軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ドレスリーナ

「こうしてみると、この川北城って小さかったんだな」

新しく服作りに特化した街を作ろうと考えた俺は、その候補地であるフォンターナの街とバルカニアの中間地点にある川北城へとやってきた。

もともとバルカがまだ村だった頃はフォンターナの街までは3日ほどの移動距離だった。

が、今はそこにしっかりとした道路を作り、しかも、俺は常に移動をヴァルキリーへの騎乗に頼っている。

【身体強化】させたヴァルキリーを走らせ続ければこの川北城は素通りすることも多かった。

だが、改めてこの城をみると「あれ、こんなものだったかな」という感じになった。

バルカの動乱で俺はここにわずか数日で城を建てた。

その時は、なかなか立派なものをつくったものだと思ったものだ。

しかし、今見ると数百人がギュウギュウ詰めで立てこもることができるだけの土地で、城というよりも小さな砦のような感じにしか見えない。

あのときは、グランと一緒に後世に残るような城にしてしまえと息巻いていたはずなのだが、その後いろんなところで陣地作りをしたので小さく見えてしまうのだろうか。

が、そうは言っても高さ10m、厚さ5mの壁で囲まれて、その壁の四隅には高さ30mの監視塔が建っているのだ。

報告では壁そのものは地震で崩れたりはしていないようなので十分使える。

あとは、さらに街の広さを拡張していく必要があるだろう。

今はバルカの魔法を使える者たちを引き連れて、拡張する土地に【整地】を使わせている。

それが終われば、既存の壁につなげるようにして新しく【壁建築】をしていき、街をぐるっと囲むことになる。

ついでに今回はほぼ最初からの街づくりになるので下水道なんかも計画的に作っておく。

その間、俺は居住区にアパートメントをいくつも建てることにした。

「アルス、普通の家を建てたりはしないのか? このアパートとかいうのは沢山の人が住めるのはいいが部屋が狭いだろう?」

「うーん、まあ移住者を受け入れるための住宅だからな。一人ひとりのために俺が一軒家を作る必要もないし、このアパートでも十分じゃないかな、父さん。一応地震でも倒壊しなかったっていう実績のある建物と同じ作りだし」

「それはそうだけど、前線基地や避難所ならともかく、こうも他人と近くに住んでいたら揉め事も起こりそうだけどな。しかし、住む場所もそうだけど、働く場所までアルスが作るのか。というか、服作りをするだけにしては大きすぎる建物もあるようだけど、なんでなんだ?」

「ああ、あれね。一応考えがあって、分業制の工場みたいにでもしようかと思っているんだ」

俺と一緒に新街作りの仕事をしている父さんが声をかけてくる。

俺が魔力を回復しながらいくつものアパートを建てているのを見て、若干呆れ気味だ。

たぶん、父さんからみると異常な建物に見えるだろう。

もともと、農家として周りに畑があった場所に住んでいたのだ。

ここまで赤の他人と近い距離で生活する必要のある建物は違和感があるはずだ。

まあ、このへんは俺にしてみれば前世の団地のようなものだと思う。

上の階の足音がうるさいなんて苦情が出てくるかもしれないが、そのへんは実際に住んでいる者同士で解決していってもらおう。

文句があるなら、金を払ってアパートとは別の一軒家でも購入してもらうしか無いだろう。

で、そんな感じにアパートに人を入れて働かせる。

が、リリーナが心配している通り、服作りの経験がない者も多いだろう。

というか、ほとんどの人は自分の服を繕うくらいしかした経験がないかもしれない。

そんな連中を集めて服を作れるはずがないという意見もわかる。

なので、仕事を単純化させてしまうことにした。

普通は服を作る職人というのはその人が一から十まで責任を持って行うことになる。

注文者の体のサイズを測り、その人にあった体型に希望の生地を裁断し、縫っていく。

それらすべての作業を移住者に覚えてもらおうとしても時間がかかりすぎる。

なので、俺は分業制の工場のようにしてしまうことにした。

職人が一人ひとりに合わせた服を作るのではなく、型紙を使ってサイズ別に服を作る。

リリーナから譲ってもらった職人はその型紙作りと服のデザインがメインの仕事となる。

そして、その職人に認められた者が型紙から生地を裁断し、それを工場に詰める針子に縫わせる。

ようするに移住者の多くは針に糸を通して生地を縫えれば最低限の仕事がこなせるのだ。

針子として腕を上げながら、いずれは裁断師、さらにデザイナーに頑張ってステップアップしていってもらいたいところだ。

言ってみれば俺が作るこの街は、新しい街であると同時に大きな会社のような組織でもあるということだ。

いずれ服の大量生産を可能とするために、効率よく人を使いたい。

数年前からリリーナが服職人を使っていたのと、バルカニアで生地を生産したことで、服作りについての職業訓練をしていたのもよかった。

とりあえずは職人をデザイナーとして、そして、バルカニアで針仕事を覚えた者たちを裁断師にしてしまおう。

交渉してここに引っ越してもらうことにする。

「でも、本当にそんなうまくいくのか? 出来の悪い服が作られるだけだったりしそうだが買い手がつくんだろうな?」

「たぶん最初のうちはうまくいかないだろうね。当面はフォンターナ軍で使う服を生産させようかと思う。それで買い支えて腕があがるのを待つって感じかな」

「そりゃまた気の長い話だな、アルス。また、お金の無駄遣いだって怒られるんじゃないか?」

「確かにおっさんには怒られるかもしれないね。まあ、けど領内の治安対策でもあるから多少の出費は仕方がないよ。うまくいくことを祈ろう」

こうして、春頃からだんだんと形ができあがっていった川北城を改修して作られた街。

服作りが好きなリリーナの名前をとって、「ドレスリーナ」と名付けられたこの街は今までにない特区の街として歩み始めたのだった。