軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

行動原理

「おい、アルス。ちょっといいか?」

「どうしたんだ、バイト兄?」

「お前、今度からこの罠は使うな」

「ん? なんでさ? 効率よく相手を倒すことができるから結構便利だと思うけど。まあ、こっちもスライムの被害が出かねないから諸刃の剣とも言えるけど」

「そんなんじゃねえよ。それよりも、倒した相手の装備が手に入らないんだよ。あの湖の魔物が溶かしちまって使い物にならねえんだ」

「ああ、そういやそうだな。よく気がついたね、バイト兄」

「当たり前だろ。俺たちについてきて戦ってる兵にとっては倒した相手の装備品を奪うことができないと戦に参加する意味がなくなるからな。パラメアといい、今回といい、みんなの旨味がなさすぎる」

「なるほど。そういうことか。わかった。スライムを使った攻撃はとっておきにしておくよ。教えてくれて助かったよ、バイト兄」

「おう、気をつけてくれよな」

なるほど。

命がけで戦う報酬代わりのものがなくなるということか。

今となっては過去のことだが、俺も自分のために金属製の武器を購入しようといろいろと苦労していた。

たとえナマクラだったとしても、相手の武器を奪えるかどうかで収入は大きく変わるということだろう。

それに、自分で使っておいてあれだが、スライムの罠利用はやめておいたほうがいいだろう。

なんといっても見た目もエグい。

罠にハマった人間を狙って溶かすスライムの動きをこちらも目撃せざるを得ないのだ。

中途半端に溶かされたまま残っている人体を見るとさすがに気分が悪い。

あんまりスライムは使わないほうがいいだろう。

「というか、よく持って帰ろうと思いましたね、アルス様。このスライムたちをどう活用するおつもりだったのですか?」

「いや、いろいろと考えてはいたんだけどな。ただ、ちょっと危険すぎるかもな。バルカニアの住人が溶かされることになるかもしれないから使えないな」

難攻不落と呼ばれた水上要塞パラメアの防御力にこのスライムが一役買っていると初めて聞いたときには、何だそれはと思ったものだ。

だが、この世界のスライムはなんとも恐ろしい魔物であり、その被害を初めて見たときにはその厄介さが身にしみてわかったものだ。

水没したパラメアへと乗り込んでいったときだ。

そのときにはすでに水位を下げてあった。

だが、スライムによって文字通り要塞が壊滅していたのだ。

ちなみに、水が引いたあととはいえ、まだ水たまりが存在し、そこにスライムが残っていた。

それを見たときに思ったのだ。

もしかしたら、なにかにこのスライムが使えるかもしれないと。

なので、俺はその水たまりに潜むゲル状のモンスターをガラス容器を作って保管しておいたのだった。

スライムの活用法としては、自分の城の周りに作った堀の中にスライムを入れておくのが一番最初に思い浮かんだ。

それだけでも、防衛力は何倍にも増すのではないかと思う。

だがしかし、だ。

もし、大雨でも降って水が増えたときなどにスライムが堀から出てしまったらどうなるのだろうか。

パラメアのあの惨状が俺の城でも起こるかもしれない。

そう思うと、なかなかスライムを活用するのは難しいかもしれない。

「でも、不思議だよな。なんでスライムはパラメア湖にしかいなかったんだ? 川が繋がっているんだから上流とか下流でも見かけてもおかしくなかったのにな」

「そうですね。もしかしたら、あのパラメア湖でしかスライムが住めない理由でもあるのかもしれませんね」

「ってことは、どのみちスライムの活用は難しいのかな。ま、駄目なら駄目で仕方ない。それよりも、問題はウルク軍だな。この後どう動くと思う、リオン?」

「普通に考えるなら撤退するのではないかと思います。けど……」

「まだ、諦めずに俺を狙ってきたりするのかな? その場合、この罠をもう一度使わないといけないかもしれないな」

「さすがにもう一度おびき出されるということはないかと思います。ですが、ここまで圧倒的な勝敗がついた場合、メンツの問題もありますから。ウルク軍が冷静に撤退をするのか、あるいは一つでもいい戦果を上げてから帰還することを望むか。向こうの考え方次第ということになるのではないでしょうか」

「メンツの問題か。それがあると、論理的な行動よりも感情的な考えで方針を決めてくるかもしれないなら、動きが読めないか。よし、わかった。とりあえずはこちらからはもうちょっかいをかけるのはやめて様子を見よう。陣地造りでもしていようか」

「そうですね。わかりました、アルス様」

意外と馬鹿にできないメンツという問題。

俺もそれによって動かざるを得ない時があった。

というか、今回の一連の騒動の原因がそうだった。

隣の騎士領の騎士が俺の妻であるリリーナを奪うと発言した問題がそうだ。

あの場合、俺自身の気持ちよりも周囲の目のほうを意識せざるを得なかった。

自分の奥さんを取られそうになったときに甘い対応をするようなら、周りから舐められるし、信用を失うことになる。

俺はバルカ騎士領としての当主という立場からも、あの発言には厳しく対応せざるを得なかったのだ。

ようするに、面子を潰されるということは騎士として、当主として、貴族としての信用を味方から失い、それまでの立場を維持できなくなるのだ。

今回のウルク軍はどうであろうか。

普通ならばここまでの損害が発生した場合、撤退するのが当たり前だろう。

協調して侵攻してきたアーバレスト軍もすでに負けているのだから。

が、ここで退いたときに味方から見限られるかもしれないとなれば話は違う。

多数の騎士とそれに従う兵士を失いはしたが、いまだアインラッド砦を包囲しているウルク軍のほうが多いのだ。

俺は相手がどう動くのか、ビクビクしながらも陣地を作りながら見守ることにしたのだった。