軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

冬季の移動

「よく来たな、大将。寒かっただろ?」

「ああ、やっぱ冬に外を移動するってのは無茶だな。短距離ならまだしも、アーバレスト地区まで来るのは遠かったよ、バルガス」

「だけど、意外と来られるもんなんだな。さっすが大将だぜ」

「まあ、移動そのものはヴァルキリーがいるからな。ヴァルキリーは寒いのも暑いのも平気だし、それに新しい暖房器具も手に入れたからな」

「大将にかかれば幻の金属と言われた炎鉱石もただの暖房器具扱いか。やっぱやることが違うな」

「そうか? 誰でも考えつきそうなもんだけどな」

新年の挨拶が一通り終わった。

だが、まだしばらくは雪が降り続き、フォンターナの街に集まった騎士たちは街にある自らの館などでゆったりとした時間を過ごすことになる。

この期間は地元に戻って仕事ができないことになるが、しかし、意外と有意義な時間にもなり得る。

領地を任されている騎士にとっては普段は遠く離れた土地の騎士たちと冬になると会うことができるという面もあるのだ。

それぞれの騎士が自らの館で社交界のようなものを開き、いろんな騎士と顔をあわせる。

それは友好を育むことにもなるが、お互いの領地の情報交換や取引などにもつながるのだ。

自然とできていく派閥みたいなものもあるようだが、今年に限っては新たにフォンターナ領に組み込まれた騎士がどのような人物かをしっかりと見極めるためにも有効だろう。

そうして、冬の間中、騎士たちはパーティーを開いて顔を突き合わせていたのだった。

もちろん、俺もカルロスの居城にてパーティーを開いた。

その中で今後のフォンターナの動きを話すこともあれば、リリーナの作る新たな服について話を膨らませたり、あるいはバルカ騎士領にある遊戯エリアに観光に行くように言ってみたりしたりしていた。

だが、常であれば雪解けが始まるまで続くそれらのパーティーをある程度で切り上げて、俺はフォンターナの街を出たのだ。

目指したのは昨年フォンターナ領の一部となり、バルガスがバレス騎士領として治めている旧アーバレスト領都だ。

そのバルガスのもとへと雪が積もった道の上を俺は移動してきたのだった。

多くの人にとって、この行動はありえないものに映っただろう。

極寒の中、移動するなど自殺行為にも等しい。

だが、俺はこうして無事にバルガスのもとにまでたどり着いた。

それはヴァルキリーに大きなソリを引かせたからだった。

ヴァルキリーは真冬の寒さの中でも問題なく動くことができる。

それはもう何年も前からわかっていた。

そして、かつては冬の時期にバルカ騎士領とフォンターナの街を往復移動したこともあった。

冬になるととたんに食べることができる食料が減るので、温室で育てたハツカなどを売りさばいて金を稼いでいたのだ。

もっとも、今はそのくらいの稼ぎは大したものではないため続けていない。

が、今回やったのはその冬の移動の距離を延ばしただけとも言える。

どれほど気温が下がっても行動できるヴァルキリーに車輪ではなくソリをつけた乗り物を引かせることでたいていの場所には行ける。

だが、あまりにも遠方であればやはり寒さの問題は大きくなる。

バルカニアとフォンターナの街なら分厚い毛皮のコートを着込んでいればなんとか移動できたが、アーバレスト地区まで行くにはさすがに遠すぎて無理だ。

なので移動の途中で体を温める必要が出てくる。

が、従来であれば冬に暖を取るには薪が必要だった。

雪の降り積もる中の移動でそんな薪を持ち運ぶのはさすがに難しい。

だが、それを解決してくれたのがウルクでは幻と言われた炎鉱石だった。

九尾剣の材料にもなっていた炎鉱石は魔力を注げば炎が出る。

それは使いようによっては気球や飛行船として空を飛ぶための火力にもなり得る。

つまり、魔力さえあればいくらでも火を出し続けることができる不思議物質があるのだ。

それを移動用として活用することにしたのだ。

ヴァルキリーが引くソリを大型の箱のようにして、その下にスキー板のようなものを取り付けて雪の上を滑ることができるようにする。

そして、箱型にした箱ソリの中に暖炉のようなものをつくり炎鉱石に火をつけるのだ。

ごく少量の炎鉱石でも暖炉の中で燃え続ければ十分に中の温度を温めることができる。

こうして、俺は一般的には難しいと言われた冬季の長距離移動を可能とすることに成功したのだった。

かつてのウルク家のように九尾剣という武器だけに使用するよりは、こうして活用するのもありだろう。

「それで、わざわざここまで大将が来たのはその暖房付きのソリを見せびらかすってわけじゃないんだろ? 先に【念話】で連絡入れてきたときは、湿地帯に案内しろってことだったみたいだけど、本気か?」

「本気も本気だよ、バルガス。お前も来い。冬の湿地帯に用事があるんだよ」

「……わかっていると思うけど、湿地帯は魔物がいるんだぞ? それに外は寒い。何しに行くんだよ、大将?」

「そりゃ決まっているだろ。前にアーバレスト家当主だったラグナ殿から聞いた雷鳴剣の材料が湿地帯で採れるんだよ。なら、行くしかないだろ」

そう、俺がわざわざアーバレスト地区にまでやってきたのはそれが理由だった。

カルロスと一緒に王の護送中に死んでしまったラグナが残した雷鳴剣の材料についての情報。

それを採りに来たのだ。

こうして、俺はバルガスを伴ってアーバレスト地区のさらに奥にある湿地帯へと向かっていったのだった。