軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

食料庫

「なあ、あれってなんだと思う?」

「さあな、ちょっと前からずっと上を飛んでるよな。鳥……だよな……?」

「ああ、鳥に見えるけど、なんで鳥が袋を引っ張って飛んでるんだ?」

「俺が知るわけ無いだろ。そういう鳥もいるってことだろ」

「そういうものか。フォンターナには悪魔が住んでいるってきいたからさ、俺はてっきりあれが悪魔の使いかと思っちまったよ」

「馬鹿言ってんじゃねえよ、ほら、さっさと作業しようぜ。ちんたらやってたら終わんねえぜ」

なんだ。

こいつもちゃんとあれが見えていたのか。

てっきり俺の幻覚かと思っちまった。

メメント家が北のフォンターナを攻める。

そう言って生まれ故郷の村から兵として連れてこられた。

何日もかけて北を目指して歩く。

そうして、だいぶ北上してきたとき、それが現れた。

俺達の上をゆうゆうと飛びながらあたりをぐるぐるとしている不思議な鳥。

なぜその鳥が不思議に見えるかと言うと、何匹もの鳥が大きな袋みたいなものを引っ張って空を飛んでいたからだ。

なんであんな大きなものが空に浮いているのか。

俺には全く理解できなかった。

俺と同じように周りの連中もみんなざわざわしている。

そりゃそうか。

あんなもの生まれてこの方見たこともない。

ただただ不気味だった。

なんか嫌な予感がしやがる。

「……って、ちょっと待て。なんだありゃ?」

「うるせえな。さっきも言っただろ。ただの鳥だよ、……え? なんだあれ。氷……か?」

「……やっぱ氷だよな、あれって。このへんの鳥は氷の糞でもするのか?」

「そんなはずないだろ。つーか、やばいぞ。あの氷、落ちてくるんじゃねえか?」

「まじか。おい、お前ら、全員逃げろ! 氷が落ちてくるぞ。潰されちまうぞ」

くそ。

嫌な予感が当たりやがった。

袋を引っ張る鳥たち。

その袋の下側に見たこともないほどの大きな氷が現れやがった。

なんだよあれは。

あんなでかい氷が急に出てくるなんて普通じゃねえ。

……もしかして、魔法じゃないのか?

俺も今まで何度か戦場に出たことがある。

その中で騎士様が使う恐ろしい魔法をみたことがあった。

だけど、あんなに大きなものを出す魔法なんてあるのか?

空に浮かぶ氷の塊。

その氷の大きさはありえないほどの大きさだった。

俺の家の建物よりも高さがあるんじゃないかと思うほどだ。

あんなものが落ちてきたらやばい。

そのことにいち早く気がついた俺達は周囲へと声をかけながら走る。

氷の塊が浮かぶ、袋の鳥から離れるように、全力で。

そして、その直後、氷の塊が落ちた。

俺達が走り去った直後に、俺達がいた場所に。

「な、なんなんだよ、これは。何だってんだ。なんで氷が落ちてきて、その氷が燃えてんだよ!」

ありえない。

自分の見ているものが全く信じられない。

やっぱり俺は幻覚を見てるんじゃないだろうか。

空から落ちてきた氷。

それが地面に落ちた瞬間、炎をあげ始めたんだ。

轟々と燃えている。

あれは氷じゃなかったのか?

いや、そんなことはどうでもいい。

そんなことは問題じゃなかった。

「も、燃えてるぞ。麦が……、俺達の食べる食料が燃えてるぞ!」

「は、早く消さねえと。火を消すんだ。急げ」

「水、水はどこだ。川はないのか?」

「近くに川なんかねえ。くそ、火の勢いが強すぎて消すなんて絶対無理だぞ」

燃えているのは、俺達が食べるための軍の食料だった。

俺達が、メメント軍の兵が食べる食料の保管場所だ。

やばい。

炎が燃え広がっている。

ここにある食べもんが全部燃えちまう。

「お、おい、見ろよ。あの袋が移動していくぞ」

「あん? そんなことどうでもいいだろ。食料に火をつけられたんだ。どやされるだけじゃすまないんだぞ」

「ち、違う。袋だ。あの空飛ぶ袋が、移動しているんだ!」

「そんなこといいんだよ。火を消さないとだめなんだよ」

「移動しているって言ってんだよ。あっちになにがあるかわかんねえのか? あの空飛ぶ袋が向かっていった先も食料があるんだぞ!」

「……は? ちょっと待て、向こうも燃えたら食うもんなくなるだろ……」

「だから、さっきから、そう言ってんだよ。軍の食料が燃やされてるんだ。あの袋は軍の食べ物に火をつけて回る気なんだ」

「……冗談だろ?」

冗談なんかじゃない。

だって、現に今も新しい氷の塊が空から落とされたんだ。

次の瞬間、その氷が地面に落ちたと同時に炎を上げた。

豪っと音をたてるようにして火の手が上がる。

あれを消すなんて無理だ。

だって、俺達の担当していた食料庫はあまりの熱さに近づくこともできないんだから。

こうして、メメント軍の食料庫が燃やされた。

数多くあった食料庫のうちの半数ほどが燃えてしまった。

フォンターナに向かって移動していた俺達は一瞬にして食べ物を失ったのだ。

あれは悪魔の仕業だ。

誰が言ったのか知らないが、俺はその言葉を聞いて呆然としながら、うなずくことしかできなかったのだった。