軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

救助方針

地震が起きたときの対策。

思い出そうと考えるが、実際のところあまり思い出せない。

というか、前提が違うというのもある。

前世で俺が住んでいたのは世界中で最も地震の多い土地であり、その長い歴史から徐々に対策方法が作られていったのだ。

そして、地震などの震災対策は事前に被害が出ることを想定して、それに対する対策準備をしておくことがメインとなる。

これは一般人レベルだと地震に備えて各自で水や食料を備蓄し、被災対策グッズを詰め込んだリュックサックを家に置いておきましょうというようなものだろうか。

それに対して行政側も想定される災害に合わせて、それにあった用意をしておくことになる。

だが、そんなものはこのフォンターナ領では誰も準備していない。

では、今回はそんな事前準備ができていないから諦めるのかといえばそうもいかない。

ここでなにもしないよりも、なるべく早く復旧させて被害を最小限に押さえたほうが、結局は俺のためにもなる。

放置して多くの人が亡くなれば、その分だけフォンターナ領としての力が落ちてしまうのだから。

そう考えたとき、できることは限られているということに気がついた。

とにかく大切なことはスピードだ。

完璧ではなくともいいから、何らかの対策をして少しでも被害を減らす。

それだけを考えて行動するしかない。

そうすると、今必要な救助というのはなんだろうか?

そこそこ大きな地震が起きた。

そして、城のテラスから見ていた限り、いくつもの建物が崩れるところを見た。

つまり、住民が住むための家が崩れていることを意味する。

そういえば、前世では地震が起きたとき建物倒壊から派生する被害というものがあった気がする。

例えば火事だ。

倒壊した建物に火が点けば、そこから延焼し、隣近所の無事だった住宅までもを燃やし尽くしてしまうことがある。

だが、不幸中の幸いでこのへんではそれは少ないのではないかと思う。

もともと建物がすべてレンガなどで作られているので、木材を使用することがなく、延焼しづらいのだ。

さらにいえば、家の中で明かりをつけるには生活魔法の【照明】を使うので、火を使うのは食事を作るときだけだ。

地震が発生した時間帯からは少し外れている。

ほかに地震があったときに問題となるのは津波だが、このへんではそれは大丈夫だ。

あとは液状化現象や雪崩だが、今のところ各地で聞いた報告ではそれらの被害はあまり大きくはないようだ。

そう考えると一番問題になるのは、建物の倒壊による住居の喪失で、それに伴って冬の寒さをしのげないというところではないだろうか。

つまり、被災して家を失った者を一時的に集める避難場所を作り、暖を取らせることがなによりも優先される。

そして、その避難場所を確保しつつ、倒壊した家を復旧させることができればいいだろう。

それ以外にも困っている人がいるかもしれないが、そこは後で考えることにしよう。

「ピーチャ殿、騎士に対して各自の領地に避難場所の設置と住民の保護、そして、倒壊した建物の復旧をさせたい。できますか?」

「……領地を持つ騎士の多くは嫌がるでしょうな。金も時間もかかる。さらにいえば、いつまで、どのくらいまでそれをし続けなければいけないのかが問題視される。そもそもの話、自分で自分のことをできないものを助ける必要があるのかという意識がそれを助長するのではないか、と思うが」

「ピーチャ殿もそう思いますか?」

「まあ、有り体に言えばそうだな。もともと農民として生まれた身であるから困る人が多いというのはよく分かるが、だからといってすべてを救うなどということはできんからな」

「……うーん、なるほど。なら、こうしましょうか。被災者救助に動いた騎士領は今後数年間、減税を約束しましょう。そして、救助にかかった費用は各騎士領とバルカが折半で負担することにしましょう」

「ほう、いいのかね?」

「しょうがないですよ。ただ、被害の報告や救助状況の進捗は逐一連絡を入れることを条件としましょうか」

ピーチャやほかの集まった騎士たちと話し合う。

最初はあまり救助について意欲的ではなかった騎士領のトップの騎士たちだが、俺が減税を言い始めたのを境に態度が変わり始めた。

おそらくは俺がフォンターナ家の当主代行になってすぐにした税制改革がこれからも続くことを危惧していた騎士が多かったのだろう。

このまま税が上がっていくのを見ているくらいなら、住民を助けて数年間の減税を確約させたほうがいいというところなのかもしれない。

いろいろと騎士たちと協議し、ある程度の方針が決まった。

各地の街や町村に人をやって、被災者を収容できる避難場所を指定する。

そして、そこに食料と薪を集める。

幸いにしてもう新年が明けてそれなりに時間が経過している。

しばらく耐えていれば寒さも一段落してくるだろう。

そして、避難した人を使ってもいいから倒壊した建物を協力して直していくことになった。

これはフォンターナの街の状況を確認したところ、レンガ造りの家は倒壊したといっても全壊ではなく、半壊以下のところが多かったからだ。

残ったレンガで穴を塞ぐようにするだけでも、雨風がしのげて雪さえ降らなくなれば住めるようになる。

壊れた自分の家を自分の家族だけで直すよりも、一緒に協力したほうがより多く直すことができるはずだ。

一応これには金持ちなどの家だけを先に直してあとは放置、とならないように協力したものの家は必ずみんなで協力して復旧させるということを取り決めたりもした。

こうして、フォンターナ領では地震が起こってすぐに救助活動が行われることになったのだった。