軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

獣害

森を開拓していく。

結局、俺の仕事は木を倒して整地をして使える土地を広げながら、新たに届けられる使役獣の卵からヴァルキリーたちを孵化させていくことがメインとなった。

木の管理はすべてマドックさんに任せることにした。

正直手が回らない上に、木のことに対しては向こうのほうがはるかに俺よりも熟知している。

倒木から枝を切り落とし、適度な長さに切って丸太として保管する。

さらにその中から魔力茸の栽培に使える原木の用意もしてもらうことにした。

俺は【魔力注入】して魔力茸が栽培できるようにするだけでいいのでかなり楽になった。

ちなみにマドックさんの知り合いに木工技術の腕が優れた人もいた。

その人も雇うことに決めた。

俺の建てた建物はレンガだけの構造物で、それに合わせるための扉や棚、机や椅子といったものも必要だったからだ。

開拓した土地にはハツカなんかを育てる畑もある。

そちらはバイト兄に任せた。

驚いたことにバイト兄は俺よりも数歳年上というだけでまだ成人していないはずなのに結構人を使うことがうまいらしかった。

バイト兄は俺が雇った際にあげた角なしヴァルキリーにひどく惚れ込んでいた。

そして、俺のように背中に乗って走り回りたいと考えたようだ。

だが、それにはかなりの技術と体力がいる。

そのための練習時間を確保するために、バイト兄自身が仕事を手伝わせるための連中を集めてきたのだった。

戦で親をなくして困窮している子どもを中心に村での仕事だけでは食い足りないという人も少なからずいる。

そういった人たちに声をかけて畑の農作業を手伝わせているのだ。

バイト兄自身はお金を持っていない。

それなのにどうやって人を雇っているのかと思ったら、収穫した農作物を一部与えていたようだ。

俺の場合どうしても人を雇うとなると現金を用意しなければと思ってしまいがちなのだが、貧困している人にとっては現物でも十分だったのだ。

結構年上のおっさんも喜んでバイト兄の仕事を手伝っているところを見ると、兄の人柄も関係しているのかもしれない。

そんな風にして俺の生活はだんだんと開拓地が中心となって回っていくようになってきたのだった。

※ ※ ※

「畑が荒らされてる? バイト兄、誰が犯人とかはわかっているの?」

「ああ、足跡が見つかった。つっても人間がやったわけじゃないけどな。畑を荒らしたのは大猪だよ」

「マドックさんも足跡は確認したんだよね?」

「うむ、間違いないじゃろうな。しかも、タチが悪いことに複数の足跡が見つかっておる」

「タチが悪い?」

「そうじゃ。その足跡は大猪の成獣が2匹のほかにも、いくつか子供のものが混じっておったのじゃ」

「子どもか……、もしかして味を覚えたのかな?」

「おそらくな。厄介なことになるかもしれんぞ」

「何のんきなこと言ってんだよ。もう十分厄介だっつうの。大猪にびびって仕事を断るやつもいるんだぞ」

俺が8歳になった年のことだった。

ある日、家に帰るとバイト兄とマドックさんが雁首並べて俺の帰りを待っていたのだ。

その内容は畑の獣害だった。

畑を荒らされるというのはなかなか大変な事件である。

確か、前世でもイノシシの被害はニュースになっていたように思う。

イノシシというのは結構賢い生き物だ。

畑に入らないようにと電気が流れる罠を仕掛けるケースがある。

触れたらビリビリと電気が走るワイヤーのようなものを畑の周りに張り巡らせておくのだ。

畑に侵入しようとしてそのワイヤーに触れれば感電し、逃げ帰ることになる。

だが、この罠はすぐに効果がなくなったという。

イノシシが学習したからだ。

ワイヤーに触れると痛い、だが目の前の畑の野菜を食べたい。

そう考えたイノシシは自分の体で丸太などを押し込み、ワイヤーごと罠を引き倒して畑に侵入するようになったのだという。

結局、これぞ決定版だという罠はなく、イノシシと罠の仕掛け合いでいたちごっこを続けることになったと聞いたことがある。

この世界でも大猪の被害はでる。

が、最近はあまりなかったそうだ。

理由は単純明快だ。

森には大猪が食べることのできる食料が豊富にあったからだ。

雑食性の大猪は巨大森林というフィールドですくすくと育っており、わざわざ麦を植えることが多い畑へと食べ物を求めてやってくることが少なかったのだ。

だが、なぜ今、俺の開拓地で大猪による畑荒らしが増えてきているのか。

多分、俺が開拓していることが原因なのだろう。

一部では保護林のように木を間引きながらも森林を残しているのだが、すべての木を倒して開拓しきってしまう所も多い。

しかも、魔法によって整地してしまうため、以前の森のように豊富な生態系がなくなってきているのだ。

おそらく、食糧事情が悪くなったとか、他の動物との餌の取り合いに負けて縄張りを失ったとかそういったところだろう。

問題は大猪の特性にある。

正確にはわからないが、村で言われているのは、大猪は幼少期によく食べたものを生涯好んで食べるようになるという点にある。

しかも、それは親から子へと受け継がれるのだという。

俺の畑にはヴァルキリーたちの食料となるハツカが植えてある。

それを世代交代してでも狙われ続けることになる可能性があるということだ。

これは非常に困る。

こうして、俺は大猪への対処に迫られることになったのだった。