軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

情勢確認

「はい、リオン。これ、お前の分の魔法鞄ね」

「……ありがとうございます、アルス様。しかしまたすごいものを作りましたね。まさか、魔法鞄を作ることができるとは思いもしませんでした」

「ブーティカ家が協力してくれたおかげだな。あ、一応それは試作品の意匠がないやつだから、後でまた正式版の授与式もあるからな」

「もう一つもらえるのですか? ありがとうございます。これは喜ぶ者が多いでしょうね」

「便利だからな。ただ、革製品だから手荒に扱うとだめになるのも早いから気をつけて。それで、話は変わるけど外の様子について調べてあるか?」

「はい、もちろんです。まずは王都を占領したメメント家ですが、そのまま王都で年を越したようです。連合軍に襲われた王都圏貴族家に対して保護を行っていると主張しているようですね」

「自分がメメント家に従う貴族軍を王都に引っ張っていって、そこで略奪した貴族軍からの保護を買って出ているってことか? 随分都合のいい話だな」

「ですが、暴走した連合軍を唯一止めることができたのもメメント軍であったのは事実です。王都圏の貴族家は内心はどうあれメメント家の保護を受け入れざるを得なかったようです」

「……ということは王都圏の経済力をメメント家が手中に納めたってことか。反メメント連合はどうなったんだ?」

「反メメント連合は微妙な状態ですね。貴族家ひとつではメメント家には対抗できないからこそ連合を組んではいますが一枚岩ではありません。連合としてまとまってメメント家に王都を解放するように主張していますが、今のところはメメント家はその意見を聞くつもりが無いように思われます」

「まあ、メメント寄りの貴族家もいるって話だし、一致団結するのは難しいんだろうな」

「そうですね。反メメント連合としてはドーレン王家と同盟を組んで正式に覇権貴族となったラインザッツ家に期待しているようです。が、ラインザッツ家はリゾルテ王国と交戦中。ただし、近々リゾルテ王国と停戦する可能性が高いですね」

「リゾルテ王国と停戦? 領地の一部を奪われたんじゃなかったのか?」

「その通りです。が、攻撃されそうになった領都への攻撃は防ぎ、小競り合い程度にまで落ち着いてます。そして、奪われた領地はもともとリゾルテ家の領地だった場所でもあるため、失ってもそれほど痛手ではないと判断したのではないでしょうか」

「ああ、なるほど。元覇権貴族から三貴族同盟が奪った領地をリゾルテ王国が取り返した形になるのか。でも、領地を取り返されてもそこで停戦するものなのか?」

「どうやらラインザッツ家とリゾルテ王国は共通の考えで一致したようですね」

「共通の考えってなんだ?」

「自陣営の勢力拡大ですよ、アルス様。どうやら、この冬のフォンターナ王国の動きを見て考えを改めたようです。リゾルテ王国とラインザッツ家という力のある者同士が潰し合うようにして戦っている間に、フォンターナ王国は3つの貴族領を取り込みました。それをみて、取りやすいところからとるほうがいい、と考えるようになったようです。両者での争いは一時的に棚上げして、周辺の貴族領へと手をのばすことで意見が一致したのです」

「ふたつの大勢力が領地拡張に乗り出したのか。……でもそれってメメント家も黙ってみているわけにはいかないよな? 王都圏の経済力は魅力だろうけど、周辺の領地を持っていかれたら困るだろ」

「もちろんです。そのため、メメント家も周辺の貴族領を奪うために動き始めるのではないか、というのがもっぱらの噂ですね。現在の状況をまとめるとフォンターナ王国、リゾルテ王国、ラインザッツ家、メメント家の4つの勢力が周辺を飲み込もうとしており、小勢力がその中をどのように立ち回るのかという図式になってきていることになります」

リオンから現在の周辺勢力の状況の説明を受けて、俺がまず思ったのは自分が弱小勢力側ではなくて良かったということだった。

今まではいくつもある貴族家がお互いに争い合いながらも、貴族家の数を減らしすぎてもいけないという歴史的バイアスがあり、なおかつ力ある貴族家が覇権貴族となってそれを守ってきた。

なので、小勢力の貴族家であれども、周囲の力を頼む形でなんとか領地を守る方法もあったのだ。

だが、今は違ってきている。

かつてのように緩やかな同盟関係でお互いが奪い合いすぎないように争っていたのとは明確に違って、大勢力によって土地の奪い合いが起こり始めた。

おそらくはフォンターナを始めとした4つの勢力が今後もさらに領地を増やしていき、その結果、小勢力である貴族家はその流れに翻弄されて飲み込まれていく。

ならば、決断しなくてはならない。

自分たちがどの勢力につくのがいいのか、ということを。

が、実際にはその判断を下せるものはごく少数だと思う。

そもそもの話として、誰かの下につくのを良しとするのであれば、貴族を名乗っていないだろう。

心情的になるべくなら上手く立ち回って独立した勢力でいたいはずだ。

それに、どの勢力につくべきかという判断も非常に難しい。

メメント家は王都圏を握っているが、あくまでも不当占拠したものであり、周囲からの評価は悪い。

それに対して、本来の覇権貴族であるラインザッツ家は肝心の王が行方不明で王家はメメント家が保護しているために、本当に従来の覇権貴族のように貴族家の立場を考えて行動してくれるかが不透明である。

そして、かつての覇権貴族であるリゾルテ家は現在ドーレン王家の許可を得ることなく、勝手に新たな王家を名乗っている。

どこも信用できないという点は共通している。

ならばフォンターナ王国はどうかというと、これまた微妙な感じに見えるのだろう。

なにせ、フォンターナ王家の人間が今年5歳になったガロード一人しかいないのだ。

もし、ガロードに何かあれば一瞬でフォンターナ王国はその柱を失ってしまうことになる。

そして、その柱を失った際に一番権力を握っているのは誰かとなると、元農民で毎年戦場を駆け回っているやつがいるのだ。

歴史ある貴族家である自分たちが農民の下に付く可能性があるかもしれない、と頭によぎればフォンターナにはつきにくいと考えるかもしれない。

せめて、もう少し様子を見て、なるべく勝ち馬に乗ることができるようにしたいと考えるのが普通なのかもしれない。

つまり、俺とリオンの見立てでは、今後4つの勢力が領地を奪い合うことにはなるが、小勢力側の各貴族家は自らがどこにつくかを選んでどこかの勢力の下につくことはむしろ少ないのではないかということになった。

ある程度抵抗しながら独立を保ちつつ状況を見極める、というある種日和見主義の行動をとるところが多いのではないだろうか。

この状況の中でフォンターナはどう行動していくのがいいだろうか?

他の大勢力が領地を拡大していくというのであれば、それを黙って見ているわけにはいかない。

まあ、けど領地の切り取りは辺境伯であるエランスやワグナーに任せている。

こっちはしばらくは調略工作を仕掛けていくほうが無難かもしれない。

そう考えて、俺は再び内政に目を向けることにしたのだった。