軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

被災情報収集

「……揺れは落ち着いたみたいだな。カイル、急いで【念話】を使ってくれ。フォンターナの街にいる騎士は即座に城へと集まるように、そして、各地にいる者たちはそこでの地震の影響を報告するように指示してくれ」

「うん、わかったよ、アルス兄さん」

「あ、結構大きな地震だったから、もしかしたら余震があるかもしれない。これから数日は同規模かさっきのよりも小さな地震が何度もあるかもしれないから、注意も呼びかけてくれ」

地震の恐怖でまだ少し青い顔をしているカイルには悪いが指示を出す。

体感的にはそこまで大きな地震ではないように思うが、どの程度の影響があるのかはっきりわからない。

だが、こんなときにカイルの持つ【念話】はものすごく役に立つ。

すぐに遠距離にいるリード姓の者たちと情報をやり取りできるのだから。

だが、リード家の人間だけを連絡網とするわけにもいかない。

便利だとはいえ、今はまだフォンターナ領のすべてにきちんと配置ができていないからだ。

俺はすぐに他のものに命じて、人を走らせ、追尾鳥に書簡をつけて各地へと飛ばすことにしたのだった。

※ ※ ※

「すると、今回のことは貴殿は関係ないのだな?」

「それはそうでしょう。先程の地震は私に関係ありませんよ、ピーチャ殿」

「……そうか。星と月と太陽の異変を事前に知り得ていた貴殿なら、此度の地揺れが起こることも知っていたのかと思っていたが邪推だったようだな」

「ええ、地震予知ができるならしてみたいですけどね。たぶん完全な予知は無理でしょう」

「そうか。いや、突然のことで私も非常に驚いている。皆もそうだと思う。貴殿の即座の行動でこうして集まり、情報を共有できたことは有益だった」

「そうですね。地震は地殻変動で起きると考えられるので、しばらくの間は注意しておいてください」

まだ雪が降り積もる時期だということもあり、フォンターナの街には多くの騎士がいる。

ちなみにここにいる騎士は大きく分けると二通りの人間がいたりする。

フォンターナ家から騎士としての名付けを受けている領地を持たない普通の騎士、そして、各地に自分の領地を持つ領地持ちの騎士だ。

この領地持ちの騎士は新年の挨拶があるために冬の間、フォンターナの街にいることになる。

が、それは別に各領地にいる人材が全員この街に来ているというわけでもない。

例えばアインラッド家としてアインラッド騎士領を治めるアインラッド家当主のピーチャはこの街にいるが、ピーチャの家臣たちはアインラッド領に残っているのだ。

ようするに各地がもぬけの殻というわけではないということだ。

アインラッド家に限らず、多くの騎士家当主が自分の領地にいる家臣とリード家の【念話】を使ってやり取りしている。

これを見れば、リード家の有用性に気が付かないものはいないのではないだろうか。

今も、是非自分の家臣の一人にリードの名を授けてほしいと言ってきている者もいた。

そうして、そんなふうに各地からの地震の情報が集まってくるのをフォンターナの城で集積していくと、予想以上に地震の影響範囲が広いということに気がついた。

アーバレスト地区はどうやらそこまで揺れていないが、フォンターナとウルク地区は広範囲に揺れており、さらに南部の方が体感的な揺れと倒壊率が高そうな印象を受ける。

もしかして、フォンターナ領よりもさらに南ではもっと揺れたのだろうか?

「よし、【念話】を頼む。アーバレスト地区は揺れが軽微だったようだが、もともと水のあったところを埋め立てた場所もあったはずだ。液状化現象で建物なんかに影響があるかもしれない。気をつけるように言ってくれ」

「アルス兄さん、液状化現象ってなに?」

「えーっと、確かものすごく簡単に言うと埋立地みたいなところは地盤が緩いから地震の揺れの影響で地面が大きく凹む、みたいなことが起こるんだ。もしそれが建物のあるところで起これば、砂の上に建てた建物みたいに不安定な状態になって危ないんだよ」

「うーんと、ようするに地面がゆるゆるになるから気をつけてってことだよね。分かった、伝えておくよ」

「ありがとう、カイル。あとはウルク地区の大雪山系で雪崩の影響がないかどうかも聞いておいて。で、ほかは被災した人と建物、土地の復旧をしないといけないな。こういう災害時の復旧のやり方はどうなっているかわかりますか、ピーチャ殿?」

「復旧の仕方? さて、各自で避難して、建物を直すくらいしかやりようがないと思うが……」

「え? 各自でっていうのはどういうことですか?」

「もちろん、言ったとおりの意味だが。家が壊れたのであれば各自で直していくしかあるまい」

「いや、それは金を持っている騎士の話とかですよね? 庶民はどうするんですか? 避難場所の確保とか、食料がないとまだ寒い時期なのにどうしようもないでしょう?」

「貴殿がなにを言いたいのかよくわからん。自分のことは自分でするのは当然だろう? だれか親切な人が現れて勝手に壊れた他人の建物を直すというとでも言うのかね。冬の雪は誰にでも平等に降り注いでいるのだから、他人に甘えること自体、おかしなことだと思うが」

え、まじで言っているのか?

そりゃ自分のことは自分でするのは当たり前かもしれないが、これは震災だ。

自助努力だけでどうにかなるわけがない。

だが、ピーチャがいう発言内容にこの場にいる騎士はみんなうなずいている。

もしかして、みんなそういう感じなのか。

せいぜい、税の取り立てをいつもよりも厳しくしない、というくらいの認識のようだ。

ピーチャ自身が農民なんだから、騎士という上位の身分出身による認識というわけでもないのかもしれない。

今まで、前世の記憶を持つ故に常識の違いを感じることは多々あった。

そのたびに、「ここではこれが当たり前だから」で済ませてきたものも多い。

だけど、今回のはちょっと違う気がする。

すぐに対策をうてば助かる命も多いはずだ。

そして、逆に死ぬ命が多いほどフォンターナ領としての力が弱まることにもつながる。

そう考えた俺は慌てて被災対策を実行することにしたのだった。