軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

貴族への昇格

「ありがとう、リオン。お前ならそう言ってくれると思っていたよ」

フォンターナ王国を建国する。

俺がそう言った直後、少し考えた顔をした後、リオンはその考えに賛同した。

なんというか、結構意外だ。

つい先日まで王都圏にいて活動していたリオンはもう少し反対するかと思ったが、どういう心境かあっさりと了承した。

まあ、それならそれでありがたい。

「エランス殿、あなたはどうされますか?」

「……本当に、本気で言っているのか。ガロード様を王位につける? そんなことができるというのか」

「ええ、我々は本気ですよ、エランス殿。そもそもの話としてすでに王家にはなんの力も無い。にもかかわらず、王家やその取り巻きはこうして王命という形をとって、フォンターナに打撃を与えようと画策してきたのです。それとも、エランス殿は王命に唯々諾々としたがってフォンターナがすり潰されたほうが良かったと、そう言いたいのですか?」

「違う。そうではない。だが……」

「それにこれは絶好の機会であるとも言えますよ」

「絶好の機会?」

「はい。エランス殿や他の騎士の面々が貴族となる、またとない機会なのですよ」

「……貴族? この私が?」

「そうです。もちろんでしょう。ガロード様が王位につくということは、当然その直属の配下であるフォンターナの騎士は王を支える貴族となるのは当然の流れではないですか。今、フォンターナを王国へと生まれ変わらせることで、あなたは貴族へとなるのですよ、エランス殿」

「貴族……、私が貴族となる、なれるのか」

「はい。ですが、もちろん王国の建国に反対するのであれば王に従う貴族とはなれないでしょう。今一度問います、エランス殿。あなたはこの機会を棒に振るおつもりですか?」

「い、いや、しかし……」

「なに、あまり深く考えることでもありませんよ。フォンターナを王国へ、それに伴い貴族になるとは言っても現状とはさして変化はありません。身分が繰り上がるだけですからね。ただ、ここだけの話、私はエランス殿はほかの騎士とは違う、特別な貴族家になってもらいたいと考えています」

「特別な貴族家? なんだそれは?」

「今のフォンターナの騎士は2つに分かれています。私やピーチャ殿のように領地を持ちながらもフォンターナ軍に属している者。それとは違ってエランス殿やガーナ殿のように独自の騎士団を持つ騎士。つまり、エランス殿やガーナ殿はフォンターナ軍に属さない独自の勢力を持っている。その方々には辺境伯という地位についていただこうかと考えているのですよ」

「辺境伯というのは他の貴族家とは違うのか?」

「違います。辺境伯は辺境伯領という他国の貴族と広く領地を接する場所を治めていただくつもりです。そのため、即応性を持たせるために、フォンターナの他の貴族家よりも裁量権を広げることも考えています。つまり、他領と接する難しい土地を治めるかわりに通常よりも一段高い地位を持つ貴族家ということになりますね」

「ほう。ということはそれは貴殿のバルカ領よりもということかな?」

「そうなるかもしれません。なにせ、我がバルカ騎士領は小さいですから。まあ、私は現状の大将軍職をそのまま務めることになるので、比べるのは難しいかもしれませんが。それで、どうされますか、エランス殿。返答やいかに」

「分かった。私とて古来よりフォンターナ家を支えてきた騎士家の一員だ。そのフォンターナ家が王になるのを止めることはない。むしろ、これからもガロード様のために働く所存。よかろう、私も王国建国に賛同し、ともに協力していこうではないか」

「ありがとうございます、ビルマの騎士エランス殿。いや、これからは辺境伯殿とお呼びしたほうがいいかもしれませんね。今後もガロード様のためにともに働いていきましょう」

功名心がすごいね、エランスは。

どうしようか。

王国の形が決まっていないにもかかわらず、勝手に辺境伯がどうだと言ってしまった。

が、まあいいか。

切り取ったカーマス領をエランスにあずけてしまおう。

もっとも、かわりに今のビルマ騎士領からの転封ということで、もとの領地はフォンターナに返してもらおうか。

領地の広さが広がれば文句は言わんだろう。

そして、その話の流れのまま、イクス家のガーナもついでに辺境伯にしてしまった。

こっちもちょっと領地をいじろう。

今はバルガスのバレス騎士領も防衛の必要がある位置にあるが、それをガーナに押し付けてしまおうか。

ピーチャは明らかに動揺しながらも、王国建国に賛成の意向を示してくれた。

そして、ほかの騎士たちは主な当主級たちが頷いてしまったがゆえに、その流れに乗るしかなくなった。

おそらく不安もあるだろうし、王家に対してなにか思うところもあるだろう。

が、彼らは皆、騎士であって貴族ではなかった。

もしここに、かつてのウルク家やアーバレスト家の直系の者がいたとしたらもっと反対しただろう。

だが、騎士の本分としてはなによりも重要視すべきが、自分たちの家と土地の存続だ。

ここで王家の顔を立てて反対したところで、当主級の実力者たちに無理やり力ずくでその地位と土地を剥奪されてしまう。

自らの家を存続させるためにはここはフォンターナ家の意向に従うしかないのだ。

フォンターナ憲章を作っておいてよかったと思う。

あれは貴族と騎士、領民の権利と義務をまとめた内容になっているが、その本質は勝手に上位者からものを取り上げられたりしないことを保障するものでもある。

そのフォンターナ憲章は王国になっても適用される。

貴族と騎士の関係を王と貴族の関係に変える必要があるが、トップの国王がなんでも好き勝手できるシステムにはならないことをすでに取り決めている。

つまり、フォンターナが王国になっても、実態としては今までとさほど変わらないという安心が建国の支持につながった。

「ひとまず、フォンターナ王国の建国について主だった騎士の同意を得られたものとして歓迎します。ですが、この後どうするおつもりですか、アルス様? ガロード様を新たに王にするというのは、あらゆる方面に衝撃をもたらすでしょう。そして、当然王家はそれに反対して動いてきます。大貴族にフォンターナを討てと命じるのはまず間違いないですよ」

「俺もそう思うよ、リオン。そのために、急いで動かなければならない」

「というと?」

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ、ってな。こうなった以上、王家とは使者を通してまともに交渉できるとは思わん。だから、王家ではなくほかを狙う」

「戦いでは将ではなくその騎獣を狙うという意味ですか? つまり、王家ではなく、実際に戦うことになるメメント家やラインザッツ家を狙う? ですが、そこと戦うのはフォンターナ軍でもさすがに厳しいのでは?」

「そうだな。というか、戦うとは言っていない。交渉するんだよ。塩を使ってな」

「塩、ですか?」

「そうだ。俺はこれから急いで塩を作る魔法を呪文化する。そして、王家の専売である塩相場を壊す。リオンはとりあえず今回のことを王家にうまいことごまかしておいてくれ」

王家の使者御一行はバイト兄がすでに確保している。

つまり、しばらく王都に戻ることはない。

なので、時間を稼げる。

その間に王家には使者との交渉に時間がかかっていると説明しながら、他の勢力と交渉をする。

王家がいまだにでかい面をして他の貴族に命令なんぞしていられるのは、塩という生命維持に不可欠なものを専売しているからだ。

だが、それが他でも手に入るとなればどうだろうか。

大貴族が王家と同盟を結んで覇権貴族になるという理由は無くなる。

王家からフォンターナ討伐命令が出たとしても、無条件に従う必要などは無くなるだろう。

こうして、俺は大至急塩作りの魔法の呪文化に取り掛かったのだった。