軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

誕生

「ありがとうございました」

俺や両親、そして俺たちと同じように洗礼式に参加した村の人間が神父とシスターに礼をしながら教会をあとにする。

洗礼式が終わってすぐに、新たに魔法を使えるようになった子どもたちが魔法を使い始めた。

当然、そこには興味本位という意味合いしかなく、それぞれの親に怒られたりしていたわけだ。

だが、俺はそれを見ながら自分でも生活魔法を発動させてみた。

結果としてわかったことがある。

それは生活魔法というのはすべて画一的なものだということだ。

例えば【照明】と唱えて出てくる光はすべて同じ明るさと大きさをしており、効果時間も変わらない。

【着火】や【飲水】といったものも魔法を発動させると出てくる現象の規模はみな等しいのだ。

どうやらこれは生活魔法を覚えたばかりの子どもと使い始めて長い時間が経過している大人を比べても同じようだった。

俺自身、どれほど魔力を練り上げて効果を高めようとしてもなんの変化も見られなかった。

これが意味することは、【着火】という生活魔法を極めて火炎放射器のような魔法にしたりといったアレンジができないということになる。

正直ちょっとがっかりという気がしないでもない。

今まで火や水といったものを魔法で出せなかったことから、もしかしたら生活魔法を手に入れればその問題も解決するかもしれないと考えていたからだ。

俺の淡い希望は打ち砕かれたと言ってもいいだろう。

まあ、残念だったが仕方がない。

生活魔法を改良するという考えは一旦忘れることにしよう。

なぜなら、この洗礼式ではもう一つの収穫があったのだから。

パウロ神父が使っていた魔法陣。

もしかしたら、魔法陣にこそこの世界の魔法の深淵を見通す可能性があるのではないかと心躍らせて家路についたのだった。

※ ※ ※

「だめだ、全くわからん」

【記憶保存】というオリジナル魔法を用いてパウロ神父が使った魔法陣を完璧に覚えたのは良かった。

だが、よくわからない記号がところ狭しと書き込まれたような魔法陣を解読することができずにいる。

というか、よく考えれば俺はこの世界の文字をまともに知らない。

今までは飯を食うことを第一に、そしてその目的を達成するために魔法の研究をするというのを繰り返してきていた。

まともに書けるようになったのは自分の名前であるアルスという文字だけだった。

魔法陣に刻み込まれている記号が現在でも使われている文字なのかどうかすらよくわかっていないのだ。

どうしたものだろうか。

そんな風に俺が隠れ家として作った森のなかの家で考え込んでいるときだった。

ピキピキピキ。

そんな音が聞こえてくる。

最初はなんの音なのかわからなかった。

だが、俺の腰のあたりから音が聞こえてくる。

そう気がついた俺は体を回すようにして自分の腰元を見た。

「おお、ついに生まれるのか」

腰に巻きつけていた使役獣の卵を入れたネットの中。

そこが、謎の音の発信源だった。

ピキピキと音を鳴らして卵の殻にヒビが入っていたのだ。

これは別に俺が踏んづけてしまったわけでもなんでもない。

内側から外に向けて力を加えるように卵にヒビが広がり、ポロリと殻のかけらが床へと落ちたのだった。

慌ててネットから卵を取り出して部屋の中央の床へと置く。

この頃には卵はもとの大きさよりも倍以上に膨らむように大きくなっている。

ソフトボールよりも少し小さいくらいかなといった感じだろうか。

どんな使役獣が生まれるのだろうか。

ワクワクしながら卵の殻が割れる様子を見続ける。

「……長いな。割るのを手伝ったりしたら駄目かな?」

中にいる使役獣は思ったよりも卵を割るのに苦労していたようだ。

なかなか出てこないので、本当に大丈夫なのだろうかと不安になってしまう。

だが、その心配も杞憂だったようだ。

長い時間待ったかいがあり、ようやく使役獣が自力で殻を割り、そこからその姿を見せたのだった。

白い毛が全身に生えた四足の動物。

頭には小さいが立派な角が生えている。

角は2本あった。

それは真っ直ぐではなく、二回ほど直角に近い角度でクネクネと曲がっている。

まるでトナカイのような角が生え、モコモコと柔らかそうな白毛が全身を覆う小さな生き物。

それが俺の魔力から生まれた使役獣の姿だった。