軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

国の礎

「しょうがない。とにかくすぐに対応しないとな。幸い、カーマス地区は転送石ですぐに行けるから俺が現場に直行してアパートを建ててくるよ」

「はい、お願いします、アルス様。こちらはどう動きましょうか?」

「ひとまずは収容した移住者用の食料を送ろう。一応、地震なんかの災害用に備蓄させているものがあるから、それの一部を輸送して炊き出しでもしようか」

「炊き出しですか。当面はそれで急場を凌ぐとしても、いつまでも移住者のためだけに食料を出し続けるわけにはいきませんよ?」

「そんなことわかっているよ、リオン。まあ、あとは適当に移住者を振り分けようか。フォンターナ王国の貴族や騎士階級の人間に縁がある人はその近くに行くようにして、あとは金を持っている連中はここフォンターナの街に送ろう」

「そうですね。けれど、大多数はそうではない金を持たないただの離農民ではないでしょうか?」

「だろうな。あとは、バイト兄の領地で新しく発見された鉄鉱山に送って、バルガスのところでちょっとずつ河川工事をして農地を広げているから、そこにも送るか。それでも足りない気がするけど……」

「……それならばアルス様、ひとつ提案があるのですが」

「なんだ、リオン? なにかいい考えがあるのか?」

「はい。今のフォンターナの街を見て感じていることですが、移住者には住む土地もそうですが仕事が必要ですよね? 今、この街ではフォンターナの新しい城と大教会の建築で仕事につくことができます。高くはありませんが、毎日の肉体労働で一家族が暮らす程度の収入は得られているはずです」

「そうだけど、今来ている移住者の数はその建築要員ではまかない切れないほどの数になるかもって話だったろ。全然足りないから、なんとかフォンターナ王国内で各地に分散していこうってことになるんじゃないのか?」

「ええ。そうなのですが、大規模工事で仕事を創出するということは悪くない考えだと思います。アーバレスト地区の河川工事などもその一環かと。そこで、さらにもう一つ、工事を増やしてみるというのはどうでしょうか」

「河川工事みたいな公共事業をってことか? まあ、悪くはないと思うけど、なにをやらせるんだ? 移住者が誰でもできるって仕事なら肉体労働くらいだろうけど」

「お墓を作りましょう、アルス様。フォンターナの王家の墓を」

「……王家の墓? ガロード様はまだまだ元気だけど、もうその墓を作るとか言う気じゃないよな、リオン。ってことは、カルロス様の墓ってことか?」

「そうです。フォンターナは王国として独立しましたが、それはあくまでも領土だけの問題です。アルス様は徴兵制で若い者たちを一堂に集めて一致団結を促すことを目指されていますが、それが実現するのは時間がかかるでしょう。そこで王家の墓を作るのです」

「墓を作ることが国をまとめるのに役立つってこと?」

「そうです。亡き先代当主であるカルロス様はあくまでもフォンターナ貴族家の当主でした。が、それをフォンターナ王国建国の祖とするのです。そうですね。これからはカルロス様のことを祖王と呼ぶことにするのはどうでしょうか。そして、その建国のために奮迅した祖王の死を安らかなるものにし、このフォンターナ王国をいつまでも見守っていただくために王家の墓を建てるのです」

「えーと、つまり国の精神的な柱としての役割を祖王に担っていただく、と。そして、そのための墓を作るのをよそからの移住者にも仕事としてやらせることで、フォンターナ王国の一員だという認識を植え付けるって感じか?」

「そのとおりです。人心を掴みつつ、仕事を与えるためにはいい方法かと。もっとも、問題があるとすれば建設にはお金が必要である、ということですが」

なるほど。

確かにリオンの言う方法はありかもしれない。

一応、今までもカルロスの葬儀はしっかりとしたし、その名を後世にまで残すために行動したが、酒の名前になったくらいだしな。

それに祖王というのもいいかもしれない。

ドーレン王のために戦い死んだカルロスは、王国を建国するために危険を承知で働いていた。

そういうエピソードがあったほうが、フォンターナを国にした意味が説明しやすいのは確かだ。

ドーレン王のために死んだのではなく、フォンターナ建国のために命を投げ出したのだと言いかえることができる。

なにげにカルロスの遺体はいまだに残っていたりするからな。

教会で葬儀を執り行ったが、その際に俺が【氷精召喚】でカルロスの遺体を氷漬けにした。

これは別に俺の独断ではなく、フォンターナ家の葬儀のやり方なのだ。

フォンターナ家が持つ上位魔法で死者を送り出すという意味らしいが、当時まだ幼かったガロードに代わって唯一上位魔法が使えた俺がやった。

そして、いまだにカルロスの遺体は腐ったりせずにきれいな状態で残っている。

墓に入れて、フォンターナ王国を見守ってくれているのだと言えば信じる者もいるだろう。

こうしてフォンターナでは移住者対策のひとつとして、フォンターナ王家の墓を作ることに決めた。

何万人もの移住者が押し寄せてくるため、それを吸収できるだけのなかなか大規模な公共事業が開始されたのだった。