軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

栽培対策済み植物

迷宮で記憶した転送石は暫定的に4箇所に設置するにとどめた。

フォンターナの街とバルカニア、そしてバルトニアとアーバレストの街だ。

ほかにも設置しようかとも考えたが、とりあえずは保留。

極秘に作った地下道と地下室の先に転送石を設置して、そこに至る通り道にはしっかりとした警備を置いて管理することにした。

好き勝手に使用することはできずに、事前の許可を得てから移動することになる。

しかし、そのうちこのことは気づかれる可能性は高い。

なにせ、通常ならば移動に時間のかかるところをポンポンと瞬間移動して各地に姿を現したらどう考えてもおかしい。

しかも、【念話】があればさっきまでフォンターナの街にいた俺が同日に遠く離れたバルトニアにいたなどの目撃証言を得やすくなるだろうしな。

であれば、いずれは転送石はフォンターナ領の当主級ならば利用可能なものとすることもあるかもしれない。

ただ、その場合でも行き来したい場所に設置されている転送石に当人が必ず直接触れて魔力を流す必要がある。

絶対秘密の転送石を用意しておくのも面白いかもしれない。

「その場合、転送石で移動できるのはアルス兄さんとバイト兄さん、バルガスさん、ピーチャさん、エランスさん、ワグナーさん、ガーナさん、であとはボクくらいになるのかな?」

「……カイルもなにげにすごいよな。上位魔法そのものは使えないけど、もう魔力的には当主級と同じくらいの魔力量があるなんて」

「リード家は数だけは多いしね。それにアルス兄さんにバルカ式強化術をしてもらったから」

「それでもすごいよ。ただ、さっきカイルが名前を挙げた中に抜けている人が1人いるな。現時点で転送石を起動できる当主級の魔力を持つ人数は9人いる。ガロード様も転送石を使えるからな」

「え、でもまだ子供だよ? 魔力量はたしかにそうかもしれないけど」

「でも使えるのは事実だ。いずれは何かあったときの逃走経路のひとつとして使えるようにしといたほうがいいだろうな」

「そうだね。何があるかわからないし」

「ま、そのへんのことは後でもう少ししっかり検討しよう。それよりも、例の持ち帰った魔力草はどうなった?」

「ああ、あれなら大丈夫。ちゃんと栽培できそうだよ」

転送石の話も重要だが、迷宮街から持ち帰ったものはそれだけではない。

ほかにも貴重なものがいくつかあった。

その中に魔力草と呼ばれるものもあった。

今回の迷宮街攻略遠征は無事に成功した。

が、課題もいくつか残っている。

そのうちのひとつが、フォンターナの当主級の騎士たちの実力についてだった。

現在、フォンターナの騎士はカイルとの話にも出てきたが子供のガロードやカイルも入れて9人いる。

しかし、そのうちで本当に当主級の実力があるものというのはガロードと俺だけなのだ。

カルロスの体から見つけた雫型魔石を人体に埋め込むというバルカ式強化術によって、フォンターナ領の騎士たちは間違いなくパワーアップした。

それは事実ではあるが、あくまでもそれは仮初のものだ。

今回は短期決戦だったのでそれほど問題が表面化しなかったが、長期的持久戦になった場合、体内の魔石に貯蔵していた魔力が空になる可能性がある。

そして、魔力回復薬や魔石も尽きることがあれば、バイト兄たちは本来の魔力量である騎士レベルにまで落ちてしまうこともあるかもしれない。

そう考えると、やはり魔石によるパワーアップはあくまでも補助として、本当の実力をつけることが重要になるのではないかと思ったのだ。

そうなると地道な魔力トレーニングで質と量を上げていくしかないのだが、それ以外の手法が迷宮では行われていた。

それが、ティアーズ家の【能力解放】だ。

といっても、迷宮街にいたティアーズ家関係者がここフォンターナにいるわけではない。

なにせ彼らはカルロスのかたきとして処分したのだから。

なので、【能力解放】は使えないのだが、探索組合が使っていたという苦い飲み薬というものに着目したのだ。

探索組合は迷宮に潜ろうと組合に登録した探索者にその薬を飲ませるのだという。

そして、その薬を飲んで魔力の豊富な迷宮に入り、活動するとその魔力が通常よりも体に馴染むのだそうだ。

それはつまり、魔力トレーニングで行っていることを薬の力で助けているのではないだろうか。

そう思った俺は、実際に使用されているというその薬を飲んで迷宮に潜った。

そして、その結果、迷宮内の魔力をより効率的に体に取り込めることに気がついたのだ。

フォンターナ領に迷宮そのものを持って帰ることはできないが、その薬であれば持ち帰ることはできる。

そして、効率が落ちるかもしれないが迷宮外でもその薬を使って魔力トレーニングを行えば、通常よりも魔力の質と量を上げやすくなるのではないか。

そう思ったのだが、ひとつ問題があった。

それは薬の材料に使用している薬草のひとつである魔力草が加工されていたのだ。

魔力草につくとされるゴマ粒のような種が薬に使われているのだが、探索組合に保管されているその種は熱処理されていて栽培できないようになっていた。

では、熱処理されていないものは置いていなかったのかというと、どうも迷宮街にはないようだ。

どこか別の場所で栽培されたものが処理された状態で迷宮街に搬入されているようで、探索組合に掛け合っても未加工品のものは手にはいらなかった。

しかも、それはミームですら持っていなかったのだ。

魔力草さえあれば、もっと効率的に魔力コントロールできるのにとがっかりしていたのだが、そこで救いの手を差し伸べたのがカイルだった。

最近はあまり見ていなかったので若干忘れていたが、カイルは精霊使いなのだ。

それも木精という植物のスペシャリストの。

こうして、カイルの精霊によって熱処理されて絶対に芽を出さないと言われた魔力草がバルカで栽培可能となった。

これにより、探索組合秘伝の魔力浸透薬がバルカで生産されることになったのだった。