軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

金融

「おっさん、ちょっと相談があるんだけど」

「ん、どうしたんだ、坊主?」

「新しく金を稼ぐ方法を考えたんだけどな、ちょっといろいろ聞きたくて」

「お、またなにか新しい商品でも考えついたのか? ちょっと待ってくれ、詳しく聞かせてくれ、坊主」

「ああ、つっても新商品ってわけじゃないんだけどな。金貸しをやろうかと思ってな」

「……なんだって?」

「金を貸すの。金が必要な連中に、利息を付けて」

「……坊主、金貸しは嫌われるぞ? わかっているのか?」

「そりゃ、まあそうだろうけど、いないわけじゃないだろ? 金貸し連中ってそんなに恨まれてたりするのか?」

「それはそうだろう。奴らは金を貸したことを主張して恐ろしい利率の利子をつけて返済させるからな。当然、払えなくなる連中も多くいる。身ぐるみ剥がされてケツの毛まで抜かれたやつの話も山程あるぞ」

「せ、世知辛いな。利率の上限とか決まってないのか?」

「おおよその相場はあるが、きっちりとは決まっていない。だが、どれも雪だるま式に借金が膨れ上がってくることになる。まあ、それが悪いってわけじゃないからな。貸した方も回収できなきゃならねえしな」

「ふーむ、悪徳金融っぽい言い分だな。ま、それはとりあえず置いておこう。俺が金貸しのターゲットに考えているのは庶民じゃない。騎士連中だよ、おっさん」

「騎士? 騎士に金を貸すのか?」

「そうだ。ピーチャ殿と話していたときに聞いたんだけど、意外と騎士領を持つ騎士も資金繰りには困っているところもあるらしい。そこを狙う」

「ちょっと待て、坊主。騎士領を持つ騎士を狙うって、金を貸して土地を巻き上げる気じゃないだろうな。それこそ本当に揉め事につながるぞ?」

「んー、そういうこともあるかもしれないけど、ちょっと違うかな。別に利率を高く設定する必要はない。どっちかと言うと確実に回収できるように金を貸したいと思っているんだ」

「……よくわからんが、どういうことだ?」

「まあ、俺も詳しくないからこれがうまくいくかどうかははっきりとわからないんだけどな。ちょっと聞いてくれ」

そうして、俺はおっさんに話し始める。

俺が新たに考えた金儲けの方法は金を貸して利息を得るという、いわゆる金貸し屋だった。

その狙いはピーチャに聞いていたとおり、現金がないらしい領地持ちの騎士たちだ。

もっと詳しく言うと、領地持ちの騎士のなかでも俺の農地開発を受ける意志がある連中がターゲットになる。

貧弱な農業技術しかないフォンターナの中で俺の【整地】や【土壌改良】というのはそれまでの収穫量とは一線を画す農業方法ということになる。

その農地改革を俺は去年から依頼を受けた土地へと人を派遣して行っていった。

そして、その効果は前年にもしっかりと現れていた。

ピーチャがいるアインラッド砦の周りだけでも手作業の脱穀が追いつかないほどの収穫量になっているのだ。

その話を聞いて、バルカの農地開発を自領にも行いたいと考えている騎士たちはたしかにいる。

だが、頼むためには金がかかり、そのための現金を支払う方法に不安を思っている人がいるというのも事実だ。

だからこそ、そんな奴らに狙いをつけた。

やり方はこうだ。

一度、俺が騎士に対して金を貸す。

そして、その金を使って農地開発の仕事を依頼させるのだ。

借りた金の返済については翌年の収穫した麦の販売額から取り立てる。

よっぽどの天候不順がなければ問題なく金を回収できるはずだ。

ようするに将来の収穫量増加を当て込んで金を貸すということになる。

普通ならば危険な行為であるかもしれないが、収穫量自体が増えることはまず間違いないと思う。

それに将来の返済方法を決めておくことでそこまでアコギな利率にする必要もないだろう。

比較的良心的な利息設定にしておけば、他の金貸しに借りることがない分だけ、仕事を依頼しやすくなるのではないだろうか。

さらに言ってしまえば、これは俺にとって他の騎士に対する外交手段ともなり得る。

バルカは急に頭角を現した新興勢力で、割と力ずくで今の立場をもぎ取ってきた。

言ってしまえば、力はあるが信用度はかなり低い。

その状況を解消するのは生半なことでは難しいだろう。

であれば、手っ取り早くお金の力を利用しようと思う。

他の騎士に金を貸し、その債権を所有していれば少なくともこちらのほうが立場が上ということにもなる。

そうだな。

どうせなら、一年で返済するようなプランではなく、数年かけて返済する仕組みにして長く付き合っていく方向にしてみてもいいかもしれない。

実は今までにもこの考えはあった。

だが、バルカ騎士領の財政自体に赤信号がつきっぱなしだったので、金を貸すこともできなかったのだ。

しかし、去年のウルク・アーバレスト両家との戦いでバルカの財政に変化が起きた。

あのときの活躍でカルロスに報酬として金を要求した俺は、恩賞としてかなりの資金をカルロスから頂戴したのだ。

実はカルロスもかなりの金持ちだったりする。

今ではフォンターナ領内を張り巡らせるようにして作り上げた道路網のすべてがフォンターナの街へと繋がっているのだ。

俺の領地であるバルカに行くにもフォンターナの街を通ることになる。

結果として、フォンターナ領の経済の中心地としてフォンターナの街は未曾有の好景気に沸いているのだ。

そして、おそらくそれは今年以降も続くだろう。

なんといっても、最近になって各騎士領の騎士たちもみんな家族ごとフォンターナの街に引っ越してきたのだから。

そんなお金持ちのカルロスからの報酬は教会への支払いを終えてもしっかりと残っている。

相変わらず使役獣の研究に金がかかっているが、それ以外の新商品がバルカには増えて財政が安定している。

金貸しをするには今が一番タイミングがいい。

こうして、俺はおっさんなどと協議を重ね、バルカ金融を始めることになったのだった。