軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

生誕直後

「クウ〜」

生まれたばかりの使役獣が鳴き声を上げた。

良かった。

あまり大きな声ではないがこれが産声かと思うとホッとした。

使役獣は卵から孵らないケースも存在するとしってから、密かに心の奥底で不安をつのらせていたのだ。

生まれてきてくれてよかったと心から思う。

そんな使役獣だが、どうやら頭に生えた2本の角を使って卵の殻を破ったようだ。

軽く頭を振って角についていた卵の殻をふるい落とす。

そして、次に足を震わせながらその4本の細い足で立ち上がろうとした。

だが、生まれたばかりの小さな体では立ち上がるのも大変なのだろう。

まさに生まれたばかりの子鹿のように足がプルプルと震えてしまっている。

「頑張れ!」

なんとか必死に立とうと力を振り絞っている姿を見ていると、自然と声が出てしまった。

両手をグッと握りしめて頑張れ頑張れと声をかけ続ける。

その応援に応えるかのようにグッと力を入れてビシッと立ち上がることに成功する使役獣。

まるで「どうだ」と胸を張るかのように顔を上げて自慢の角を天に突き立てるようにするその姿を見て、思わず拍手をしてしまった。

やはり動物はいい。

今まで野菜を育ててきたが、やはり生き物が懸命に生きている姿を見るというのは心を揺り動かされるものだ。

思わずそんなことを思って感動すら覚えてしまった。

「キュウ?」

そんな俺を見て、どうしたんだろうと首をかしげる使役獣。

なんでもないよという風にジェスチャーで示しながら、俺は改めてその使役獣を観察し始めた。

頭に生えている角の数は2本だ。

真っ直ぐなものではなく、幾度か曲がったり、枝分かれしたような形をしている。

ただ、横幅がある角なので鹿よりもトナカイのような角だという印象を受けた。

体には毛が生えており、その毛は白い直毛だ。

今は卵からかえったばかりで卵白のような透明なドロッとした液がついているが、それがなくなればサラサラとした毛を楽しめるかもしれない。

そして、体は4足歩行で馬のような体型をしているように感じる。

前世ではトナカイを見たことがないが、トナカイや鹿よりもサラブレッドタイプの馬のような体型に近いのではないかと思う。

現状では手のひらに乗ってしまいそうなほどの小ささなのだが、成長して大きくなってくれれば荷物運びくらいできる可能性もあるだろう。

ただ、俺の知る馬の姿はあまり全身に毛が生えているものはいなかったように思う。

果たしてコイツは馬と呼ぶべきかトナカイと呼ぶべきか。

などと考えていると、俺の顔を見ていた使役獣が別の行動をし始めた。

床に転がったままになっている卵の殻を食べ始めたのだ。

一瞬、そんなものを食べて大丈夫なのか、と疑問に思う。

ただ、それを食べるのは当たり前だと言わんばかりの行動だったため、とりあえずそのまま様子を見続ける。

「って、そういえばコイツってなにを食べるんだろ?」

バリバリと卵の殻を噛み砕きながら食事をしていく馬もどきを見ながら、新たな疑問に行き当たった。

卵の殻はもうすぐ無くなりそうだ。

使役獣は卵が魔力を吸い取って生まれるという特殊な生態をしているが、生き物であることには違いがない。

そして、問題になるのが生まれてきた使役獣はそれぞれ異なった生態をしているらしいことだ。

行商人などに聞いた話では騎竜は肉食だという。

わりと燃費がいいほうらしいが、毎日肉を与えないと当然死んでしまう。

だが、すべての使役獣が肉食なのではないのだそうだ。

生まれてきた使役獣はそれぞれ食べるものが違ってくる。

本当に別種の生き物といった感じになるらしい。

使役獣の卵がギャンブルに近いというのはこのことも関係してくる。

一発逆転の金儲けを考えて使役獣の卵に手を出し、運良く卵が孵ったものの、エサ代を稼げなくて育てられないという失敗例もわりと多いのだそうだ。

気持ちはわかる。

ぶっちゃけ貧乏農家の俺も毎日肉を食べるなんて贅沢な暮らしはできないのだ。

それを売れるかどうかも定かではない使役獣の幼獣に与えることができるかと言うと、現実的に厳しい問題である。

果たしてコイツは一体何を食べるのだろう。

そう思っていると幼獣が卵の殻を食べ終えたようだ。

口の中に残った一欠片も残さないようにきれいに食べきっている。

やはりお腹が空くのだろう。

というか、今ここでお乳を要求されたらどうしようか。

もちろん俺に母乳を出す肉体も能力も魔法もない。

慌てる俺に対して幼獣がトテトテと近づいてきて、座っている俺のズボンに頭をスリスリと擦り付けてきた。

なんだ?

一体何が言いたいんだ?

謎の行動に驚いたが、実際はなにかを要求してのことではなかったようだ。

頭をスリスリとこすりつけたあと、視線を俺に向けて「クゥ〜」と鳴き、再び頭を擦り付けてきた。

どうやら単に甘えているのか、あるいは親愛の証のようなものだったようだ。

かわいい。

しばらく俺に甘えたあと、今度はあぐらをかいている俺の足の上によろよろと登ってきて、そのまま足の上で眠ってしまった。

何だこのやろうかわいすぎだろ。

どうやら生まれたばかりの使役獣は見事に俺になついてくれたようだった。

まあ、いろいろと気になることはあるが今はおいておこう。

俺はあれこれ考えるのをやめて、足の上で眠る幼い使役獣の背中を撫でることにしたのだった。