軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

賠償請求

「あなたがアーバレスト家の新たな当主ですか?」

「ラグナ・ド・アーバレストだ。一応アーバレスト家の当主ということになっている。もっとも、君にアーバレスト軍を壊滅させられてもはやかつての力はないがな」

「アーバレスト家の当主としての力を継承された、ということは、ミッドウェイ河川で先代当主は亡くなっていたということですね?」

「そうだ。先代も先々代もアーバレスト家の当主は君に敗北した。付き従ってくれていた騎士もろともな。おかげで貴族家としてはおしまいだ。もはや上位魔法を発動することさえかなわんよ」

「なるほど。まあ、戦場で正々堂々と戦ったことですのでご容赦を。では、さっそくですが話をすすめましょうか」

「ああ、先代たちには悪いが戦で勝つことができなかったこちらに問題があっただけだからな。しかし、なにを話し合おうというのだ? 新当主である私の首を差し出せば他の者達は見逃してもらえるということなのかな?」

「いえ、首は結構です。我々フォンターナとしては当初の目的を達成したいだけですよ」

「当初の目的?」

「はい。今回の戦いはフォンターナ領に滞在している王やその家臣を安全に王領まで送り届けるために、アーバレスト家に船を用意してもらいたいということが発端です。アーバレスト側がこの要請を拒否されたため、我々は詰問するためにアーバレスト領へと足を進めました。そこで、不幸な行き違いがあり戦いへと発展してしまっただけなのです」

「……つまり、アーバレスト家がおとなしく船を提供していれば戦いにはならなかった。そう言いたいのかな?」

「そのとおりです」

「よく言うよ。完全に殺意の波動を感じ取っていたよ。で、結局君はなにが言いたいのかな? その理由で戦った結果、アーバレストは敗北した。そのアーバレストをどうしようと言う気なのかが聞きたいのだが」

「別になにもしませんよ。アーバレスト家の領地を奪うようなこともしません」

「……なに? 領地を取らない、だと?」

「はい。少なくともバルカはそのつもりです」

「……アルス、それは駄目だ。我々アーバレストにも貴族としての矜持がある。戦って負けたあとに情けをかけられるなど、あってはならないのだ」

「そうですか。ですが、話は最後まで聞いてください。もちろん、アーバレスト家には他にもしなければならないことがあります」

「ほう、それはなんだ?」

「戦争賠償金を払ってもらいましょう」

「せ、戦争、賠償金? なんだ、それは?」

「今回の戦いで必要となった経費をアーバレスト家に支払ってもらいます。バルカ軍とイクス軍がこの戦で必要となった資金を補填してもらうことになります」

「賠償金、か。あまり馴染みのない話だな。しかし、それなら、それこそ領地を奪うなりするのが普通ではないのか? 本当に金を払うだけでいいのか?」

「はい。すでに明細を用意させています。ここに書かれている金額を期日までにお支払いください」

「わかった。そのくらいお安いご用だ」

「ありがとうございます。いいお返事を頂けて、私もフォンターナ家の当主様に気持ちよくご報告することができるでしょう。では、よろしくおねがいします」

※ ※ ※

「いいのですか、アルス様。本当にアーバレスト領を手に入れなくても?」

「別にいいんだよ、ペイン。今はアーバレストが動けないようになればいいだけだし」

「しかし、戦争賠償金ですか。変わったことを考えますね」

「なんでだよ。そうしないと俺も損するだろ。負けた方に負担してもらわないと」

「……アーバレスト家は払えませんよ、アルス様。バルカ・イクス両軍の戦費だけならまだなんとかなるでしょう。が、アルス様が使用した竜の魔石。あれは高価すぎます」

「珍しいものだそうだからな。値段なんてあってないようなもんだしな。けど、無茶苦茶な金額ってわけでもないぞ。きちんと過去の相場を調べて算出した金額なんだからな」

「金額が適正であるかどうかを言っているのではありませんよ。アーバレスト家が支払うには高すぎると言っているのです。払えないとなれば、どうなるか予測がつくでしょう」

「約束を破ってこちらに攻撃を仕掛けてくるかな?」

「はい。いつかはわかりませんが、そうなる可能性はあります」

「それならそれで問題ないだろ。向こうから仕掛けてくれば、それを理由に今度こそ領地を取る。ぶっちゃけ、今回の戦いよりも大義名分がたつからな。遠慮なく切り取るよ」

「……アーバレスト家が攻撃を仕掛けてくるとしたら、バルカではなく領地が接しているイクス家。つまり、バルカは相手の攻撃を待ってから攻撃に出ても全く遅くない。攻撃してこなければ賠償金を支払わせて金を得る。損はしないというわけですか」

「そういうこと。アーバレストが真面目に賠償金を払おうとすれば当然領民に対して税の取り立てが厳しくなる。そうなればアーバレスト家は自分の土地の領民から恨まれることになる。いずれバルカが領地をとった時に、少し税率でも低くすれば人心慰撫も簡単にできる。いいことずくめだろ?」

「はぁ、なかなかどうして恐ろしい人ですね、アルス様は。わかりました。それがうまくいかない可能性があるとすればアーバレスト家が外部の者とつながるときだけですね。ガーナ殿にも情報を流してアーバレストが他の貴族と連絡をとりあうのを見張ることにしましょう」

「そうだな。よろしく頼むよ、ペイン」

アーバレスト家との戦闘に勝利した俺達。

今回はイクス軍との共闘だったが、俺の働きがかなり大きかった。

そこで、ガーナには悪いが俺に仕切らせてもらった。

と言っても、アーバレスト領の切り取りはしなかった。

今すぐしなければいけないことではなかったからだ。

もっといえば、現段階で新たにアーバレスト領で領地を得てもバルカには統治できそうもなかったからだ。

飛び地の領地運営を行おうと思えば他の誰かに任せるしかないのだ。

バイト兄が独立した直後で文官が足りなかった。

なので、領地を奪わずに金だけをむしり取ることにした。

軍を動かした際に必要だった金にプラスして手間賃と精神的苦痛に対しての賠償も含めていたりする。

実際は軍を動かした以上にお金が入ることになる。

まあ、ペインの言うようにアーバレスト家が戦争賠償金を払いきれない可能性がないわけでもない。

が、数年間の猶予をつけているのでラグナの器量によってはギリギリ返済できるかもしれない。

俺はとりあえずの手付金として、アーバレスト家が所有する魔法剣である雷鳴剣を複数本、頭金として受領してから帰還していったのだった。