軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

雪積もる中で

もうすぐ年が明ける。

冬が来て雪が降り積もるようになっていた。

思い返してみれば今年もいろんなことがあった。

なんといっても一番大きな変化はフォンターナ領が王国として独立したことだろう。

おそらくだが、誰一人としてそんなことになるとは予想もしていなかったはずだ。

それはもちろん俺もだ。

まさかこうなるとは考えもしていなかった。

社会的な変化も大きかったが、個人的にも大きな変化があった一年だった。

それは俺に子どもができたことだろう。

しかも、予想外の双子だった。

双子が生まれた後のリリーナの取り乱し方はこれまた俺の予想外で、ずっと俺に対して謝っていた。

結局、双子をそのまま育てることはまずいということになり、一人は手元で育てるが、もうひとりは死んだものとして実家の母親に預け、俺の弟として育てることになった。

リリーナが精神的に落ち着いてくれたのが何よりの救いだろうか。

その後は、ふたりともすくすくと成長しているので、ひとまず胸をなでおろしている。

ほかにも、時計塔を作ったり、線路を作ったり、バルカ銀貨を作ったりといろいろあった。

我ながら働きすぎではないかと思う。

が、どうやらまだ俺のすべきことは終わりではないらしい。

「また来たのか?」

「はい、アルス様。フォンターナ王国に対して臣従し、王に忠誠を誓いたいと複数の騎士が申し出ています」

「……そのかわり、騎士として領地の安堵をってことか。どうするかな」

「対応に困るところですね。なにせ、いくつかの土地の騎士が別々に申し出ているので、その者たちの領地はあちこちにあることになります。しかも、それは他の貴族が治める領地の中ということ。その領地の安堵というのは難しいですよ」

「だよな。せめて騎士じゃなくて、貴族家が臣従してきてくれたらいいのに」

フォンターナが王国として独立し、それを教会もドーレン王家も認めた。

そして、そのフォンターナ以外の土地は非常に不安定な状態になってしまっている。

そこで、周囲の勢力もこの状況に合わせて動かざるを得なくなった。

生き残りをかけて行動に出たのは腰の重い貴族家ではなく、騎士たちだった。

特に北部の貴族領にある騎士家だ。

彼らは北部の貴族に忠誠を誓い騎士として領地を治めている。

が、北部の一部にはメメント陣営の連合軍によって大きな被害がでたところもある。

そして、そのメメント家は王都と王族を確保して更に周囲に手を伸ばそうとしている。

それに対応するための反メメント連合も完全な一枚岩にはなりきれておらず、今後どうなるかは全く予想がつかない。

ならば、小勢力である小さな騎士家はどうすべきか。

もともと忠誠を誓っている貴族家とともに行動をともにし続けるか。

あるいは貴族家から離れて別の者の下について領地を守るか。

選択を迫られていたのだ。

そして、その中にはフォンターナ王国を頼る者もいた。

騎士としてフォンターナ王国に入り、その土地をフォンターナの一部とすることで、領地を守る後ろ盾にしたいということだろう。

だが、そう簡単にはいかない。

本来の主である貴族家は騎士がよそへ仕えることなど許さないだろう。

あるいは騎士の身分を剥奪して領地を取り上げてしまうかもしれない。

ならばと、騎士家としてではなく、騎士家を継がない次男や三男などをフォンターナ王国に送ってこようとする者もいた。

騎士として戦える実力があれば戦力的には一般人を複数集めるよりも遥かに力になる。

騎士家としては今の主に仕えつつ、家督を継がない子どもがフォンターナで力を認めてもらい騎士として扱ってもらえればその血縁は生き残れるかもしれない。

あるいは、武功をあげて次男三男が領地をもらえるかもしれない。

もしくは、本家がメメント家などに潰されてしまっても、本来あの土地は我が家のものだったと主張して取り返すための足がかりになるかもしれない。

そんな風に考えて、北部の勢力からいろんなやつがフォンターナ王国に集まってきていたのだ。

それらを受け入れるかどうか。

下手に受け入れてお家騒動に巻き込まれるのは嫌だ。

が、何もしないというわけにもいかなかった。

忠誠を誓うと言ってきている相手を無下にしては、今後同じように向こうから頭を下げてくる者を減らしてしまう。

今後のことを考えるとある程度は受け入れておいたほうがいいのではないか。

そんなことを考え出すと、誰をどこまで受け入れるのか、簡単に答えは出せなかったのだ。

「でも、お前のことだ。どうせ攻めるんだろ、アルス」

「まあな。このまま何もしないってわけにもいかないし、取れるときにとっておかないとあとで後悔することになるかもしれない。なら、手にする機会を棒に振るわけにはいかないさ」

「そう来なくっちゃ。で、いつ攻めるんだ?」

「年が明けたら、かな」

「年明けってことは早くて春先になるってことだよな?」

「いや、違うよ、バイト兄。北部貴族領に攻め込む。その時期は新年明けて直後だ」

「はあ? 明けてすぐって、新年の挨拶はどうするんだ?」

「後回しかな。というか、他の貴族や騎士が新年の挨拶で一箇所に集まっているところを攻める」

「……おいおい、まじかよ。相変わらずとんでもないことを考えるな、お前は。でも、そうじゃねえとな。よし、わかった。今から戦力を集めるようにしておくぜ」

「ああ。よろしくな、バイト兄」

フォンターナは王国として独立はした。

が、あくまでもそれは肩書が認められたということに過ぎない。

実際の戦力的には他の大貴族と呼ばれる貴族家のほうが力がある。

であるならば、フォンターナ王国は現状で満足して歩みを止めているわけにはいかなかった。

複数の貴族領に所属する騎士からフォンターナに臣従したいという申し出があったのは、どうするか悩みはしたが、渡りに船という面もある。

その騎士たちからフォンターナに救援要請を出させるのだ。

内容はなんでもいい。

とにかく、自らの主の貴族に問題があり、その騎士の領地が危ないので助けてほしいと言わせればいい。

そうすれば、その貴族領を攻め込む大義名分は一応手に入る。

北部の貴族家を攻略し、その領地をフォンターナに取り込む。

これに一番文句を言ってきそうなのはメメント家だろうか。

だが、メメント家は以前迷宮街を譲渡した際に北部について口出ししないという約束を取り付けている。

それは別にカーマス家だけの話ではなく、他でも同じだ。

しかも、期限は決めていない。

つまり、まだその約束は継続中であると言い張ることができる。

という理由をこじつけて俺は北部にある3つの貴族家を攻めることにした。

その攻撃タイミングは新年が明けるときだ。

なぜそのタイミングなのか。

それはひとえに、貴族領の騎士が新年の挨拶のためにその貴族領の領都に一堂に会するという風習があるからだ。

雪に閉ざされた土地に領地を治める支配者層が一箇所に集まっている。

しかも、動かせる軍も無ければ兵として農民を招集することもできない状況だ。

こんなシチュエーションはなかなかないだろう。

故に狙う。

こうして、フォンターナ軍は密かに雪中行軍の準備に取り掛かったのだった。