軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

活躍の場を求めて

「大将軍殿、聞きましたよ。ラインザッツ家が王都奪還作戦を決行するとか。なぜ、その作戦に参加されないのですか?」

「王国内の安定を優先するためですよ、ブラムス殿。フォンターナ王国は昨年も農地改良する暇がありませんでしたからね。まずは国内の充実を、と考えています」

「ですが、王都圏を押さえているメメント家に対してほぼ全方位からの作戦であると聞いています。間違いなくメメント家は敗北するでしょう。するとどうなるか。ラインザッツ家やリゾルテ王国などがさらに勢力を増すことになるのですよ」

「つまり、ブラムス殿は勝ち戦に参加することでフォンターナも勢力拡大をするべきだ、という考えですか」

「その通りです」

「難しいですね。フォンターナ王国の国土はメメント領とも王都圏とも接してはいません。勝ち戦に乗ることができたとして、もしも領地を得てもそれは飛び地となります。そうなればいずれどこかで別の勢力から攻撃を受けて奪われることになるだけ。あまりいい作戦ではないと思います」

「しかし……」

「それに、今回の王都奪還作戦はラインザッツ家の発案です。覇権貴族が各貴族家に対して号令を発して行うこの作戦にフォンターナが加われば、それはフォンターナが独立した王国ではなく覇権貴族の号令に従う一貴族と見なされる可能性があるのです。それはできません」

「いや、それならリゾルテ王国も参加しているはずでは? あちらも王国という名乗っているにも拘らず作戦に参加していますよ」

「リゾルテ王国は昨年ラインザッツ家と戦い、一部ですが領地を奪い取っています。つまり対等以上の力があることをすでに示している。そして、今回の作戦では王都ではなくメメント領を狙う別勢力としての協定を交わしているにすぎません。覇権貴族よりも下であるとは見なされないのではないかと思います」

「ですが……」

「待ってください、ブラムス殿。あなたの本意は別のところにあるのではないですか? 例の作戦に参加する口実は実際はなんでもよくて、戦場に出たいのでしょう? ルービッチ家の力を見せるために」

「うっ……、それは……。いえ、その通りです、大将軍殿。我らルービッチ家は剣を操ることしかできません。我が家がその力を示すには戦場しかないのです。どうか、ルービッチ家に働き場を用意していただきたい」

「えーっと、それはつまり、以前言っていた剣兵を作るためにフォンターナ軍に対して魔法を授けるということでよろしいのですか?」

「違います。そうではありません。私は今でも軽々しく貴族の魔法を農民に授けるのは反対です。そうではなく、我がルービッチ家を戦場に出してほしいのです」

うーむ。

どうしたものやら。

いきなり急用があるとか言ってアポを取り付けてきてたルービッチ家の若き当主であるブラムスに会ったら、こんなことを言い出した。

ルービッチ家の力を示すために戦場に出たいのだと主張している。

そんな理由で命がけの戦なんかしたくない。

というか、してはいけないだろう。

だが、これは多少俺にも責任があるかもしれない。

ルービッチ家を攻め落としたときに、まだ若く、思考が柔軟だろうという思いからブラムスに当主になるように命じたのだ。

が、若すぎたのかもしれない。

どうやら、ブラムスはルービッチ家の人間による圧力もあり、今までの貴族の慣習を崩すことができないのだろう。

簡単に妥協すれば、ブラムス自身が身内から非難されてしまうかもしれないからだ。

その点、エルメス家のゲイリーは割と頭が柔らかかった。

多分、住んでいた土地が関係しているのではないだろうか。

山がちで生産性の低い領地だった旧エルメス領。

そのエルメス領を維持していた山での収穫物の販売額も近年では落ち始めていた。

それを肌で感じていたゲイリーを始めとするエルメス家は、フォンターナに吸収された際にすぐに自身の魔法を金に変えることに同意した。

もともと将来を危惧していたからこそ、ルービッチ家とは違って思い切った決断ができたのかもしれない。

どうしたものかな。

ここでブラムスに対して言い含めたところで、ルービッチ家全体に対してどこまで効果があるかはわからない。

上からも下からも責められる中間管理職のように、ブラムスの胃がキリキリと痛む結果にしかならないのではないだろうか。

が、だからといって何もしないわけにもいかないか。

ルービッチ家全体に思い知らせてやったほうがいいかもしれない。

新しいフォンターナ軍のシステムのほうが旧来の軍の運用方法よりも遥かに優れているということを。

「わかりました。なら、戦いましょうか」

「え、では王都奪還作戦に参加されるのですか、大将軍殿」

「いや、違います。戦うのはフォンターナ軍とルービッチ軍ですよ。もう一度、今度は雪のない状態でお互いに正々堂々と戦い合いましょう」

「……は? なにを……、ご冗談ですよね、大将軍殿?」

「本気ですよ、ブラムス殿。その戦いでルービッチ家の力を存分に示されるといいでしょう。では、早速準備に取り掛かりましょう」

こうして、優しさの塊である俺はもう一度ルービッチ家に活躍の場を提供することにしたのだった。