軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

炎鉱石の活用法

「どうだ、グラン。九尾剣は再現できそうなのか?」

「……クッ。現状では非常に困難であると言わざるを得ないのでござるよ、アルス殿」

「できないのか? この炎鉱石は九尾剣の材料になった素材で間違いはないんだろ? 魔力に反応して炎が吹き出るような変わった鉱石なんてほかにはないだろうし……」

「この炎鉱石が問題なのではないのでござるよ、アルス殿。問題なのは、この炎鉱石の特性にあるのでござる」

「特性? それこそ炎が出るっていう変わった特性があるけど、何が問題になるんだよ?」

「そうではござらん。炎が出ること自体が問題なのではないでござるよ。だが、決定的に硬度が足りないのでござる。この炎鉱石は軟らかすぎるのでござるよ、アルス殿」

「軟らかい? 手に持った感じではそうでもなかったけど、硬くないのか。……ああ、なるほど。軟らかいと剣には不向きだってことになるのか」

「そのとおりでござる。これでは炎鉱石を加工して剣にしても、武器としては使い物にならぬのでござるよ」

「でも、実際に剣としても使えている九尾剣があるだろ、グラン。絶対に無理な製作であるってことはないはずだけど」

「……そのとおりでござるよ、アルス殿。拙者、燃えてきたでござる。なんとしてもこの九尾剣を再現してみせるでござるよ。なので、完成まで少々待っていただきたいのでござる」

「……なあ、グラン。張り切っているところでちょっと言いにくいんだけど聞いてもいいかな?」

「なんでござるか、アルス殿。もしかして、なにか製法に心当たりがあるのでござるか。拙者は他の金属と混ぜているのではないかとにらんでいるのでござるが、他にも炎鉱石の加工時に炉の温度をもっと上げたほうがいいのか、あるいは……」

「あー、ストップだ、グラン。興奮しすぎだ」

「おっと、これは申し訳ないでござる。で、なんでござったかな。アルス殿が拙者に聞きたいことがあったのでござったのであったかな?」

「ああ。ていっても質問じゃなくて、素朴な疑問なんだけどな。九尾剣を再現する意味ってあるのかなってことなんだけど」

「……どういうことでござるか? アルス殿は炎鉱石を求めてウルクまで出向いたのではないのではござらんか。それが炎鉱石を実際に手に入れてから急に九尾剣がいらないというのは少々理解に苦しむのでござるよ」

「いや、まあ、九尾剣という魔法剣が量産できるんだったらそりゃありがたいんだけどな。けど、それだけにこだわる必要はないだろ。防御不能の炎の剣を出す九尾剣。それだけを聞くとすごく強いかもしれないけど、それを使う騎士は遠距離攻撃ができるんだ。別に九尾剣があってもなくても攻撃力そのものはそんなに変わらないんじゃないかと思わなくもない、って感じなんだけどな」

「し、しかし、アルス殿。今更そんなことを言ってもこうして炎鉱石を手に入れてきたのでござるよ。ならば、九尾剣を製作しないとそれまでの苦労が徒労に終わることになるではござらんか」

「別にそうとは限らないだろ。要は武器に限った使用法だけが炎鉱石の使い方じゃないってことを言いたいんだよ、俺は。九尾剣の製法の研究もいいけど、ほかのものも作ろうぜ、グラン。そのほうがいろいろと活用法がありそうだし」

「ほかの活用法でござるか……。しかし、炎が出る鉱石をどう使うかと言われても……。そうだ、この炎鉱石を使って炉を作ってみるというのはどうでござるか、アルス殿。今までにはない高温の炉を作りあげてみるのも面白いかもしれないでござる」

「ああ、いいね。そういうのだよ、グラン。俺が言いたかったのはそういうのだ。俺も炎鉱石で作ってみたいものがあるんだよ、グラン。ぜひ作って欲しいものがあるんだ」

「アルス殿が拙者に作ってほしいものでござるか。これは難題そうでござるな。それはいったいどのようなものでござるか、アルス殿」

「空だ。空に飛び立とう、グラン。炎鉱石を使って飛行の道具を作ろうぜ」

「……は? 空を……飛ぶ? 何を言っているのでござるか、アルス殿。どうやって炎鉱石で空を飛ぶのでござるか。炎が出る金属だということを忘れているのではないでござるか?」

「いやいや、それがいいんだよ、グラン。燃料なしでも炎が出るんだ。気球くらいならすぐに作れるって」

バルカニアでグランと話していた俺。

旧ウルク領にある狐谷という場所で幻の金属とまで呼ばれた炎鉱石を手に入れ持ち帰っていた。

その炎鉱石についてグランと話していたのだった。

そのなかで、俺が話した内容を聞いたグランが何を言っているのかといった顔で俺を見てくる。

ということは、グランも飛行機能のある乗り物を見たことはないのかもしれない。

が、俺は違う。

魔力に反応して炎が出るという炎鉱石を見たとき、最初に思ったのは九尾剣への活用ではなかった。

俺から見ると炎鉱石はエネルギー発生装置にしか見えなかったのだ。

熱エネルギーの塊だ。

熱エネルギー。

それは俺が知る前世の世界では人類史に最も大きな恩恵を与えてくれたものである。

そして、世界を変える原動力にもなったものだ。

たとえば、蒸気機関による産業革命がそうだ。

しかし、今回グランに提案したのは蒸気機関ではなかった。

炎鉱石は九尾剣に使う、という認識がある中でそれ以外に活用法を求めるのであれば、もっとひと目見たときのインパクトがあったほうがいい。

そう考えた俺は、地面の上を移動するしかできない人間が空を飛ぶというインパクトを演出することにしたのだ。

まあ、炎鉱石は俺のものなので何に使おうとも文句を言われる筋合いはないのではあるが。

ぶっちゃけると正直完全に俺の趣味だ。

こうして、俺は思い出せるだけの気球の構造をグランへと教えて、炎鉱石を利用した気球作りを開始したのだった。