軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

バルカ方式

「で、どうするつもりなんだ、坊主? その政策っていうのは具体的になにをするんだ?」

「まあ、ぶっちゃけていうと今までのバルカ方式の領地運営をフォンターナに導入したいってだけなんだけどね」

「バルカ方式っていうと、どれのことを言っているんだ?」

「まず、最初に重要なのはやっぱり食料自給率を上げることかな。バルカの魔法を使って収穫量を激増させる必要がある。メメント家にも格安で麦を売る必要があるしな」

「まあ、それは一番重要だよな。っていうと、今までバルカがしていた派遣業をもっと積極的にやろうっていうことか。いや、それよりも無償で農地改良したほうが収穫量は伸びるか?」

「それは駄目だよ、おっさん。基本的に無償では農地改良はしないよ。バルカは常に金欠だからな。それに各地の領地持ちの騎士たちに金を貸し付けておきたいしな」

「騎士に金を? なんでそんなことをするんだ? 坊主の言うようにフォンターナ領を一致団結して守るなら金の貸し借りは必要なんかないだろ?」

「いや、できれば自分の領地を持つ騎士の数っていうのは減らしておきたい。俺の言うことに反抗されても迷惑だしな。借金を背負わせてバルカの言うことを聞きやすくする状況に持っていきたい。なんなら借金の質として領地を没収したいくらいだ」

「……まあ、坊主が言わんとしたいことはわからんでもない。気になることもあるがな。とりあえずそれは置いておいて、農地改良だけがバルカ方式ってやつじゃないだろ。他にはなにをするんだ?」

「やっぱり軍を強くして備えておく必要はあると思う。できればフォンターナ領全体で徴兵制を導入したいんだが……」

「それは無理だぞ、坊主。昔から自分の領地を持つ騎士から農民を奪ってみろ、絶対に揉めるに決まっている。それに、人手を取られたら領地持ちの騎士が部隊を構成できなくなっちまうじゃねえか」

「そうなんだよな。やっぱり、騎士たちから徴兵することは難しいか。しょうがない、徴兵するのはフォンターナ家直轄領とバルカの領地のバイト騎士領、あとバルガスのバレス騎士領からにするか。それでどれだけの数の兵を確保できるか試算しておいてくれないか、おっさん」

「わかった。計算くらいならすぐにすむ。だけど、兵の数以外の計算も必要になるぞ、坊主。本当にそんなことをして大丈夫なのか?」

「大丈夫か、ってどういう意味だ?」

「金だ。坊主から名付けされた連中を使えば、たしかに農地改良はうまくいくだろう。収穫量の増大は成功するとは思う。だけど、お前がバルカにも導入した徴兵制の軍は戦がなくても常に金がかかり続ける金食い虫の集団だ。別に軍事力を上げたいだけなら農閑期に各地の農民を集めて訓練させるだけでもいいんじゃないのか?」

「うーん、それでもいいといえば別にいいんだけど、徴兵制には他の狙いもあるからな」

「他の狙い? なんだそれは」

「若い同世代の連中を一箇所にまとめて同じ訓練を受けさせる。その目的は軍の訓練でもあるけど、もう一つの意味があるんだ。自分たちが同じ地に住み、自分たちの力で自分たちの土地を守るという使命感というか、集団による結束というか。ま、端的に言ってフォンターナのために戦うことの意味を教え込みたいんだよ。兵の一人ひとりが戦うのは領主のためじゃなく、自分たちのためだってな」

農閑期の農民を集めて訓練するだけなら、それもいいだろう。

だが、その場合、基本的には訓練を受けている奴らは「訓練をさせられている」という思いだけを持つことになる。

しかし、俺が必要としているのはもっと強い軍だ。

三大貴族家が襲ってきても守ることができるくらいの軍を作りたい。

そう考えたとき、やはり一番重要視せざるをえないのは、兵の精神性だった。

戦のときだけかり出される農民は自軍が不利になると簡単に逃げ出す。

だが、圧倒的に強い相手を想定している現在の状態でそんな兵では満足に戦えない。

ならば、自軍の兵が強い相手を前にしても簡単に逃げないようにする必要がある。

そう考えたとき、兵の戦う理由を作る必要があると考えたのだ。

今までのように、頑張ったら出世できるかもしれない、というような曖昧な希望のようなものでは駄目だ。

相手に負けたら自分たちの土地が根こそぎ焼き払われて家族が殺される。

もしそう考えたら自分たちの家族を守るために簡単には逃げられない。

だからこそ、徴兵制にして若い奴らを一箇所に集めて教え込むのだ。

言い方は悪いが一種の洗脳といってもいいだろう。

が、このやり方はおっさんが指摘する通り、べらぼうに金がかかる。

なにせ、普通ならば農作業をするべき若い男手を農家から奪い取り、なんら生産性のない訓練を日夜行なって、しかも、そんな連中を食わせていかなければならないのだ。

途方も無い金がかかる。

今までのバルカ軍でも結構な金額が垂れ流し状態になっていたが、フォンターナ家直轄領でもそれをすると出費が飛躍的に増えてしまうのだ。

バルカの金庫番たるおっさんが気にするのもわかるというものだろう。

「確かに、おっさんの言うとおりだな。金がかかるし、今のバルカはその財源を確保し続けられるかどうかわからない。非常に危険な賭けみたいなやり方かもしれない」

「そうだろ。じゃあ、やっぱり徴兵制はやめておいたほうがいいんじゃないのか?」

「いや、それでもやるよ。金なら用意する」

「おいおい、無い袖は振れないんだぞ? それともなにか、また新しいものを作って売ろうってか?」

「今回は別の方法をとる。もっと手っ取り早く金を確保したいからな」

「別の方法? 何をする気なんだ、坊主?」

「紙を金に変える。これで一時的にバルカの金欠問題は解決するはずだ」

そう言って俺がおっさんに差し出した一枚の紙。

すでにフォンターナ領ではそう珍しくなくなったバルカで作られた植物紙。

俺はそれを使って軍費を賄うことにしたのだった。