軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

餌の効果

「うっし、そろそろ狐狩りに行きますか」

「いいな、その言い方。ウルクの狐野郎を狩るってか、アルス」

「相手も俺の首を狙っているらしいからな。狩るか狩られるかってところだな。前回勝ったからって油断するなよ、バイト兄」

「わーってるよ。ほら、そろそろ出発だろ。行くぞ、アルス」

「オッケー。バルカ騎兵団、出撃するぞ!」

アインラッド砦を包囲しているウルク軍。

そのウルク軍に対して去年と同様に夜襲を仕掛ける。

【狐化】の魔法を持つウルクの騎士たちが警戒しているであろうと予測されるため、おそらく夜襲は直前に気づかれることになるだろう。

なので、今回も騎兵だけで襲撃を仕掛けることにした。

遠方から高速で急接近して敵陣へと入り込み、ある程度暴れてから離脱する。

リオンの読み通りであれば、そこで俺の姿を確認したウルク軍は追撃を仕掛けてくるであろう。

深夜未明の月明かりしかない闇夜の中をヴァルキリーに騎乗して駆けていく。

以前は近くに行くまではゆっくりと進んでいたが、少しでも突入のリスクを減らすために遠い位置からヴァルキリーを走らせた。

事前に確認しておいた相手の陣地目掛けて全力で近づいていく。

「敵襲! 騎兵が来たぞ」

だが、それでも突入前にこちらの存在に気づかれてしまった。

どうやら、ウルク軍は広範囲をカバーできるように騎士を配置し、夜間も警戒していたようだ。

しかし、それでも問題はない。

広い範囲を警戒しているということはそれだけ相手の戦力である騎士が散らばっているということでもある。

俺は叫ぶウルクの騎士の声を聞きながらも、速度を緩めることなく敵陣へと踏み込んでいったのだった。

※ ※ ※

「魔力注入」

ヴァルキリーに騎乗した俺が呪文を唱える。

対象へと魔力を注ぎ込む魔法。

その呪文によって、俺の手に握られた魔法剣へと魔力が注がれていく。

手にしているのはアーバレスト家の当主が所有していた雷鳴剣だ。

金属の剣身が魔力に反応して電撃が発生した。

バチバチとスパークするように光る雷鳴剣。

その電気をまとった雷鳴剣を左から右へと振り抜く。

バチバチバチ。

そんな音をたてて雷撃が剣から放たれた。

氷精剣や九尾剣は魔力を注ぐと氷や炎の剣が出現し、それで相手に切りかかった。

だが、この雷鳴剣は少し違う。

というのも、俺が剣を振った方向に対して雷撃が放出されるのだ。

バリバリバチバチと音をたてながら空気中を飛んでいく電撃。

それが、騎兵の突撃を止めようと前に現れたウルクの兵へと命中する。

「ガハッ!!」

雷鳴剣の攻撃が命中した兵が叫び声を上げながら地面へと倒れた。

一瞬、周囲がシンとしてしまった。

かなりエグい攻撃だ。

たった一振りの攻撃で10人以上が地面へと倒れ伏してピクピクと痙攣している。

本当にこの雷鳴剣が俺に向けられて使われなかったことを喜ぶしかない。

「やるじゃねえか、アルス。だけどな、俺も今回は負けないぜ」

あまりの攻撃力に敵味方ともに驚いている中でいつもどおりのバイト兄。

そのバイト兄が雷鳴剣で攻撃した俺よりも前に出て、同じように剣を振るう。

バリバリバチバチと音を発し、バイト兄が持つ雷鳴剣からも雷撃が放たれた。

こうして騎兵を止めようと出てきた兵はことごとく倒されていったのだった。

※ ※ ※

「囲め、これ以上奴らの好きにさせるな」

「朧火」

「足を止めるな、動き続けろ」

「氷槍」

俺とバイト兄が雷鳴剣を使いながら先頭を走り、敵陣の奥まで侵入してきた。

だが、やはり相手もこれ以上は許さないとばかりに向かってくる。

数多くの敵兵とウルクの騎士に囲まれる。

ここで立ち止まってしまうとこちらの命運は完全に尽きることになる。

なんとか足を止めることなく移動し続けていた。

が、それもそろそろ限界らしい。

ここらが潮時だろうか。

そう判断した俺は手にしていた雷鳴剣からもう一つの魔法剣へと持ち替えた。

「魔力注入」

俺がもう何度目かになる【魔力注入】の呪文を唱える。

俺の魔力が手にしている剣へと注がれ、それによって雷鳴剣とは別の効果が発揮される。

剣の形をした炎。

だが、その炎はその魔法剣の剣身よりも更に長く大きかった。

【照明】の光の色とは違う炎の色が夜の暗い中に現れたのだった。

「あ、あれは……。あれは九尾剣ではないのか?」

「ほ、本当だ。なぜ、九尾剣を持っているんだ?」

俺が手にしている九尾剣のことに周囲を囲んでいる騎士たちがようやく気がついたようだ。

もしかして、暗い状況下で襲撃してきたのが誰かわかっていなかったのかもしれない。

だが、九尾剣を見てざわざわとしていた雰囲気が、次第に変わってきた。

こちらを見る目が鋭くなり、今まで以上に殺気立つ。

「どうした。バルカの持つ九尾剣を見て腰が引けたか? 軟弱なウルクの騎士たちよ!」

それを見て、俺が声を上げる。

ちょっとした煽りだった。

だが、俺の発言を耳にして殺気立っていた空気が爆発した。

「バルカだ。敵はバルカだぞ」

「貴様、それはキーマ様の、ウルクの至宝の九尾剣ではないのか」

「あいつが、あいつが当主様の言っていたバルカだ。そいつを討ち取れ!」

周囲の騎士や従士たちが怒りに任せて口々に大声を出している。

やはりリオンの予想していたようだった。

どうやらウルクの連中はバルカを、俺のことをかなり根に持っているようだ。

襲撃してきたのが俺だとわかった瞬間、今までの攻撃がまるで手を抜いていたかのように感じるほどの勢いでこちらを攻撃し始めてきたのだ。

「やっば。煽りすぎたな。撤退するぞ、バイト兄」

「わかった。てめえら、退却するぞ。しっかりついてこいよ」

「「「「「おう」」」」」

バイト兄が手綱をひいてヴァルキリーの進路を急激に変える。

ウルクの騎士が少ないところを狙ってこの囲みを脱出しようと試みる。

だが、相手も血走った目でこちらを逃がそうとせず、必死に攻撃してくる。

武器による攻撃や魔法による攻撃が無数にこちらへと向けられる中、なんとか命からがら逃げ延びるようにして敵陣からの脱出をすべくヴァルキリーを走らせながら、俺は多数のウルクの騎士を始めとした敵兵を引き連れていくことに成功したのだった。