうまくつながっていなくても、途中で向きが変わっていても、段差ができていても、とりあえずつながってさえいれば転送石を設置して跳べたのだ。

なので、大雪山を越えたときも、今回のバリアントとアトモスの里をつなげたときも、設置した道路は決して移動しやすい道ではなかった。

むしろ、ヴァルキリーたちが群れとなって、各自が走りやすい地面を走りながら【道路敷設】したため、恐ろしく適当な道路が地面に続いていた。

そして、それはアトモスの里の中の高さ300mほどもある巨大精霊石の下にまでつながっている。

つまり、この巨大精霊石は道路によって魔力的にバルカニアへと続いていることになる。

「よし、やるぞ」

そう言って、俺は一つの転送石を作り出した。

それを手に持ち、大地の精霊が宿りし偉大なる石にも触れさせる。

さらにもう一つ、転送石を作り、そちらに触れてまずは俺だけがバルカニアへと跳んだ。

一瞬にしてバルカニアへとたどり着いた俺は、バルカ城の裏のある広場にその転送石を設置する。

大地の精霊が宿りし偉大なる石が一度触れた転送石だ。

そして、もう一度そこからアトモスの里へと戻った。

これで下準備はできた。

あとはもう一度跳ぶだけだ。

設置した転送石に右手を触れながら、左手で大地の精霊が宿りし偉大なる石に触れる。

俺の体を通して大地の精霊が宿りし偉大なる石に内包されている魔力を転送石に流し込むイメージをする。

それがどれだけ効果があるのかはわからないが、巨大精霊石に内包されていた膨大な魔力が転送石に込められた。

なんとなく、これくらいでいいのではないかという感覚が得られたところでイメージする。

転移先は先程準備したバルカ城の広場にある転送石だ。

そこへと跳ぶ。

一瞬だけ酩酊のような感覚がして、しかし次の瞬間には足が地面についてしっかり立っている感覚になる。

どうやら転移する際に思わず目を閉じていたようだ。

ゆっくりと、目を開けるとそこにはバルカ城が、そしてそのバルカ城の裏の広場には城よりも高い真っ黒な巨大な岩がそびえ立っていたのだった。

こうして、アトモスの里のシンボルであった大地の精霊が宿りし偉大なる石はその住所を大きく変えることになった。

そして、それは同時にバルカニアは迷宮核を持つ場所になったことを意味していたのだった。