軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

戦力底上げ

「やった。やりましたよ、アルス様、バイト様。俺にも【氷精召喚】が使えるようになりました」

「おお、おめでとう、エルビス。これでお前も当主級だな」

「エルビスが当主級か。よし、来い、エルビス。ちょっと手合わせしてみようぜ」

「え、ええ? ちょっと待ってくださいよ。俺がバイト様に勝てるわけないじゃないですか。死んでしまいますよ」

「大丈夫だ。腕が切れたくらいだったらアルスが治せる。いくらでも訓練できるぞ」

「じょ、冗談ですよね? た、助けてください、アルス様」

「ま、ほどほどにな、二人共」

「そんな……」

がっくりと項垂れるエルビスを引きずっていくバイト兄。

どうやら、その後二人で訓練と称した模擬戦を行うようだ。

さすがにバイト兄も命を落とすような無茶なことはしないだろう。

というか、今までいろんな相手と戦ったり模擬戦してきたこともあり、俺よりも手加減はうまいはずだ。

エルビスにはなんとか頑張ってもらおうと、心のなかでエールを送ることにした。

バリアントの住民に対して名付けを行い、そしてスーラたちが周辺の集落に声をかけてバリアントの下につくように交渉しに出かけた。

その結果、周辺の5つの集落がバリアントの下につくことになった。

それらの集落はどこもスーラの村と同じような経歴、つまり他の国などからは隔絶した集団として存在していたようだ。

かつてあらゆる国から見放されて霊峰の麓の厳しい環境下でしか生きていくことを許されなかった者たちの子孫たち。

もちろん、彼らも無邪気にバリアントについたわけではない。

いきなりスーラたちがやってきて、自分たちの下につけと言ってきたら誰だってそれに反発するだろう。

他の集落の住人たちもそうだった。

が、どうやらスーラはもともとこのあたりでは知識人として有名で、知恵袋的な認識をされていたらしい。

そのスーラが話を持ってきたのだからと、一部の人間は一度バリアントを見てみるかと考えたようだ。

その結果、バリアントが雪に閉ざされている間に大変貌を遂げたことを知った。

その上で、地蔵に参拝させられ、今バリアントにつくならば君たちの集落にもこの寒さを和らげる不思議な像をプレゼントするぞ、と説得されたのだった。

寒さに悩むのはバルカでもそうだったし、この辺でもそうだ。

あるいは、今は従うふりをして吸氷石の像だけでも建ててもらおうとしたのかもしれない。

バリアントを見た人は自分の集落に帰り、周りを説得した。

そして、そこに俺が行き、吸氷石の像とその周りに建物を建てる。

その上で、魔法を授けることも告げたのだ。

結果、5つの集落の住民たちの大多数に名付けを行うことに成功した。

が、その名付けは俺が自分でしたわけではなかった。

東方遠征軍3000人を束ねるエルビスに名付けさせたのだ。

実はこの東方遠征の前に、エルビスは大隊長として通信兵や偵察兵など一部を除いたものたちの魔力を吸い上げる立場にたっていた。

そこにバリアントを含めた周辺集落からの魔力を吸い上げた結果、当主級の魔力量になったのだ。

これでアトモスの里奪還作戦におけるさらなる戦力を手に入れたことになるだろう。

「タナトス、ライラの状態はどうだ? 戦えそうか?」

「ああ、問題ない。アルスにもらった鎧と武器も気に入ったようだ」

「鬼鎧は伸び縮み可能だからな。ライラみたいに女性の巨人でも問題なく使えるようで良かったよ」

「食事もしっかり摂れたうえに、俺もライラと何度も手合わせをした。手足を失っていた間に多少勘は鈍っていたようだが、それも元に戻った。いつでもいけるぞ、アルス」

「なら、そろそろ動きますか。準備を整え次第、アトモスの里に向かおう」

この地にバリアントを作るなど、いろんなことをしていたが別に当初の目的を忘れたわけではない。

俺がここに来たのはあくまでもタナトスと一緒にアトモスの里へと向かうことにあった。

バリアントからアトモスの里にはここからまた少し山や谷を越えていかなければならない。

スーラが言うには10日と少しかかる距離らしい。

そんなアトモスの里まではすでに偵察に兵を出していた。

その偵察も詳細な情報を持ってバリアントへ帰還してきている。

巨人たちを雇うといって近づき、だまし討ちして里を占領しているのはブリリア魔導国と言うらしい。

そのブリリア魔導国はアトモスの里で採掘できる精霊石をとっているようだ。

今も寒い中、採掘した精霊石をどこかに輸送しているらしかった。

当然のことながら採掘員だけではなく、アトモスの里を警備している軍もいる。

偵察によれば、遠目から見てだが、駐留しているのは警備だけでも10000近くいるのではないかという話だ。

なんというか、すごい数だがそれも巨人がやってくる可能性を考えればわからないでもない。

少数の部隊ではアトモスの戦士たちに対抗できないだろう。

逆に言えば、今そこにいるのはアトモスの戦士たちが里を取り返そうとしてもできなかった相手とも言える。

ちょっと数が足りないかな?

東方遠征軍3000で待ち構える3倍以上の戦力のところへ向かうのは危険かもしれない。

が、暖かくなって雪が解け、こちらの存在を察知されたほうが厄介だろう。

むしろ、まだここに軍がいるということを知られていないうちに急襲したほうが勝機がある。

そう考えた俺は、雪が降る中、アトモスの里に向かって出発したのだった。